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異世界のハマルティア  作者: そそい
根源蝕む悪夢編
7/37

地の指し示し

戦いは始まった!

あなたはきっと、これから苦しい道を歩んでいくんだろう

けどどうか、折れないで、勝手だけど、失ったものを見て、これから失わない為に


私の視た未来を、どうか
























あれから2週間が経った


「あぁ寒……」


寒さが本格的にヒートアップし、家の中でも常にコートを羽織っていないと辛くなってきたこの頃


魔族襲撃による緊張感は解け、営業再開する店なんかも多くなってきた

リュディも普通に通学するようになった


だが肝心の魔族に関することは特に何も無かった

そもそもこちらから接触する方法が無いのだからあちらが何かしてくれないとどうも出来ない


まぁ俺が目的ならいずれ来る、もとい派手に暴れるだろうが


その日が来るまでやれる事はひたすら鍛えることだ

伊野の方は国王に直談判して訓練所を使わせてもらったりしてるそうだ


前見たら傷とアザが結構あった、よくやるよほんと

俺はというと


「702…703…」


今は家の中で右腕だけで腕立て伏せをしている

かなり化け物じみた数しているが、勇者だからって体力は別に上がらない

神器を持てば数段跳ね上がるだろうが、生憎そんな物持ち合わせていない


これも贈り物っちゃ贈り物か…


「うぇぇっ……」


流石に疲れで崩れ落ち、大の字で寝転ぶ


「これ意味あんのかな…」


体力は多分ついているはず

最初は伊野と一緒に同じとこでトレーニングしようかと思ったが俺はただのバリウス、あくまでも普通の一般人

いい思い出もないし王城付近へは近づきたくない


だからこうしてリュディが学校でいないうちにトレーニングをしている

俺の花屋の仕事だが、店長に頼み込んで長めの休みを強奪した、ハヴィも巻き込んで頼み込んだ


まぁ店長自身は快くオッケーしてくれた、ありがとう店長


休みを取ったことをリュディに恐る恐る報告したら別に怒られはしなかった

だが心配された、主にメンタル面を

別に仕事に疲れた訳では無いと説明したらホッとしてくれた


「ふぅ……んっ」


水分補給に机に作って置いておいたレモンティーを飲み干し、手で口を拭う

程よい薄さで自分の好みによく合ってる、ちょっとは上達しただろうか、リュディの好みも聞いておこう


「それにしてもここまで動きが無いとはな...1ヶ月以上休むのは流石に避けたいんだけど...」


その時ある考えが頭をよぎる


「辞めるのはもっと駄目...だよなぁ...やっと見つけた職だしリュディの負担が...」


普通に生きてればもっとマシだったろう

伊野曰く、勇者は毎月国からお金貰えるそうだし、特に戦地に行ってる奴


「あークソ、金だけ欲しい」


物凄く私利私欲で構成された言葉を吐き捨てる

勇者とは名ばかりである


「ちょっと外の様子見てくるか...もしかしたら魔族居るかもしれないし...」


いつも通り、今回は黒のインナーの上からトレンチコートを羽織って扉を開け、見回りへと出向くのだった

















「寒すぎんだろ...」


腕を擦り合わせながらもっと厚着してくれば良かったと後悔する

本当にこの国は毎年寒さがきつい、リュディがに会ってなかったら寒さで野垂れ死んでたかもしれない


「この時期以外は涼しくて気持ちいい程度なのに...……ん?」


頬に柔らかな冷たさを感じる

元の世界でも味わったことのある感触


「雪か……もうそんな季節、というかこの地域が早すぎるだけか」


9月23日

元の世界ならまだ暑さに苦しんでるであろう時期


「暑がりの俺にはありがたいことだが...ここまではな」


まぁ1ヶ月すれば止んで、もう1ヶ月すればまた雪が降る

それがこの国のいつもの気候だ


「…リュディにマフラーでも編んでやろうかな、あまり得意じゃあないけど…リュディの編んだマフラーも着けてみたいな…」


そんなことを考えていると、またしても彼とバッタリ出会った

自分と違って温かそうな衣服に身を包み、バスケットを片手に抱えている伊野


「何してんだこんな朝で昼でも無い中途半端な時間に」


「休息も大事だからね、たまには休まないと、あっそうだ、お裾分けにどうかなこれ?」


そう言ってバスケットを少し開けると中に見えたのは大量のジャガイモ

限界まで詰められたそれは、どう考えても1ヶ月分を上回っている


「買い過ぎだろジャガイモ、絶対重いだろそれ」


「良いでしょ、ジャガイモ安くて美味しいからつい…3個くらいどう?」


「なんで街中をジャガイモで両手塞いで歩かなきゃなんないんだよ!家のポストに芽だけ送ってやろうか」


「ごめんごめん、また後日あげるから」


「それならまぁ…いいか」


歩きながら軽く愚痴混じりに会話して盛り上がる

だが今の二人にとって重要なのはジャガイモではない


ひとしきり会話を終えて、伊野の方が真面目な眼差しをして問う


「奴らの動きはどう?」


「全然だ、平和が不気味なくらいにはな」


どうしたものかと、二人して頭を悩ませる

そんな時、伊野に新たな疑問が生まれる


「そもそもさ、何で魔族はバリウス君を狙ってるの?」


「…知らねぇよ、魔族のことなんて理解できるわけないだろ」


「そうかな……僕達は理解し合うために闘ってるんでしょ?」


何のために戦う、バリウスにはそれが決まっている様で、だけどモヤが混じっているようで

そんな不快感が感じられた


「俺は護るために闘ってるだけだ、魔族と人云々はお前が言い出した事だろ…」


伊野を足蹴にする様な態度を取る


「…君には、どんな想像ができる?人と魔族が手を取り合うことが、できると思う?」


「…あぁそう、そんなの、闘えばわかるだろうよ…」


誰もいない坂道を登る二人

雪の量はさっきより増している


傘も何も無いためその身に無防備に白いヴェールを授かる


「でも現状僕らの唯一の希望は、魔族である魔王だよ」


「そうだな、会ってみたいもんだ、希望が潰えていないなら」


坂を登り終え、小さな公園に辿り着く、一つのベンチと二つのブランコ


地面の端に設置された安全用の柵に手を置く

眼下にはこの国の街並みが綺麗に、絢爛と澄み渡っている


「いい景色だよね、日の出も見たかったなぁ」


「そうだな、闇が消えたら…拝みにでも来よう、それまで、この景色も護ってないとな」


「それ以降もやろうよどうせなら」


「落ち着かせてくれ、多分死ぬほど疲れるから」


柵の雪を払い、飛び乗って座りこむ

若干ひんやりとした感触が伝わり、体に堪える


街を眺めていると、ふとあの事を思い出す


「そういや、前にお前が魔族から護ってた子供いただろ、あいつどうなったか知ってるか?」


「あぁ、あの子なら僕が王城まで護衛したから大丈夫だよ、いつか君にお礼がしたいって、あの子の家温泉やってるそうだよ」


「そうか、そりゃよかった、それに温泉か...今の季節に丁度いいな」


そそくさと花屋に戻ってしまったため、あの後の事が心配だったが一安心だ


「寒いしそろそろ帰らせてもら」


柵から内側に戻ろうと振り返ったその時


────────────────!!


「...何か聞こえ」


微かにだが爆発音の様な音が聞こえた気がする


「あれは...!」


すぐさま後ろへと向き直り街を見ると、何やら煙が上がっている


「行くぞ!捕まってろ!」


「え?ちょっと待ってまさかここから...!」


そう言って伊野の手を取り抱えあげると


「スカイダイビングが初めてならじっとしてろよ!ハッ!」


柵を軽々と飛び越え、数十メートルはある高所から生身で飛び降りて行った


「うわぁぁぁぁぁあぁぁああぁ!!!ふわふわする!助けて!ジャガイモベンチに置いたまま!」


「着地するから不安なら魔法で身を守っとけ!」


「いきなり無理だってー!」


制止を振り切る以前に空中なので制止が効く訳もなく、そのまま


ドン!と大きな音を立てて左足で着地した


「ほら立て、早く行くぞ」


「う、うん...」


ヨロヨロと立ち上がりそのまま爆発地点に向かう

やっと来た手がかりだ、逃す訳にはいかない

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