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異世界のハマルティア  作者: そそい
根源蝕む悪夢編
25/37

まだ悪魔じゃなかった頃の話

だって家族だから

昔々、とある辺境で五人家族が暮らしていました

父と、母、そして娘三人の


その家族は仲睦まじく、不満と喧嘩のない、理想の家族でした




「お父さんこの人参食べていい!」


「駄目だよサラ、これは売りに出すものだ、後で別のを持ってきてあげるから、あっこらセニアしれっと取ろうとしない」


「やめなよセニア、父さんが言ってる」


「ありがとうなセファ、セファはしっかりしてるなぁ、母さんも言ってたよ」


「……ふへへ…」




しかし、それを理解することの無いものが現れました、二つ




「けほっ……けほっ……とぅさ……ひっ…いぃ……」


ある日突然、噴火が発生し家族はそれに巻き込まれてしまいました


辺りは灰にまみれ、地獄の名を得んと全てを焼くように包みました

そして父は死にました


みんな倒れ、作物は枯れ果てました

少女の髪からは、灰が抜けることはありませんでした




「かぁざ……ふぇ"っ……いだいよ……いたっ…いぃ……」


「セファ…!……サラ…!セニア……っ、ごめんね…ごめんね……」


「ママ…目が痒いよ……」




そしてある日、一人の男がこの地を訪れました


赤い髪が特徴的な、楽しい人でした


その人は、笑いながら町を焼いていきました

母と、娘二人は消えてしまいました


懐かしい煙の立ち上がる姿を見ながら、少女は焦げた喉で叫びました


そして、父を探して積もった灰の中から特別な力を手にしました

噴火で一緒に飛んできた物でした


少女は夢を持ちました













「こんなものですよ、大体……」


暖炉の火だけが輝く部屋で、向かい合って座る二人

まだ少し、肌寒い


セファの表情は、わからない

ただ、怒っているような感じはしない、そっと、目を閉じている


ウォンバットの方は、口をつぐんで、憐れむ目をする


「嬢ちゃんはぁ…強い子、なんだな……」


彼女の方を見て、老人らしい、掠れた声で言う

ゆっくりと、間を置き話し続ける


「でも…弱い子だ、人を頼るという事を知れなかったんだ……」


「それは……親がいなくなったから、ですか」


目を閉じたまま、少女らしい声を出して問う


「そうだな、穏やかでさえあれば、嬢ちゃんがこんな事をするこたぁ無かった……でもよ嬢ちゃん、遅いなんて事は無いんだ、あぁ無いとも……今からでも、ゆっくりでも、人を見てご覧な」


セファの体がピクリと動く、心做しか震えているような

彼女の瞳は今、どうなっているのだろう


今も炎は燃えているか、あの日の桜花を懐かしんでいるか


「これは私の復讐です…家族を、他人は引き裂けません、だから私だけで……」


「こうやって、メシ食うことも、ダメなのかい?」


髭を掻きながらシワをよせて言う

僅かに目を開け、空の食器を見るセファ


「嬢ちゃんの家族が良い人なら、心配してると思うんだが、どうかね」


「……そろそろしつこいですよ、私はもう十八なんです、子供扱いされる年じゃありません……私はセファです、一人の人間として…行動しているんです」


ただ守られて、付きまとわれる子供ではなく

自立して、人間としての明確な意思があると言い張る


彼女は今も一人だ、暖炉の火も彼女には余計なのかもしれない


「儂も、昔話をしていいか?」


「なんですか、別にいいですけど」


ウォンバットは少し笑うと席から立ち上がり、さっきセファが目にした勲章を手に持った

それを見る目はどこか物悲しく、誉の形に対するソレではない


むしろ後悔の形を見るようだ


「儂の若い頃のだ、あぁ……馬鹿なやつだったさ……今も……」

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