死者からの奸邪な贈り物
圧倒的な力!
「…………」
ズサッ……
紫の魔力を漂わせながら構えをとる
魔力を解放した圧により流れ出て付着した血液は飛散し、地面に混じっている
その血の色は何ら人間と変わりないものだ、魔族とも同じ色ではあるが
「やっぱり…やっぱり嘘をついてたのか!お前!」
魔族を何より恨むセファが疑いと怒りを込めた声で叫ぶ、いつも通り全てを射殺さんとするような眼だが今は一際極まっている
彼女の方へ首を動かすバリウス、かろうじての弁明紛いをする
「俺は人間だ、人間として今闘っている」
鋭い目つきをしているバリウス、特段怒りも、愉しさも読み取れない
だが額には微かに汗が浮かび、時折体を震わせ表情を顰める
やはり時間は無いらしい
「くっ…っ……あなたは一体何なんだ!!」
ヤケになったか、銃を構えバリウスを狙い撃とうとする
しかしそこへエリニュスの邪魔が入った
「邪魔するんじゃねぇ!!」
ドォォォン!
魔法弾でセファを吹き飛ばす
そのまま彼女は瓦礫の山に突っ込んで埋もれた状態になった
「今はこいつが面白そうだ…!!」
ニヤリと口角を上げる
彼を捉える眼は輝きに満ちている
「今度は俺からだ……ハァァ!!」
「はやっ?!いっ……!!」
バリウスが一瞬、影だけになった
そしてその時既に
ドゴッォ……!
飛びかかった彼の左肘がエリニュスの首ど真ん中に叩き込まれる、その勢いのまま地面から僅かに浮いた状態で前進は止まることなく飛んでいく
壁が見えてきた
「フンっ、ダアアアァァァァ!!」
ボゴォッ!ドォ─────ン!!
空中で顔面を殴りつけ、右脚で蹴り飛ばす
エリニュスは壁にクレーターを作って衝突しずり落ちる
体の表情や怪我の様子から相当なダメージを受けているようだ
さっきまで防戦一方だったのは嘘だったか、その圧倒的な力で叩きのめしている
エリニュスを見て、次なる攻撃の構えをとる
「……裂けて消えろ!」
下から掬うように手を振り上げ、魔力の刃を飛ばす
地を這って進み地面に綺麗な切断跡を作っていく
「真っ二つはごめんだ!」
横へ飛び込み回避する
しかし、そこへ魔法弾がいくつも飛来する
「こいつはトぶしかねぇ!」
テレポートを三回連続で使用して上空へと避難する
お返しと言わんばかりにこちらも魔法弾を放つ
「ちゃちい技だけかお前は」
バリウスが手のひらに魔法弾を作り上げるとエリニュスの方へジャンプして魔法弾同士を接触させる
魔法弾同士がぶつかると爆発するが、それよりも彼の跳躍のスピードが勝った
爆発する前に魔法弾を引き連れエリニュスの前に接近し、その二つの魔法弾を押し当てる
「まずい!これ以上はっ……」
ドォォオオオオオォン!!!
爆発が引き起こり煙で二人の姿が隠れる
だがすぐに現れた
ヒュ───────ドォン!
地面に激突したのはエリニュス
彼の振り翳した腕を喰らって落下してきたのだ
バリウスの方もすぐに着地して出血の目立つエリニュスに歩み寄る
「こいつで終いだ」
倒れこんだ相手に手を向け、魔力を込めていく
魔法が渦を巻き放たれようとしたその時
「テメェがここで終わるんだァ!」
素早く起き上がり右の拳をバリウス目掛けて
バリウスも咄嗟に魔法弾をキャンセルして同じく右の拳を放つ
後出しだがバリウスの方が先に届く
そう思われた矢先だった
「!…ぐがっっァ!!……」
突如、バリウスの動きが止まった
それと同時に苦痛の声も洩らす
タイムリミットだ
ブゴッォオオ!!
「うああああああァァァッ!!」
パンチをモロに喰らって吹っ飛ぶバリウス、しかし壁に着地して魔法波を放つ
─────ドォォ……ン!
「くはっ……けっ…」
地面に倒れ込むと息切れが目立ち始める
傷口が開いたか血が滲み始めた
「なんとか…もった……死んじゃいねぇ……」
気合いで立ち上がり最後の一撃を発射する
「うおおオオオオオォォ!!」
!!─────
満身創痍のエリニュスはこれを見て撤退の決心をする、最後の力を振り絞っての
「10……いや20、やってやるよォォ!!」
「はぁ……はあぁぁぁ……」
深く深呼吸をするバリウス
同時に紫色の魔力も消えた
魔法弾が着弾した箇所には、人影はない
ひとまず、なんとかなったようだ
「リュディ…行かないと……俺はまだお前と一緒に、いた……」
そこで彼の視界は黒く染まった




