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悲劇の悪魔は自由奔放に活動する  作者: ねお
第一章 日常の崩壊
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退職

『――今現在も調査を続けているとのことですが、音の出所も原因も不明となっているとのことです。これにより――』


翌日。

気になって久しぶりにテレビを付けたのだが、昨日やらかした失敗がニュースになっていた。

原因不明の爆音に、凄い勢いで何かが衝突して吹き飛んだかのような大木。これらの状況と一致する前例が無いため、混乱状態になってるらしい。

更にその周辺で巨大な金インゴットが見つかったというのも、より大きな騒ぎを引き起こしていた。


…なんというか、すまない。


にしても昨日は本当に危なかった。もし見つかりでもしたら厄介なことになっていただろう。

流石に超人的な力を持った存在が殴り飛ばした、とまでは突き止められるとは思えないが、それでも夜中に一人森の中で立ち尽くしてたら怪しい。


「まだ正体がバレてるわけじゃないし、大丈夫ではあるんだが…」


制御不能な状態が続けば、いずれどこかでボロが出るだろう。制御するための修行をしないとまずい。


かといって、家はどうしようか…いや待てよ?

前に自分が今住んでる家を買った時、両親がそれを知らずに大きな家を買ったって話をしてた。勿論こっちで家を買ったことは話したのだが、『それなら良いが…念のため残しておくぞ』と言っていたので、もしかしたらまだ残してあるかもしれない。

しかもその住居の周囲には、家も畑も無い田舎と言ってた。…修行に打ってつけなのでは?


一応電話をする。起きてるかな…?


『もしもし、どうした西郷?』

「父さん、久しぶり。田舎にある大きな家ってまだ残ってる?」

『残してあるぞ。引っ越すのか?』

「ちょっと訳あって、人が周りにいない環境が欲しくなった」

『……つらいなら相談しろよ?』

「違うそうじゃないんだ」


息子を何だと思ってるんだよ。

確かに高校・大学は一人の方が気楽だったけど。


さて…これは説明するべきか?

父さん達は自分が悪魔になってることを勿論知らない。そもそも悪魔の存在そのものを知らないはずだ。

一応誰かに話しておく必要はあるだろうが…今話すべきかどうか。


「ん…悪い、今は話せそうにない。今日仕事やめるつもりだから、そのあとそっち行っても良いか?」

『そうか…大事な話か?』

「そりゃ機密事項レベルで」

『機密事項!?』


よし、両親には話そう。

真也には…ちょっと話しづらいな、まあ此方も追々考えよう。


『…一応確認するが、犯罪とかに』

「しないししたくない」

『これだけ聞かせてくれ。その機密事項っていう話はどの部類に入るんだ?』

「…普通は、絶対信じてもらえないようなことだな。オカルトとか、そういった類のものだ」

『…分かった。一応出迎えの準備はしとく』

「ありがとう。んじゃそろそろ仕事だから切る、また後で」


さて…退職届出すのが憂鬱だな…





「…本当にやめるのか?君は社内でも優秀だったから、可能なら残ってもらえると助かるのだが…」

「申し訳ありません、仕事を続けられない理由ができてしまいまして…」

「一応聞くが、理由は…」

「大事な目的がある、ということにしておいていただけると助かります」


仕事場にて、上司に退職届を出す。

上司には偉く気に入られており、よく飲み会に誘われることもあったため、こうして離れるのはちょっと寂しい。


「…そうか。寂しくなるが、君ならどこでもやっていけるだろう。頑張ってくると良い」

「それは買い被り過ぎですよ。自分はそこまでできた人間ではありません」


半分事実だ。…自分は、17年前のあの日からずっと後悔している。


「橋本にも報告をしに行ったらどうだ?仲良いんだろう?」

「勿論そのつもりです」

「ならこっちで処理しておくから、行ってこい」

「ありがとうございます」


こういう気さくでしっかりした上司だからこそ、優秀な部下が多いんだと自分は思うけどね。

真也の所に向かう。


「おい西郷、聞いたぞ。お前仕事やめるんだってな」

「悪いな、残れない理由ができた」

「以前仕事をやめるつもりはないと言ってたはずなんだけどなぁ…」


とは言ってる真也の顔は、疑問に感じてるというよりはどこか納得したかのような表情をしていた。

なんでだ?


「…それと、真也とはもう会わない方が良いと思った。から、お別れの挨拶だな」

「……は?な、なんで」

「ちょっと事情があってな…」


真也の顔から完全に笑顔が消える。

そういえば、相手の心を読む魔法って使えないか?「思考透視」みたいな。

一応無詠唱で唱えてみる。


(また俺は、取り返しのつかないことをやっちまったのか…?)


あ、いけた。

…なんで真也は後悔してるかのような反応をしてる?いや、そもそもやらかしたのが2回目だとも取れるような反応だ。

確かに、昔悪戯で書類が変な重なり方をしてた事があったが気にしてはいない。ただそれくらいしか思い浮かばないし、喧嘩もしたことが無いし…一体なんだ?

気になるが、聞けば不審に思われると思うので聞けない。普通は心を読めないしな。


「…おい、何の冗談だよ。俺のせいでやめることになったのか?」

「真也のせいじゃ」

「だったらどうしてお別れなんて!俺のせいじゃないっていうなら、なんで今なんだよ…」


やっぱり、何かを隠している。

…さっき透視した時の気持ちといい、真也は何か俺に隠してるのか?


「…すまん、何でもない。ちょっと一人にさせてくれ…」

「…分かった。すまない、真也」


そう言ってその場を後にする。


正直、お別れはやりすぎかもしれない。

自分としても別れを選ぶのは心苦しい。だが、この悪魔の力はあまりにも未知過ぎる。何かしらやらかして迷惑を掛けたくはない。

制御ができて、かつ安全を確認できたら打ち明けるべきなのだろうけど…この時の自分はそのことを考えていなかった。


一通り済ませた自分は、そのまま静かに仕事場から離れた。

修正前より険悪な雰囲気になってるのが気になったため、少し台詞を変えてます


「殴った木に付着したDNAや足跡で特定されるんじゃ?」と修正中に思いましたが、そこはたまたまバレなかったってことでお願いします

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