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赤飯
この話はフィクションですが赤紙は本当にあったものですのでよかったら調べてくれるとためになると思います。
ある日の夜、乾いた風が肌を切り裂くほどの勢いに伴って玄関に人影が見えた。だがしばらくすると辺りは静寂に包まれた。
「そんな!!!、、、嘘っ、、、」
かすれた声が玄関に響き、母が抜け殻になったように膝をついていた。
「どうしたの?」
私は目の前の気絶寸前の母に話しかけた。しばらく母は何もない天井を呆然と眺めたのち、小さな声で
「まさしに政府から赤紙が届いたのよ」
とだけ言った後、母は人が変わったように元気になった。
「天皇陛下万歳!天皇陛下万歳!今日はあんたのお兄ちゃんがようやくお国の為に戦う日が来たわね~。楽しみにしてなさい、今晩は赤飯よ~」
当時はまだ幼く本当の意味を理解していなかった私には今日のご飯が赤飯ということだけを理解して、はしゃぎまわって喜んだ。そんな私を兄は笑ってほほ笑んでいた。