きれいはきたない
本当にきれい?
セファは悲鳴と轟音のする方へと歩き、そして辿り着いた
しかし、そこに居たのは彼女の思っていたモノとは違った
「人間……?(人間の姿をした魔族じゃない、魔族の魔力は紫色……)」
燃え盛る大地と崩れ行く家々
そして瓦礫の上で二人組の人間、それが魔法を使って暴れている
柳と狩苑だ
彼女はただ全ての魔族、憎い魔族を殺すことだけを考えて動いている、だって魔族は悪だから
だがあれはなんだ、紛うことなき人が憎き魔族と同じ姿をしているではないか
「勇者…?」
それしかないだろう、だって魔法を使える人間は勇者だけだ
「なんでこんなことを…?」
ただ立ち尽くすだけのセファ
そこへ魔法弾が頬を掠めた、いきなりの事に驚きながらも体は動かない
「勇者は救ってくれる存在なんだろ…!魔王を倒す存在なんだろ……!なんで、なんでだ!うあああぁぁぁ!!」
彼女は信じていた、魔族は悪だと
彼女は思っていた、醜いのは魔族だけだと
彼女はそれだけだ、優しい家族が
彼女は見なかった、醜い人間を
彼女には無かった、人間を殺したことが
彼女は思い込んでいた、人間はあんなことしないと
彼女は僅かな希望を見ていた、勇者は正義であると
「はぁ…はぁ……本当に醜いのは、魔族?それとも」
トリガーを手に持つ
ゆっくり、震える手で長銃へとセットする
銃を構えて、勇者へと狙いを定める
「ここで止めなきゃ……私がやるべき事は……!」
!!──────
弾丸が放たれた、しかし震える手で撃った為か軌道はズレて髪の毛一つに当たることもなかった
向こうもセファに気づいた
トリガーを短銃に付け替えて臨戦態勢をとる
「魔族……お前らだって、そうなんだろ!」
ダッシュで近づきながら数発発砲する、その全てが外れるか避けられお返しに炎が撒き散らされる
形成された炎の壁に歩みを止め同時に再び発砲した
「もっとだ!もっと暴れさせろォォォ!!」
「壊せ!でないと気が済まない!楽しいよォ!フハッ!」
支離滅裂なことを口走る二人、もう完全に人として大切なものを失っている
あれは人間だが人と呼べるかは大分怪しいだろう
柳の魔法弾がセファの足元に炸裂する、咄嗟に後退して回避したがそこへ更に火炎弾が飛来する
それを見たセファはつい思った、噴火の時もあんな赤が飛んでいたなと
「くっ……!お前らは…何ためにこんな事を、何が勇者だ、力を持っただけの馬鹿じゃないか……!」
ドンドンッドドンッ
地面を転がって避けると仰向けの状態で四発撃った
「あのバリウスとかいう男も!何が人間だ、ならあの魔力はなんなんだ!」
散弾銃へとトリガーを付け替え、二人へ接近戦を挑む
「あああああぁぁぁ!」
ジャンプして飛び上がり右脚で蹴りを狩苑の頬に叩き入れる
「このちっちぇガキがァァァァ!!」
炎を纏わせた手を振り下ろし彼女を掴もうとする
セファも着地と同時に回し蹴りを繰り出してその手へとぶつける
「くおォッ……」
「っ…!」
お互いダメージを負って声を漏らす
怯んだ隙を狙って柳が魔法弾を手に接近する
「だぁっ!」
狩苑の方を蹴り飛ばしてから柳と向かい合い相対する
その魔法弾を押し付け直で当てようと横に腕を振る柳
セファはしゃがんでその手を避けると顎にアッパーを喰らわせた
続けざまに腹部にも打撃を入れるも柳からの反撃が来る
バキッ
「うぅっ!」
顔を殴られそこから更に腹に膝蹴りを入れられる
膝に乗って地面から浮いた状態になるセファ
しかしすぐに柳の胸ぐらを掴んで引き寄せ散弾銃で顔面を叩いて地に伏せさせる
仰向けに倒れた柳の腕を踏みつけて散弾銃を構える
「くっ…………死ねぇぇっ!」
震える手で引き金を引こうとした、その時だった
柳がぼそりと、苦しそうな声で言ったのだ
「母さん……父さ……」
「!!……」
直後セファの動きが止まった
目を大きく見開いて、体の震えがより強くなった
何を思ったか、何を思い出したか
「…………うあぁぁぁっ!」
ヤケになって叫び、本当に引き金に力を込めた
だかそれは狩苑の妨害によって止められた
やり返すように蹴られて瓦礫の山の上から落下する
その間も柳と狩苑は苦しむように叫んでいた
「あの男も全部ぶっ殺してやる!壊したい!」
「もっとこの力を使わせろぉ、僕に文句言いやがって、そっちから勝手に呼んだくせによォ……退屈でクソみたいな現実からやっと抜け出せたと思ったのによ!」
魔力を昂らせその圧で周囲のチリクズが飛んでいく
セファは流れる血を拭いながら立ち上がり戦闘続行の意志を示す
「魔族は滅ぼすべきだ…でも人間だってもう信用出来ない……なら人間も滅ぼすべき?いやそんな訳……なら魔族は……いや魔族は滅ぼすべきだ今まで何度も見てきた」
独り言をブツブツと続けるセファ
そこへ柳と狩苑が近づいて来る、今の彼女の状態ではどうだろうか、不安だ
「はぁ……はぁ……」
「うゥ……」
「ふゥ……」
両者構えていつでも攻撃出来るようになる
いつ仕掛けるのか、今か今かとなっていると
そこへ一つの足音が近づいてきた
「嬢ちゃん、大丈夫か?それにお前ら……なんてことを……」
ラフなジャケット姿に身を包んだ老人、それはつい最近にも彼女は会っていた
そして柳と狩苑の二人とも縁のある人物だった
「ウォンバット…さん……」
静かに柳と狩苑を見つめるウォンバット
その眼は戦場に立つ軍人のような鋭く怖い眼
「あの日以来儂は……いや俺はずっと気がかりだった、お前らの事が…まさかこうなるとはな、本当に向いてなかったんだな……」
彼を見た柳はより激昂した
「うるさい!お前が口答えするからァ!」
「……俺が止めるべきだこれは、嬢ちゃんの出る幕じゃねぇ」
そう言ってウォンバットは両腕に付けたガントレットを合わせて鳴らし、構えを取るのだった




