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我が愛しのリリス様

悪魔使い

作者: 千雫

一人の令嬢が悪魔と手を組んで仕返しする話

ずっと頑張ってきた

血反吐を吐くぐらい…本当に血吐いたけど

でも一部の人以外誰も見向きもしなかった…全部あの女のせい

私は公爵の娘として順風満帆な人生だった

お母様が亡くなって、お父様()お義母様(娼婦)とその娘を連れてくるまでは

屑は娼婦と娘可愛さに、まず私を別邸へ送った

まぁ、別邸に送って侍女を付けないぐらいならまだ許す

でも、お母様のドレスやアクセサリーを娼婦に身に付けさせるのは、お母様を馬鹿にしているのと同じと気付かないのは許せない

だから私は送られる前、それこそ屑が娼婦を連れてくる前に全部お祖父様のところに渡した

お祖父様は喜んで預かってくれたし、怒ってもくれた

屑と娼婦は怒ってたけど、お祖父様が取りに来たと言えば直ぐに黙った

妹だと言う馬鹿には苦労した

直ぐ人のものを欲しがるし、手に入れたと思ったら直ぐ捨てる

平民なのに物を大事にしないなんて、かなりの馬鹿ね


「それでリーゼはマァヤと手を組んだの?」


「手を組んだなんて…利害の一致と言ってくれない?」


「(同じじゃない?)パティもよくリーゼの要求飲んだね」


「だって、破滅させるためにここまで準備する人間普通いないじゃない?だから面白くなっちゃって」


悪役令嬢とその名を轟かせるリーゼリア・ハート公爵令嬢は陶器のような白い肌に、黄金の髪、そしてルビーのような真っ赤な瞳を持つ美しい令嬢だ

マナーなども完璧で、淑女の鏡どころか王妃としても申し分ない実力である

そして彼女の周りには、同程度の実力を持つ新緑の髪と瞳のセレニカ・ローズバッド伯爵令嬢、蜂蜜色の瞳に白銀の髪のマァヤ・オズボーン子爵令嬢、空色の瞳と髪のパティスリー・レガード侯爵令嬢がいた

四人のお茶会は周りの者にとって目の保養とも言えるほど、高貴で優雅であった

彼女達の不穏な会話が聞こえてない限り


「面白くなったって…()()との取引で対価が本人じゃないって珍しいし、()()に怒られない?」


「大丈夫よ…()()はちょっと過保護だけど、ちゃんと謝れば許してくれるわよ」


「父親ってそんなものなのね」


()()は悪魔の中でも結構特殊よ…でも親が子供を思うのは種族関係なく当たり前のことだって、()()も言ってたけど…人間ってそうでもないのね」


「人間っていうか、貴族社会ってのが特殊なんじゃない?悪魔はこんなに面倒なことしないし」


四人の会話は周りに聞こえないよう阻害の魔法がかけられているが、誰もそのことに気が付かなかった

四人が談笑していると、普通の令嬢にしては五月蝿い足音を立てて義妹がやって来た


「お姉様、もう私を苛めないでください」


「……はぁ…会話に割って入ってくるのはマナー違反でしてよ」


「お姉様!私、とても「貴女、どなたですの?私、幼子が学園に入れるなんて初めて知りましたわ」意地悪なこと言わないでください!」


「意地悪…ですか?マナーについて教えて差し上げたことをそう言うのであれば、先生方全員意地悪になってしまいますが…」


「屁理屈言わないでください!お姉様の取り巻きの分際で私に文句は言えないですよね?」


「リーゼ、いつもこんな感じなの?」


「そうね…まだ通じてる方かしら」


暫く娼婦の娘が文句を言った後、満足したのかドスドスと令嬢とは思えない足取りで帰っていった

呆れている四人は次の授業の為に早めにお昼を済ませた


「リーゼリア・ハート!!お前は妹であるステラを虐め、更には傷跡が残りそうな怪我をさせた!よって貴族籍剥奪後斬首刑を言い渡す!そして新しい婚約者は愛しいステラがなる」


「嬉しいですガイル様ぁ」


卒業式の日、在校生と卒業生達はドレスを身に纏い各々楽しんでいたが、水を差すように第一王子が大声を出した


「はぁ…(屑と娼婦も手を貸しているみたいね、ゴミ掃除が楽になるから良いけれど)私と殿下は婚約を一度もしておりませんが…畏まりました、陛下達に婚約者()()を辞退する旨を伝えせていただきます」


リーゼの言葉に知らなかったもの達は驚いていた

知っていた家の者達は直ぐに婚約の打診にとそわそわしていた

王子達も知らなかったようで、二人ともくっつきながら驚いていた


「殿下」


「なんだ」


マァヤは背筋を伸ばし、扇で口許を隠しながら鋭い目付きでバカ達に尋ねた


「先程からそちらの方がリーゼリア様の妹と仰っておりますが…私、ハート公爵家には娘一人だけと両親に聞いておりますが…本当に妹なのですか?」


「酷いわ!ガイル様、あの人はお姉様の取り巻きの方です!だから私に意地悪を言うのだわ」


「平民が貴族である私達にそんな態度をとって、タダで済むと思ってるのかしら?」


「パティ、あの平民はマナーもできない幼子なのよ…夢と現実の区別がつくわけないわ」


「平民?嘘言わないでよ!私は公爵令嬢よ!!アンタ達より上なのよ!アンタ達は私に頭を下げなきゃいけないのよ!」


怒鳴るステラに「ほらね?」と苦笑いするセレニカとそれを見て引いているパティとマァヤは会場に分かるほど少し大袈裟に動いた


「殿下ならばご存知だと思いますが、ハート公爵家の当主はどなたでしょうか?」


「リーゼリア達の父親だろう」


「(あー…そこからかぁ)違います。ご存知の方は分かっていると思いますが、ハート公爵家の当主はリーゼリア様の母君であるロゼリー様です」


「「はあ!?」」


あまりの無知っぷりにマァヤだけでなく、会場の知っているもの達は眉を潜めた

リーゼリア本人も、王子がここまでアホとは思わなかったらしく、淑女としての彼女の仮面が剥がれていた


「リーゼリア様の父君は元は子爵家の三男ですよ」


「私が成人するまでは母の弟である伯父が代理として公爵家の当主をしています。母が亡くなった時点で父は子爵に戻りますが、婿に行った後実家の貴族籍を抜かれていますのでただの平民です」


「平民の両親から生まれた子が平民なのは当たり前でしょう?何故か平民の方々は我が物顔で公爵家で好き勝手していたみたいですが…」


馬鹿にした笑みを浮かべながらリーゼリア達は事実を伝えた

リーゼリアは復讐のために様々な準備を行ってきた

まず最初に行ったのは、当主である母が亡くなった後に代理として伯父に権利を渡した

勿論伯父は父親のことをよく知っていた為、家の存続のためと喜んでやってくれた

婿養子先の侯爵家も賛同し、彼の妻が積極的に領地経営の手伝いをした

貴族の女性にしては経営の知識が豊富であり、伯父がハート家の仕事中は自身の領地の仕事をしていた


「父が屋敷にいられたのは私の温情です…ですが、実の娘を使用人のいない別館へ送り、母の私物だけでなく私の私物も奪うような人を親だとは思えません……貴方は一度も開けていないみたいですが、屋敷から去るよう手紙を届けたのを知っていますか?」


「可哀想なリーゼリア様…メイドを一人も付けてもらえず、更に義妹だと名乗る平民のせいで名誉も傷つけられ…とても貴族の者、人としてできない行いですわ」


「そうですね…元公爵も実の娘と他人の娘の区別もつかないみたいですし…」


「は?…それは一体どう言うことだ!」


突然のスキャンダルにニヤニヤとリーゼリアのことを見ていた父親が口を挟んできた

リーゼリアはこの人はここまで愚かだったかしら?と思いながら、マァヤ達の話を聞いた


「有名な話ですよ。そこの平民の母親は元娼婦で、元公爵が買った後、与えられた家で何人もの男性を連れ込んでいるというのは」


「全員見目が良い方ばかりで、その中の一人だけ貴方の自称娘と同じ髪色の方がいらっしゃるんですのよ」


「今も何人もの男性が屋敷に来ているのはご存じないのですか?」



わざと驚く三人に会場中の人間が嫌悪感を示した

言われた本人は嘘だと喚きたてるが、元から評判が悪く、貴族の者から爪弾きにされていたため、皆信用しなかった


「はぁ…馬鹿だと思っていたが、ここまで愚かだとは儂も思わなかった」


突然の国王陛下の登場に皆が礼を尽くそうとしたが、片手で制し楽にするよう命令した

国王の登場に一番驚いたのはガイル達だった

予定では明日隣国からの帰国予定だったからだ

勿論これもリーゼリア達の策によるものだった


「(こんなに上手くいくなんて…初めてにしては上出来かな)陛下、発言の許可を」


「よい、許す」


セレニカは今までの学内での出来事(主にガイル達)とハート公爵家のことを話した

国王は事前に知らされていたが、改めて事実確認としてセレニカの話を聞いた


「儂が黙っていたことでどうやら調子に乗った者がいたようだが…改めて聞くと愚かだな…そう思わないか?ガイルとそこにおる平民達」




「それにしても…こんなに簡単にいって良かったのかな?」


「失敗するよりは良いんじゃないんですか?」


「お姉様も酷いですねー、私達の力を使わなくてもできる人間にあんな約束して」


セレニカ達は喜劇が終わった後、 ゆっくりと庭園でお茶を飲んでいた

遠くからリーゼリアがやって来たが、ただ視線を向けて微笑むだけにした


「随分楽しそうですね…結果を聞きますか?」


「私の予想では平民落ちか労役かしら?」


「それは王子のこと?それともあの平民達?」


「勿論両方」


「残念ながら娘は修道院、屑は犯罪者として労役、娼婦は犯罪者達の娼婦へ、王子は一代限りの男爵で終わりました…あ、勿論王子は去勢しますよ」


予想より面白い結果にならないと感じた三人はとても残念そうな顔をした

その三人の顔を見たリーゼリアは「仕方ないんですよ」と一言呟いただけだった


「ねぇ、私達がこっそり罰を与えても良いかしら?」


「え?別に構わないけれど…これ以上貴女達に払えるものはないわよ?」


「大丈夫大丈夫、最初の約束通り君の子供で良いよ」


「じゃあ行きましょう!ミカエルお兄様、ロゼッタお姉様」


令嬢三人が立ち上がり指を鳴らすと、三人は本来の髪色と瞳に戻った

ミカエルに至ってはカツラを外し、服装を元の男性服に戻した


「あら、マァヤとパティは双子だったのね…セレニカ貴方…殿方だったのね」


「まったく…どうして僕が女装しなきゃいけなかったんだ…別に令息でも良かっただろ」


「それではこうして情報共有するのが難しくなってしまいます」


「似合っているとお母様も言ってましたよ」


「母上、それは複雑な気分です…」とがっくりと項垂れたミカエルに双子がくすくす笑っていると、リーゼリアはそれを眩しそうに見ていた

リーゼリアの視線に気付いたミカエルが尋ねると、三人の関係が羨ましい、自分ももしかしたらこういう未来があったのかもしれないと語った


「リーゼリアにはまだチャンスがあるよ、旦那と子供達でそれを作れば良い」


「勘違いしてるかもしれませんが、私達は物理的に貴女から子供を貰うわけじゃないですよ…皇太子がいなくなったら国を奪えなくなりますから」


「え?じゃあ貴方達の狙いは…この国?」


三人の意図に気付いたリーゼリアは驚きで目を大きくさせた

その姿を見た三人は似たような顔でくすくす笑って影に消えた

「結果を楽しみにしてて」と声のみが風と共に聞こえた


「私…もしかして大変な悪魔達と手を組んでしまったのかしら?」







「何で私がこんな目に!」


ボロい馬車の中、ステラはリーゼリアのせいだと呪いの言葉を吐いていた

修道院行きへとなったステラは、窓枠は格子の様になっている罪人用の馬車に乗って向かっていた

それを遠くから見ていたミカエル達は、どうやって楽しむか相談していた


「食い破られるのはどうかしら?」


「私アレ嫌いなのよね…だって汚いじゃない」


「苗床にするのも(卵が)可哀想だね…弱い奴しか産まれなくなる」


ミカエル達は悪魔らしい楽しみ方を出したが、あまりにもステラがお粗末なため、玩具として役立たずであると結論付けた

結局、有効活用の仕方が餌場行きしか思い付かなかったので、影にセリーヌの元に送るよう頼んだ

一方父親の方は、魔法の実験台兼練習の的として蘇生魔法と回復魔法の使える者に渡した

若い世代の練習が捗るとわくわくした魔族は、ミカエル達にお礼を言い連れていった


母親は娼婦としての手腕は凄いが性格に問題があった

そこでミカエル達は魔族と子ができにくい者達へ贈った


「それは死ねないようにしてあるから好きなようにして良いよ」


「ホントに良いんですかい?こんな小せぇ体じゃ、俺達の子は産めねぇんじゃないですかい?」


「大丈夫よ、それは雄なら誰でも喜んで発情する雌だから」


「貴方達全員でこの雌に仕込むと良いわ…お腹が膨らみすぎて不細工になるかもしれないけど、別に気にしないでしょ?」


「勿論じゃよ、儂らは子さえ産めば造形なんて関係なしじゃ」


遠くの方で女の汚い声と男達の喜ぶ声が聞こえたが、三人は城へと帰った

三人が帰国し、王妃リリスの部屋に向かうと途中で悪魔ルルとすれ違った


「姫様達~、お疲れ様で~す。さっきセリーヌが嬉々とした顔で拷問部屋に行きましたけど、何かしましたぁ?」


「良かったわ!実はセリーヌ様に愚かな人間を一人贈ったんです」


「玩具にするには不良品だったので、ただ餌場に送るよりセリーヌ様に有効活用してもらいたかったんです」


「セリーヌのお眼鏡に叶うなんて…使えないと思ってたけど、最後は役に立ってあの人間も嬉しいんじゃないか?」


驚きながらも嬉しそうに言う三人の顔が母であるリリスにそっくりだった為、ルルはそれを嬉しそうに眺めた


「やっぱりリリス様似ですねぇ~」


「そう?僕は父上似だと思うけど…」


「顔の造形はお二人の血を半分ずつですけどぉ、性格はリリス様…リリア様の方が近いかなぁ?」


ルルが首を傾げながら呟くと、後ろからリリスとリリアがやってきた

赤と青の対のドレスを着た二人は四人に気付くと、声をかけた


「お帰りなさい。影から報告は受けてますが、三人の口からお話を聞かせてくれるかしら?」


「リリアお姉様からアドバイスするならば、あのポンコツ達を仲違いさせた方がもっと面白いことになってたと思うわよ~」


部屋へと話しながら向かうリリス達の後ろ姿を見ながらルルは「やっぱりそっくりですねぇ~」と呟いた

ミカエル・ロゼッタ・カナタ

リリスの子供達、ちょっと三人で国を乗っ取ってこいと父親(魔王)におつかいのように言われて実行した

本当はリリス達が国を取った時のようにしたかったが、ルル達に初心者には次世代の皇太子を狙った方が良いと助言され令嬢と手を組んだ

兄ミカエルを女装させたのは面白半分だが、案外似合っててちょっと双子(妹達)が嫉妬したのは内緒


リーゼリア

悪魔に契約持ちかけられた令嬢

その後は第二王子と結ばれ王妃となった

息子が絶賛狙われ中……もしかして契約する相手間違えた?と内心思っている。後に近付いてきた令嬢と聞いたことない家名に察して息子と婚約させる


第一王子(ガイル)

男爵領に送られた後、姿を変えられる魔族と交換された

今は餌場で可愛がられている

ガイルに成り代わった魔族は連絡役として仕事をしている


リーゼリアの元家族達

研究の発展、子孫繁栄、と功績をあげているが既に廃人になっている


ルル・セリーヌ

三人ともリリス様…いや、リリア様似だなぁと思ってる

あの娘下僕適性ありすぎ!!姫様達ありがとうございます!とほくほくしてる

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