広すぎない?
時間経過は◇、視点変更時は◆で区切ることにします
「入って早々悪いけど、ちょっと待っててくれ」
色々あって忘れてたが、そういえばさっきこの少女…風谷を襲ってた男を、殺気で気絶させたっきりでそのままだ。前みたいに命を奪ったわけではないから気絶してるだけだし、ましてやここは自分の敷地内だから疑われても困る。
気絶させる前に指名手配犯なのを確認してるから、とりあえず警察署前に投げておけば良いだろう。
ついでに信頼できる人物を警察内部から探すか?
指名手配犯なのを知っていたのは、心を覗いたときに情報があったからだ。
「分かったけど、何してればいいの?」
「すぐ戻ってくるし、家の構造確認とかか。かなり広いし、今の内に覚えておいた方が良いかもしれん」
「は~い」
随分気楽だな…さっきまで親に捨てられて男に二度も襲われてて、挙げ句の果てに未知の存在である自分と出会うという、普通の人なら発狂しそうな怒涛の展開に見舞われてるのに、何も無かったような振る舞いをされると対応に困る。
戻ってきたら、ある程度自己紹介を済ませておかないとな…「瞬間移動」。
「消えた!?…とんでもない人と出会っちゃったな。相談したら…優ちゃんの事も助けてくれるのかな」
その言葉は、アリエルには届かなかった。
◆
~友香サイド~
アリエルさんがいなくなった後、一旦外に出て改めて家の大きさを確認する。
「…アリエルさん、金持ちなのかな」
全然そんな雰囲気してなかったけど…いや、もしかしたら一般人に見せかけたどこかの偉い人だったり…?
「でも、悪魔なら荒稼ぎも簡単だったりするのかな?」
出会ったばかりだから、まだアリエルさんが持ってる力について詳しくない。さっき急に消えたのだって能力の1つかもしれないし、襲ってきた男の人に殺気?をぶつけただけで倒していた。
私は悪魔の力の片鱗を見ただけで、どこまで沢山の能力を持ち合わせてるのか正直分からない。
「…カッコよかったなぁ」
何回も変態って言われちゃってるけど、正直否定できない。
私は最初に助けられた時に惚れてしまった。
もしかしたら禁断の恋なのかもしれない。でも、どこかアリエルさんからは寂しそうな雰囲気を感じた。
それを私が少しでも支えられるのなら、この恩を返すために精一杯尽くそうと思ってる。
…でも、何故か目を見てくれないしやけに避けられてる気がするんだよね。なんでだろう。
気を取り直して、まず一階から何の部屋があるか見よう。
なんで一人暮らしなんだろうって最初疑問を抱いた。だってここ…もう豪邸じゃんっ!
「広すぎるよここ!?」
どう見ても一人で住む家じゃない。トイレが男女別に分けられてるし、リビングは多少家具を置いてても邪魔にならない広さをしてるし、部屋も一階だけで結構な数の部屋がある。
ちょっといくつあるか調べてみよう。
えっと、玄関前に大きな部屋が1つ、階段の裏側に1部屋…多分物置?があって、玄関から真っ直ぐ続く廊下の右側に合計4部屋とその反対側にリビング、そのリビングの奥にも3部屋あって…
階段の裏側にも廊下が続いてて、そこに居間っぽい所と普通の部屋が2つ…何これ?
しかもこれで3階建てなんだよね。…30部屋もあるの?いやリビングだけで大きく範囲を取ってるから、実際はもうちょっと多い?
…掃除が大変そう。変な事思っちゃった。
でもこれだけ広くても、アリエルさんと同じ屋根の下ってことは変わらないんだよね…
ドキドキしてきた。
いつか恋人みたいな関係になれるのかな?
っていけないいけない、これじゃまたアリエルさんに怒られちゃう。
でも、たまになら――
「何してんだ」
「ぴゃあっ!?…お帰り」
変な声が出てしまった。
相変わらず直視されないけど、どうしてか嫌そうな表情をしてる気がする。嫌われてるのかな…
「そういえば、ちゃんとした自己紹介とか済ませておきたいからいいか?」
「え?うん」
この際どんな能力が使えるのか聞きたいな。
「改めて、自分の名前はアリエル・クロバード。本名は訳あって明かせないというか、この名前が気に入ったからこのままやっていくことにした」
「前の名前聞いても良い?」
「…橋本 西郷だ」
「多分元人間だよね」
「…気付いてたか。そうだ」
もしかしたら異世界から来た悪魔…なのかもしれないけど、それにしては日本人として見ても違和感が無いんだよね。だから多分元人間なんだろうなって思ってたけど、合ってるみたい。
なんで悪魔になったかは…聞いちゃダメだよね、多分。
「それで、どんな能力が使えるの?」
「…やっぱりその質問来るよな。まあどうせ一緒に暮らすんだし、絶対口外しないのは分かったから別に良いが」
そういえばアリエルさんは心が読めるんだった。色々情報が多くて忘れかけ…あれ、待って?
私さっきアリエルさんに声をかけられる前、何を考えてたんだっけ…?
「まず、「地図展開」が1つ。これは普通の地図としても使える他、人や味方、犯罪者とかについて追加情報を得られるものだ。例えば風谷を仲間として設定してる場合、どこにいても探し出せるようになる。また、その仲間の死が近づいてる、また死にかけてる状態になってもすぐ分かる。
風谷が襲われてた時、気付いてやってこれたのはこれが理由だ」
「じゃあ、私が誘拐されてもアリエルさんが王子様として助けに」
「誘拐される前に破壊されたいのか」
「ごめんなさいっ!?」
冗談に聞こえないから怖いよ!?
「次に「思考透視」、相手の心を読む魔法だ。常に発動させておくこともできるが基本的に見たい相手にしか使わないようにしてる。友香にも2回使ってるな」
「確かに、何も言ってないのにすぐバレちゃったもんね。あれは本当にビックリし…待って、2回?」
まさかだけど…
「あ、言い忘れてた。さっき戻ってきた時風谷がボーっとしてたから、その時も見させてもらった」
やっぱりぃーっ!!?
驚きを表現する文章の試行錯誤ちう…