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異世界のハマルティア  作者: そそい
根源蝕む悪夢編
22/37

暗き捕食者の鳥

ハンティング!

七羽の黒い鳥の形をしたもの、それは魔力の塊であり鳥を形作っているのだ

魔力によって動き、飛んでいるため翼はあまり動いていない、ただゆったりゆらゆらと、幽霊のように


鳥たちがマイナスの腕や肩へと止まっていく

彼女が差し出した腕を掴むと、狩苑と柳の方を凝視する鳥達


「なんだありゃ…おい柳知ってるかよあいつの事?」


「ちょっとだけ聞いた事がある…マイナス・フェイバー、殴ろうとして返り討ちにあった看守が結構な数いるらしい、食べ物を与えなくてもどこからか持ってくるし気味が悪いって」


「へぇ、まっ多分食い物とかはあの鳥がやったんだろうな、ただの鳥なら大丈夫だな」


柳の話を聞いてなお余裕に満ちた言葉を吐き出す狩苑

その手には再び炎が盛っている


「あれがただの鳥に見える?全身真っ黒で目も何も無いのが」


落ち着きを保つ柳がツッコミを入れる

しかし彼の油断は抜けきらない


「ヘヘッ、やってみりゃあ分かることだぜ!」


マイナスの方を見据えるとその手に力を入れ


!!──────


両手を合わせてテニスボール大の火炎弾を複数放つ

狙いは粗雑ではあるものの、幾つかはしっかりとバリウスとマイナスの方へ向かって行った


対して構えるマイナスはバリウスの前に出ると、彼の身を守ろうとする


「王よ、ここは私が」


鳥達が四方八方に散る

そして、その口の中にエネルギーを貯めていくと


!─!!────!──


魔法弾を口から放ち火炎弾を相殺していく

火炎弾は全てマイナス達に届くことなく空中で炎を終わらせた


「ぬるいですね、威力も、炎も…陽炎の揺らぎ一つも起こせないようでは王には遠く及びません」


呆れを通り越した何かのような表情をしてバリウスの方を持ち上げる

それに対して彼は不満気な顔で言った


「無駄口叩くなら俺がやる」


「それはなりません今すぐ始末します!」


「はいはい」


彼の言葉を聞いた瞬間態度を即座に変えて戦闘に本気になる、その雰囲気はより強いものとなって感じ取れる


「行きなさい、私の葬い鳥(フルールズ)


そう呼ばれた鳥達は一斉に上空へと飛び立ち、空の暗さも相まって見えなくなった


捕食者達が狩りへと解き放たれたのだ


察しのいい柳は笑って余裕ぶっこいている狩苑へ忠告する


「気をつけた方がいいよ、あれ……」


「あいあいっと!」


続けて魔法弾を放ち続ける狩苑、その大きさは次第にボウリングの玉ぐらいのサイズへと巨大化していく


マイナスの方は獣人特有の身体能力を活かして火炎弾を回避しながら狩苑の方へ突き進んでいく、砂は焦げ黒く染っていく


そこへ避けられない炎が迫り来る


「行けっ!」


残っていた一匹が炎の中に正面から突っ切り回転飛行してかき消していく、鳥の方は炎で焼け縮み少し形が崩れたがすぐに元に戻った


「あの鳥痛くねぇのかよ!」


「別に生き物では無いだろうしね…」


驚いている狩苑をよそにマイナスは大きくジャンプして空中で横へ捻りを加え上を向きながら狩苑の斜め上へ迫る


「……えぇ、それです」


「このままお前を隕石みてぇに燃やし尽くしてやる!」


そう叫んで手に炎を纏わせると、それを空中のマイナス目掛けて放った

空中では防ぐ手段なんて無い、そう思われた時


パシッ


「!?」


突如上空から大きな木片が落下してきて、それをマイナスがキャッチした

これは空にいる鳥が落とした物だ


体勢を直すとそれを木の盾として前に突き出して炎を防いだ、しかし木であるため当然燃える

特に彼の炎は魔法という事もあってよく燃える


だがこれだけ距離が近ければ


「えぇ隕石、それで合っています…ただし燃え尽きるのはお前の方!」


二人の距離が近かったが故に、燃え盛る炎の盾は彼女に移る前に

マイナス自身がその盾を狩苑へとぶつけていった


ブゴォォォオオオ!


「うあああっあぅぅぅうああああ!!!」


自分の炎と直に触れて顔をおさえて悲鳴をあげる

バリウスに命令された通り殺しはしなかったが、火傷は間違いなくしただろう


顔をに手を当て痛みに転げ回っている


「狩苑っ!!」


急いで悶え苦しむ狩苑の方へと駆けつけようとする柳、しかし


ブォドドドドドド!!


「ぐああっ!!」


上空からの魔法弾による絨毯爆撃を喰らって吹っ飛ぶ柳、こちらの方が怪我は軽そうだ

その証拠にすぐ動き出している


狩苑の顔に手を出すと魔法で水を出して顔を冷ましていく


「いてぇぇ……いでぇ…」


「くっ、ここは逃げよう、お前らは今度倒してやる!」


そう捨て台詞を吐くと狩苑を抱えて暗闇の中に姿を消していった


「島の中から逃げられると…」


「もういい」


「はい!次のご命令を、王よ」


彼の声に戦闘中よりも早く反応して足元で跪く

彼女の意識のバリウスに対する割合はかなり大きそうだ


「あぁ王よ…やっと再会できて私は嬉しいです…!貴方様にじっとしていろと命令を受けましたが日々は退屈そのものでした、しかし!今日この日の為に私は」


「……」


そっと唇に人差し指を当てて伝える、言葉を出さずに


ちょっと黙れ、と


「……」


「……よし、お前の鳥でこの島から街へ戻れるか?」


静かになったところで肝心なことを質問する

マイナスは真面目な顔で答えた


「はい、可能です、今すぐ出発なされますか?」


「あぁ、早く出よう」


「承知しました……フルールズ」


鳥達を呼びつけると続々と彼女の元へと集まっていく

そして何やらマイナスが鳥達に指示を出すと、鳥達はひとかたまりになり始めた


すると


──ゥュ─────ュ──


鳥同士の境目がなくなり、混ざり合い、形を変えていく、そして

なんと鳥は合体して一匹の大きな鳥へと変化した

これなら人が乗れる程度には大きい


ただし問題がある、人が乗れる程度と言っても、一人が限度の大きさだ


「王よ、どうぞお乗り下さい、乗り心地は悪いかもしれませんが」


「いや、お前が乗れ、俺は足に捕まりでもしてる」


「そんな!王にそのような事をさせる訳には!」


当然食い気味で遠慮するマイナス、しかしバリウスは押し切る


「俺の方が腕は頑丈だし体力もある、早く乗れ」


「王のご命令なら…はい…」


頭についた獣耳が垂れ下がっている、落ち込んでしまったようだ

それを見兼ねてバリウスは一つ甘い言葉を出す


「言っとくけど、戻ったらしばらくは一緒に居ることになるからな」


「ふぇっ!?王と身を共にですか?!」


マイナスを乗せて軽く浮くフルールズの集合体


「あぁ、ただし命懸けで闘ってもらうがなっと」


それの足に右腕で捕まるバリウス、鳥の方は大丈夫そう


「はい!私は王の為ならばこの命使い果たします!王の盾として何があろうとも障壁は取り除き王をお守りします!」


感情をありのまま出しまくる、少なくとも協力はしてくれるだろう


「そう、頑張ってくれよ」


「王が私を必要としている、こんなに嬉しいことはありません!まずは何がお望みですか?何をして欲しいですか?」


「落ち着いて欲しいかな」


そして鳥は完全に飛び立つと、監獄の島を後にするのだった

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