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悲劇の悪魔は自由奔放に活動する  作者: ねお
第一章 日常の崩壊
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もう1つの名前

家に帰る最中、ずっと気になってたことについて考える。

昨日の夜中は特に何も無かったのだが、電話してる最中僅かに悪寒のようなものを感じた。何か、嫌な予感がした時の感覚に似ていた。


おそらく、悪魔になってから得た能力の1つじゃないかと思ってる。

その時は気のせいかと思ってスルーしてたが、今も似た感覚がある。


周囲を見渡すと、とある方角に向いてる時にその感覚が強くなり、何かを示してるレーダー的なものだと思ってるんだが…

「地図展開」で何か分からないか確認してみる。


「…あ~、そういうこと…」


悪寒が強まる方角に赤い点と灰色の点が表示されていた。

灰色は事件に巻き込まれた時の色、赤は敵の色。…つまりそういうことだ。


助けに行くべきなんだろうが…いや迷ってたら危ないかもしれない。

「瞬時移動」を使い、二人の視界にギリギリ入らない位置に移動する。



移動した先は、現在空き家となっている所だった。反応してる場所は…庭の端か。


「やめてっ!!」

「大人しくしてろっ…!!」


………声を聞いた瞬間、助けたい気持ちと逃げたい気持ちが衝突した。


これ…そういうことだよな?

なんでよりにもよって…


恐怖心を抑え、凝視をしないよう気を付けながら二人の前に出た。


「誰だっ!?」


視界に入ったのは180cmはありそうな大男と、その下で押さえつけられてる小学生低学年くらいと思われる少女。

男は少女の両手を片手で抑え、もう片方の手で…うん、ごめん無理。


「思考透視」を使いつつ、少女の方を視界に入れないようにしながら会話を試む…つもりが、男がナイフを取り出してきたためそれはできなくなった。

此方に切りかかってきたため、とりあえず避ける。


…にしても不思議だな。相手はナイフを持ってるのに、怖いという感情が全く無い。


「ちっ」

「穏やかじゃないな」

「黙れぇ!!」

「…黙るのはそっちだ」


ちょっと検証も兼ねて本気で殺気をぶつけてみる。


「ぁ」


男は何か口にしようとしたが、一瞬で顔が真っ青になりその場で倒れてしまう。

…あれ、これもしかして…


「…殺気で人をやれてしまうのかよ」


男は既に息絶えていた。

ショック死に当たる死因だから、誰かが疑われる可能性は無いと思うが…まあいいか。

いや良くないけど。


初めて人を殺してしまったのにも関わらず、怖いくらい冷静だった。

これが悪魔の力の代償?…違うと思いたいな。

それに、心を覗いていたら過去にも犯罪を犯してるのが分かっていた。普通は覗くだけじゃ過去の犯罪は見れないんだが、途中「見つかったからにはこいつ『も』殺すしかねぇか」と聞こえてきたので、過去に誰かを殺したことがあるってことだ。


その上、少女取っ捕まえて性犯罪にまで手を出そうとして…因果応報な気がしてしまう。

けど犯罪は犯罪なんだよな…相手は現行犯な上こっちに刃物使ってきたし、正当防衛にならないか?


さて。正直、この後の方がつらい。

少女はさっきぶつけた殺気に巻き込まれたのか、若干顔を青くしていた。


いや…そうでなくても目の前で犯罪者相手とはいえ、殺人を犯したんだ。そりゃ怯えてしまっててもおかしくはない。

どうしようか迷っていると、


「えっと…え?助けてくれたん…ですよね?」


向こうから声を掛けてくる。…あれ、これ怯えてなくないか?困惑してる感じの声だ。

声だけなら平気なんだよな、姿を直接見れないってだけで。いや声だけでもゾワッとするが。


というかそれどころじゃない。少女はさっきまで変態に襲われてたわけで…


「…まずは服を着ろ」

「え?…あっ」


言われて気づいたらしく、急いで家の裏に隠れた。

…少し体調悪いな。そもそも、あんな小さな少女とまともに話すのは確か17年ぶりだ。助けるためとはいえ、かなり無理をした気がする。


気を紛らわすために別の事を考えよう。

何故真也は後悔していたのか。自分が仕事をやめようとした時、明らかに原因が分かっているかのような反応だった。

つまり自分もその事は知ってるはず。


思い出せ…そもそも仕事をやめたのは悪魔になったからだ。

悪魔に…いや待てよ?


もしかして、真也は自分が「悪魔」になったのを知ってるんじゃ?

そういえば仕事場にいた時、謎の透明な瓶を渡されていた。ただの水だと思ってたが、もしあれが悪魔になったキッカケだとしたら確かに辻褄が合う。


そう思って「地図展開」で真也の家ら辺を探すが、緑の点は無かった。

…あ~、別れるって言っちゃったから味方と認識されなくなったか?それとも引っ越した?

悪魔になった原因が真也なのであれば、むしろ自分が謝らなきゃいけないんだが…


考えてる間に少女が戻ってくる。頭の整理が済んだのか、先程よりは落ち着いてるように見える。

流石に顔を合わせるくらいはするべきか…?

…まあ、ずっと目を逸らしてたら変に思われそうだな。覚悟を決めて…いや、さっき直視できなかったのは服が乱れてる状態だったからなんだけど。


視線を向けると、見た目が小学生低学年くらいのポニテの女の子が、疑問符を浮かべた状態で此方を見ている。

着てるのは学校の制服と思わしきもので、鞄が近くに置いてあるのを見ると帰宅途中だったんだろう。


「あの…助けてくださったんですよね?」

「…どうだかな。そこに気持ち悪い男がいたから始末しに来ただけだ」


ダメだ、普通に話せない。


「でも、さっきの男の人に対して凄い怒ってましたよね…」

「…嫌なもの見せられたら、殺気くらいは出る」

「どんな理由にしても、助けてくれたのは間違いないですし…本当にありがとうございます。にしても…初めて見ました」

「何がだ?」

「その翼…悪魔さん、ですよね?」


………あれ?


確認をすると、いつの間にか翼が出ていた。ここに来る前は翼を出していなかったはずで、あの男も怯えてる感じは無かった。殺気を放出した時に出たと見るべきだろう。

おそらく翼が出た瞬間も見られてるし、そもそも殺気だけで殺す場面を目撃されている。

言い逃れはできない…か。


というか、悪魔って気付いてるならなんでそんな冷静なんだよ。こっちは事故とはいえ目の前で人を殺してるんだぞ。


「悪魔というのに違いはない。ただ今回の一件と、悪魔である自分の事は、誰にも口外しないでもらいたい」

「…なんとなく事情は分かりました。頑張ってくださいね、悪魔さん」

「というか少しは怯えろよ」

「そんなことを言われても…助けていただいたのもありますが、珍しいと思ったのでちょっと興味が」

「…変態を助けてしまったのか」

「その扱いは酷くないですか!?」


いや、悪魔を目の前にして好奇心が勝るっておかしいだろ。

怯えられるよりはましだが、興味津々なのも逆に困る。


「ところで悪魔さん、名前を聞いても良いですか?」

「必要な事では無いだろ」

「必要だから言ってるんです!」


妙に馴れ馴れしいし、名前を聞いてくるし、全く怯えないし、色々変だぞこの子。

まあ名乗るくらいなら…いや、待てよ?本名がバレてたら危険じゃないか?下手すればそこから情報が漏れる可能性もある。

自分はともかく、家族にまで迷惑がかかったら…


仮の名前を考えた方が良さそうだな。


「本名は言えないが、悪魔の姿の内は別の名前があった方が良いか」

「悪魔の姿の内は…?」

「いや、こっちの話だ」


思わず口に出してしまった、危ない…

悪魔って思い込んでるみたいだし、このままでいこう。


にしても、名前か。そうだな…

悪魔という存在ではあるが、今回みたいに誰かを助けることもある。むしろこの力を生かすため、これからも誰かを助ける活動をする可能性は高い。


人助け…救済…黒い翼…

よし、決めた。


「アリエル。アリエル・クロバード。そう呼んでくれ」


「~エル」は神々の名前を参考にした。ミカエルやサリエル等、エルが付いてる神が結構多いイメージがあったため採用した。クロバードは黒い翼から黒鳥をイメージした。鳥ではないが、黒い翼が今の自分の特徴だしな。

…どこぞの悪魔カラスではないからな?


悪魔のような自由な力を求めてはいるが、非道なことをするつもりはない。むしろその力を利用して、少しでもこの世の理不尽を無くしていきたい。

救済=神々の成すこと。至って単純な考えだ。…いや実際はどうなのか知らないが。


悪魔が神を名乗ってるというのは置いておこう。


「アリエルさん…良い名前ですね。私の名前は」

「もう用は無い。じゃあな」

「あ、ちょっと!?」


制止も聞かずにそそくさと逃げることにした。

少女と二人での会話って、凄いしんどいぞ?精神がごりごり削られていく。それに名前を聞いたらまた出会いそうな気がするので、名前を聞いてしまう前に逃げることにした。


アリエル・クロバードか…折角付けた名前だ、大事に使うことにしよう。

主人公の考えた名前の由来、もう少し凝った説明が必要そうだと感じたため付け足しました。

アリエルならあり得…

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