abduction
星が綺麗だったので、ちょっとした丘の上で眺めておりますと、
「あ、流れヴぉろ!」
空に流れ星が流れました。思わず噛むくらい驚きました。流れ星なんてアニメとか映画の中だけの出来事だと思ってたんですね。流れ星って。滅多に見れない。寧ろ見れない。一生涯見れない。と思ってたんです。
だから、流れ星が実際に流れたこと、そのこと自体に驚きがありました。
「地球大丈夫かな」
って思いました。流れ星って言われてもそれまで見たことないから、だからほら、アルマゲドンとかそういう事しか思いかばないんです。あれが地球に落ちてきて地球がもうダメになる。みたいな。そういう想像しか出来ないというか。
「逆に不安になるな」
流れ星とか見たことない人生を送っていました。送っています。最前まで送っていました。そんな人間が流れ星を見るとか、運を使い切ってしまったんじゃないかという不安。そういうのに苛まれていました。
「うああ」
するとまた空に流れ星が流れたんです。
「ぎゃあ」
それも一個じゃない。二個、三個、四個、五個、ああ、もういちいち数えてられねえ。沢山。
「え、え?何座流星群?」
わからない。でもきっとこれはそういう奴でしょう?そうじゃなかったらおかしいよ。ヤフーニュースとかで言ってたんだろまた。今夜は何座流星群とか。そういうの。スーパームーンとか。そう言うの。
「あれ?」
で、そんな流れ星の中に一つ、おかしなのがありました。流れてる途中で止まったんです。ビタ止まりです。慣性の法則が凄い勢いで働きそうなのが一つ。
「あれは?」
流れてる途中で止まってさ。で、まるで北極星とかなんか止まってる星みたいなさ、ポールスター気取ってるのか?って言うのがありました。今更無理だろ。動いてたろさっきまで。何急にポールスター気取ってんだ。何急に止まってんの?周りにテンション高いねって言われて黙る奴か。
「あれなに?」
そんな私の内心が漏れ出たのか、その流れ星みたいに流れた後、急にポールスター気取った星がこちらに向かってきました。
「えええ?」
すごい速度でその物体がこちらに、私のいる丘に向かってきました。
「ああああ」
で、近くまで来られて初めてわかりました。UFOでした。それは。
「おおおお。おおおおおお」
UFOでした。
流れ星の中に混ざって擬態していたのか、UFOでした。
「UFOじゃん、マイケル富岡じゃん」
まあ、私は出身地的に焼きそばバゴォーンだけど。焼そばBAGOOOONだけど。
UFOを前にそんな事しか考えれない私を尻目にみるみる近づいてきたUFOはそのまま私のいる丘の上に着陸すると、ぷしゅーって言ってUFOの表面から音がしてガルウィングみたいにUFOの一部が開いて中から宇宙人が出てきました。
「〇✖△□●×▽■」
で、なんか言ってます。もちろんわかりません。全くわかりません。
「え?え?」
で、何言ってるかわからないんですが、とにかく袖のあたりを掴まれて引っ張られるんです。いやいや、無理無理無理。無理無理無理無理。
「●×△□〇✖▼◇」
わからないわからないわからない。
しばらくそういう問答というか、
「〇✖▼◇〇✖▼」
「わからないわからない」
そういう交流をした後、宇宙人は私の袖口を放しました。私は袖口の色とか変わってないかどうか確認しました。幸いにして色の変色とかはありませんでした。若干伸びたくらいです。
その後諦めたのか宇宙人はUFOに帰っていき、UFOはガルウィングを閉めるとすぐにまたふわりと浮きました。そしてそのまま私の頭上にやってきたんです。そしてUFOから光が、私に光が当てられたんです。スポットライトのような光。白の強い光です。汚れが目立つタイプの。
で、それを当てられて、一秒二秒したら私自身の体がふわっと浮き上がりました。宇宙人は諦めたわけじゃなかったんです。アブダクションです。abduction。Googlechromeの検索フォームにabductionって入れると、隣に拉致って出てきます。abduction。拉致です。
「こなくそ」
ただそこはギャグマンガ日和を読んでる私です。だから切り株とかあったらすぐに掴むんですが、掴んで耐えるんですが、しかし切り株とかありません。ですのでなすすべなくabductionされてしまいました。ただ、UFOに入る瞬間吸い込み口、abduction口のヘリの所に脛をぶつけました。ぶつけて、
「ぎゃああああ」
ってなりました。ギャグマンガ日和。
そうしてUFOにabductionされた私は船内で、先ほどの他人の服の袖を凄い引っ張ってきた宇宙人と再会し、
「〇✖▼◇●×△■」
「わからないわからない」
って言う会話をした後、
「あーもうcattlemutilationされるのかなあ」
ってなりました。だってUFOにabductionされたらcattle mutilationっていうのが相場です。シャマランのサインの宇宙人だったら食用です。ジョニデのノイズの宇宙人だったら・・・あれはなんだっけな。乗っ取り?
とにかくろくでもない目に合うわけです。第9地区だったら違うけども、でもあれはあれで大変だし。
「うみーはーひろいーなーおおきいなー」
そんな感じで、この世を憂いでいるとまた宇宙人がやってきました。
「●×△■〇✖▼◇」
「わからないわからない」
しかしまた袖を引っ張ってくるので、引っ張られるままについて行くと、UFOの壁の一部がぴゅいーんって言う音と共に透明になり、
「うああああ」
外が見えました。もうあっという間に宇宙空間でした。エレカシの歌みたいな感じです。東京からまんまで宇宙みたいな。
そして目の前には大きな惑星がありました。
「あれなに?」
「〇✖▼◇〇✖▼◇」
「わからないなあ」
すると宇宙人が私の手を掴んで、手のひらに指で文字を書いたんです。
「・・・」
「え?」
それは木という字でした。
「木星?」
「!?○○〇!」
「あれ木星!」
「○○○○〇!!」
UFOはあっという間に木星まで来てるみたいでした。
「へー、あれが、まこちゃんかあ・・・」
「wwwwwww」
私がぽろっと言った一言が宇宙人には大うけでした。
その後、土星、天王星、海王星、冥王星まで見せられました。ただその辺りで宇宙人がウィキを見せてきて、これこれ、これがこれ、みたいにしてくれたおかげで、
「ああ、これが、へえー」
「これが、ほたるちゃん。うんうん」
そういう感じで、若干コミュニケーションもとれるようになりました。
そうして最後、流れ星が凄いスポットの見学をして地球に、元居た丘に帰りました。abductionはされたものの、cattle mutilationはされませんでした。
「観光したかったの?ガイドしたかったの?」
「〇✖△□、●×▼◆」
「うん」
わからないけども。でも、
「ありがとう楽しかったです」
そうして最後私は着ていたピゾフの宇宙猫の柄のパーカーを宇宙人にあげたのです。クールでした。宇宙人が着てる宇宙猫のパーカー。
「Becool!」
「●×▼◆!」
帰り道、パーカーを上げたのはやりすぎだったかなと思い直しました。あれ4000円くらいしたからなあ。