リストラされた女①
なぜ草を食うほど貧乏な生活をしていたかというと、
一番の理由は後に明かすとしよう。
しかし、事の発端となる出来事があった。
半年以上前、私はリストラされたのだ。
アパレルのセレクトショップで8年勤務していた私は、
店の合併と同時に要らない存在として一番に候補が上がった。
「申し訳ないけど、辞めてくれないか」
正直、辞めたいと思ったことは何度もあった。
だけど自分から辞めます、なんて言うのはなんだか癪に障る。
だから、会社側からその通達が来たら受け入れようと思っていた。
最初は「自己都合として処理してもいいか」なんてことも言われたけど、
当然拒否をした。
辞めてくれと言ったのはそっちだ。
解雇したとなると、求人掲載のペナルティがあるとかで。
知るかよ、そんなこと。
8年も勤めていれば、贔屓にしてくれていたお客さんも多数いる。
私の退職を知ったお客さんは「今ままでお世話になったから」と言って、
グラスやワインなど贈り物をくれたのだ。
いや、お世話になったのはこっちの方ですよ。
たいした営業トークも出来ず、口下手な私に付き合ってくれたじゃないですか。
そんなお客さんたちに、心からのありがとうを言いたい。