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草を食う女②
シロツメクサはおひたしにすると美味しいらしい。
大の大人がシロツメクサを大量に採り、ビニール袋に入れる様を、
犬の散歩をしていたおじさんにはどう見えていたのだろうか。
しかし、そんなことは関係ない。
私はお腹が空いている。
アパートに戻り、花の部分をちぎって茎だけを湯がく。
本当はポン酢で食べたかったが、あいにく醤油しかない。
醤油をかけて食べてみると、特に美味くも不味くもない。
雑草なのだから、こんなものだろう。
当然ながらそれだけでは腹が満たされなかった。
明日は違う雑草を採りにいこう。
不審者に見られようとも、食料を確保するために。
煙草で空腹を満たそうと思っても、
500円もする煙草を買えるお金は持ち合わせていない。
灰皿からまだ吸えそうなシケモクを探し、灰を払って火をつける。
ああ、うまい。
そんな幸せな瞬間はわずか30秒ほど。
フィルター部分は苦すぎるので、境界線ギリギリのところで火を消した。