表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
M星  作者: Nombre
3/10

第三話「小さな空」

 あと4本で出られる。

 お母さんはそう手紙で教えてくれた。

 けれどそれは何日も前の約束。手紙はもうずっとこない。

 わたしは天井の小さな窓に手紙を重ねる。

 いつもわたしを照らしていてくれた電球よりも太陽の方が明るい。

 お母さんは嘘をついたかもしれないけれど前のお母さんは嘘つきじゃないかもしれない。

 だって『白い人』の目はあんなにも青かったから。

 あの『白い人』はもう『あの星』に帰っただろうか。

 わたしも早く家に帰りたい。

 家に帰ったら空が見える家に引っ越せるようにお母さんを説得してみよう。



 ここに閉じ込められた人たちがみんな病気で死んでいく。

 わたしもここから出る前に死んでしまうかもしれない。


 そうだ。

 あの透明な壁は壊れる前に白くなった。

 もうずっと前の事だけれどわたしは頭が良いから覚えている。

 わたしの身体はみんなより小さいけれど背伸びをすれば天井の窓を白くできる。


 わたしは何度も小さい窓に息を吹きかけた。だけどこの透明な壁はびくともしない。

 足の指先が痛い。

 わたしは何日も何日も窓を白くした。それでもこの透明な壁はびくともしない。

 早く家に帰りたい。

 わたしは頭が良くて良いから覚えている。透明な壁は白くなれば壊れることを。

 息を吹きかければ窓を白く白く出来ている。

 あともう少しかもしれない。

 なんどもなんども吹きかければ白くなるのをおぼえている。

 覚えているからなんにちもなんにちもいきをふきかける。

 しろくなればいつか外に出られる。

 でるためにはなんどもなんどもいきをふきかける……


 もう窓は白くならない。

 夜は怖い。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ