過去の巡り合わせ
これは明晰夢!
「……」
森、それが今彼がいる所だ
城壁の外へとその身一つで出て目的地であるラバー平野を目指している
この森を抜けた先にラバー平野、もっと言えば手紙にあった滝が流れている
滝は海へと流れ出ており、景色は界隈だと人気があったりなかったり
付近には火山なんかもある
ザッ……
「見えた、あそこか…」
山のテッペンまで辿り着き次は下っていく
やはり下る方が楽というもので、滝に着くまで時間はかからなかった
「!……あいつか?」
滝の横の地面に座り海を眺めている人物が一人
体格的に男だろう、地面についた手にはバイクグローブのようなものが身につけられている
「(なんだ……既視感か、これは……?)」
その男の元へと歩みを進める
何故か足取りが重いような気がするが、これは緊張だろうか、それとも自身に根付いた別の…
「(奴は何故俺がリュディと同居している事を…何か手を出そうというなら……)」
二人の距離3m、ここまで近づいた
男も反応を示し、バリウスの方へと立ち上がり振り返る
「クククク…顔つきはあまり変わっていない様だな、だが、面白いものを見ただろ?」
その顔、それはバリウスにとって忘れがたい
最初の喪失の原因だった
「!!ぁ…あ、はぁ…はぁ、お前、なんでお前がぁぁぁぁあ!!」
!!!───────────────
反射とも言える速度で目の前を直線上に吹き飛ばすバリウス
あたりに土煙が舞い、抉れた地面の破片が四方に転がる
「ハハハハハハ!やはり、やはりか!お前が得たのか!あの女の力を!」
上空から降下し、着地しながら高らかに言う
あくどさ極まったような笑みを浮かべ、腕を組みながらバリウスを瞳の中に捉える
「お前が、お前がシグラを殺した!お前が裏切った!お前さえ居なければ!」
「まだそっちを引き摺っているか、さぁお前がどれだけ強くなったか見せて貰おうか、元教官として!」
何年前だったか、この世界に来たばかりの頃
「俺に動きを教えてくれないか!」
「なんで私が貴方にそんなことしなくちゃなんないのよ!」
俺は戦争に参加するつもりだった、あまり深いことなんて考えて無かったとおもう
ただ魔法とかに惹かれて、それだけだったと思う
戦いに参加する者は騎士学校に入学する事になった
結構楽しかったさ、その一環だった
首席入学した女性に教えを乞おうとした、それより前から面識自体はあったが、まぁ接しにくい奴だった
「気に食わないのよ、貴方達みたいなヘラヘラとしたのが、何の苦労もしないで此処に居るのが!」
「病を広げる鼠のような存在なのよ貴方達は、邪魔なのよ!」
口を開けば大体罵倒の類だった、食堂で前の席に座ったから会話したらこれだったからビックリした
でも実力は確かだった、煽ってゴネて結果的に色々教えて貰えることになった
仲はあまり良くなかった
悪口を言い合った
文句を言い合った
ボコボコにされた
馬鹿にされた
一緒にサンドイッチを食べた
悪態をつかれた
倒れた所に手を伸ばされた
秘密を共有した
やっぱり仲は悪かった
でも、友達だった
「託すのよ、貴方に……魔族をっ…必ず……倒……」
左耳の耳飾りは彼女の物だ
「ア"ッ"─────!!」
ローエイへ飛びかかり拳を振るう、しかし軽く体を動かしただけで回避されてしまう
「フッ!!」
ボゴ!
腕は組んだままに、バリウスを蹴り上げる
「ぐあっ、うっ、ハアアアァァアア!!」
蹴りで半回転した所で空中で逆さのままさっきと同じように魔力をフルで込めて放出する
「くっ……はぁ……はぁ……」
自身の放った魔力波の反動で後ろへと軽く吹っ飛び宙で一回転して着地する
「(まだだ奴の魔法は確か)……!ぐあっ!?」
土煙が揺れた瞬間、突如として吹き飛ばされるバリウス
攻撃など微塵も見えなかった
「フフフフ、やはり実践を積んだだけあるな、他の勇者の奴らと比べても頭一つ抜けている、強い、それは認めてやろう」
特に傷を負っていない状態で現るローエイ
しかし今の彼には人間には無いはずのものがあった
「だがあの女にはまだ遠く及ばない」
「あの時と同じ色だ…何故だ……何故シグラを殺した」
彼が身に纏うそれは、正しく魔族の証である紫の魔力だった
「…なぁに、あの女の生き死にに興味が無かっただけだ」
「お前は何だ、何がしたい…スパイか?悦楽か?」
怒りの表情を浮かべながら問う
「アイツから聞かなかったか?俺は研究者だ、俺の行動全てが研究の為だ」
「ふざけるなぁぁぁぁァァァァァァ!!」
右腕を振り翳し巨大な炎を前方に広げる、野原はたちまち表面が黒ずみ、燻る
それに対してローエイは地面を踏みしめると空高く飛び上がった
「ハッ!」
頭上まで両腕を上げ大きな魔法弾を作り出すと、それを腕を振り下ろしバリウス目掛けて発射する
「クッ、ガーーー!!」
!!───
左脚で蹴り上げローエイの方へと弾き返すバリウス
ローエイは右手を突き出し、一瞬、魔力を纏わせ力を込めると
ボォン!!
数メートル距離はあったというのに魔法弾は木っ端微塵となった
バリウスにも行った、不可視の攻撃
しかしバリウス本人はその正体を知っている、三年近く前にも、彼と闘ったのだから
「(衝撃…シンプルではあるが面倒だ、見えないせいで判断が遅れる衝撃波に、空中を自在に飛び回る機動力、だが!)前と同じ様にやれると思うなよ…」
「ハハハハ!本気を見せてみろ!それで示せ!」




