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異世界のハマルティア  作者: そそい
根源蝕む悪夢編
24/37

悪魔のよすが

リベンジハート!

バリウスとマイナスが飛び立った後

柳と狩苑は少し離れた所で傷の処置をしていた


寝かせた狩苑の隣でしゃがんで傷の様子を見る柳

狩苑は火傷の痛みもある程度引いて呻き声も治まり落ち着きを取り戻していた

柳の方は怪我を心配して声をかける


「本土に戻って医者に診てもらおう、船を出してもらうよう看守の人に言ってくる、包帯とかもあれば取ってくる」


立ち上がって監獄の方へ向かおうとする

そこへ狩苑がふと恨み言を呟く


「あの野郎…絶対に殺してやる……!クソが……クソどもが……!俺の手でェ……」


顔を手で覆いながら声を絞り出す


「あぁ、絶対に復讐してやろう」




狩苑絋威(カリゾノコウイ)柳亥八(ヤナギイハチ)、この二人はここの看守の一員である


勇者として呼び出された二人は元々魔族との戦いに参加するつもりで、かつてのバリウスと同じように騎士学校へと通っていた


しかし彼らが戦いに参加する理由、それは単純に手に入れた力を存分に振るいたかったから、楽しみたかったからである

そんな彼らにとって騎士学校での生活はあまり楽しさを感じるものでは無かった


基本的な戦いの動きや細かな連携の仕方など、思っていたように力を振るうことも、魔族と闘うことも無かった

地味で、退屈だったのだ、理想とは違ったのだ


教官などに魔族と闘うよう願ったが、当然実現はされなかった

その結果彼らは戦争への参加を辞め、囚人への暴力がほぼ黙認されているこの監獄の噂を聞いて看守として就いた

勇者という肩書きもあって即戦力として容易に採用された


それからの日々はそれなりに満足感のあるものだった、囚人の力を振るおうとも誰も文句を言わずやりたいようにできた

望み通り十分に暴れられたのだ、この日までは












本土のとある酒場にて、老人が一人孤独に酒をチビチビと嗜んでいる

コップ一杯程度と量は多くない、それをゆっくりと、時間をかけて飲んでいく


他の客はおらず、ひたすら静かに飲み進める


「また来させてもらう…」


飲み終えて木のカップを置くと、代金をやや雑に置いて店から出ていった


空は暗い、月も星も雲で隠れて光源は家から漏れでる僅かな光くらいだ


寂れた街並みの中をアテもなく散歩する


静けさの中に時折風に草木が揺れる音や野良猫の鳴き声が聞こえ耳に心地がいい

しかし老人の表情は硬いものだ


少し歩いたところで、暗がりに人影を見つけた、それは壁にもたれかかって動かない

それは小さく、子供のものだった


なんでこんな夜に子供が一人で出歩いているのかと訝しみ、声をかける


「お前さん、こんな夜にお使いかい?休んだらもう帰んな」


人影が老人に気づいた、彼の方に向き直ると言葉を返す、低く、悪魔のような声で


「別に、あなたには関係ないでしょう、老人が同じことしてるのも、どうかと思いますけど」


雲が月の前を去り、月光が差し込む

その光を反射して映し出された姿は、フードを被った灰の髪に巻き付けたベルトに備えられた銃


セファ・ロータス


顔には治りきっていない傷が目立っている


「儂はまだボケちゃいない、人生現役の67歳だ」


この世界の平均寿命を考えるとかなりの老人だ、しかし腰は曲がっておらず体は筋肉質、かなり凄いと言わざるを得ない


「そうですか、ならさっさと帰って寝ててください、そこまで生きて寿命を縮めるのは勿体ないですよ」


「…儂はジジイとして子供の安全を守るべきだ、嬢ちゃんを送り届けるくらいはさせてもらう」


優しさを含んだ声色で言う

だが老人の眼はは鋭く、重みを感じさせるものになっている


「(あの銃…恐らく神器、この嬢ちゃんは一体?)」


老人は銃がただの銃ではなく、神器ということに気付いていた、年の功がそうさせたのだ


「帰る場所?とっくの昔に失いましたよ、全部」


「……そうか、子供ながらその眼を持つのは……」


少し納得したかのように言葉を漏らす老人

そしてハッと我に返ったような表情をすると続けて話す


「言うのが遅れたな、儂はウォンバット・アルバリオス、嬢ちゃんがいいなら儂の家に泊めるがどうだい?」


それを聞いたセファはいつもと変わりない拒絶の言葉を吐く


「遠慮しときます、知らない人について行くなと教えられたので」


「それもそうだな、だが何か儂にしてやれる事はないかね」


「だからあなたには関係ないって……」


そう言葉を続けようとした時


グゥ……


セファから腹の音がなった


「フホホ、飯だけでも食べていくかい?」


軽く笑いながらセファを誘う、彼女の方は少し怒りながら渋々承諾した


「分かりましたよ…!最近あまり食べれてないですし…」


「ついて来なさい……名前…名前は何かな?」


名を聞かれ少し間を置いてから、小さい声で言う


「セファ……セファ・ロータス……」


「いい名前だ、ご両親はいい人なんだろうね」


「…………」


その言葉に対して彼女が何か言うことは無かった

そして、二人は月明かりを頼りにウォンバットの家へと向かって行った







「失礼……します……」


ウォンバットの家に着き彼に続いて中へと入るセファ

一応礼儀としての言葉を言いながら、靴を脱いで中へと進んでいく


家は老人の一人暮らしらしく小さく、一階建てのものだ


ウォンバットが暖炉に火をつけ、部屋を温める

セファは何をするでもなく、ただ突っ立っている

椅子を見つけると、それを引いて座り込む


なんだか困惑に近い表情をしている、緊張しているのだろうか

野菜か何かを切る音を聴きながらじっとする


「勲章……?」


棚の上に投げ捨てられたように置かれた目立つもの、煌びやかなそれは軍人に贈られるような勲章だった


不思議に思いつつも、彼女はじっとしている事にした


暫くするとウォンバットがポトフとパンを持って現れた

セファの前の机にそれを置き、スプーンも用意する


「食いな」


「いただきます……」


言われた通り食べ進める


特別美味しいとか、そういうのはない

だが魔族を殺し続けて数年、その間はロクなものを食べれない事が多かったため、久しぶりのまともな食事というだけで有難かった


なにより、懐かしい味がした


「よいせっと……」


向こう側の席にウォンバットが座る


「よかったら聞かせてもらえるかい、どんな人生をおくってきたのか」


突飛なことを言い出す

セファは怪訝そうな顔をしながらつっぱねた


「なんでそんな事を…あなたにはどうだっていいですよ…!」


「話せば少しは楽になるって、よく言うだろ、それだ」


頬杖をついてゆったりとした様子を見せる

セファは少し嫌そうな顔をしながらも言葉を綴った


「家族を殺された…魔族に、それと……」


最後の方は声が小さく聞こえなかった、しかしウォンバットは相槌をする


「なるほどな、それでか、もっと聞かせてくれ」


そしてセファ、少しだけ語った、自身の生い立ちを

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