「飯を作るしか能のないザコは必要ねぇ!」と追放された私、奈落の底で素敵な彼女できました~私のスキルの効果を知ったとたん泣きついてきたけど、もう遅い。得意の料理で彼女と“最強”目指すので~
「シズ。もうお前は俺たちの仲間じゃない。パーティーから抜けろ!」
私の所属しているAランク冒険者パーティーのリーダーであるフレイから、突然そう告げられた。
私は意味が分からずに、何度も頭の中で反芻する。
「もう一度言わないとわからねぇか? 要するにお前を追放するってことだよ!」
最初に出てきた感想は「どうして?」だった。
私たちは同じ村出身の幼馴染で、一緒にSランク冒険者を目指すって約束したのに……。
黙り込む私の態度が気に食わないのか、フレイは苛立ちを隠しもせずに私を睨みつける。
他の仲間に助けを求めるように視線を向けたけど、みんなフレイと同じ目をしていた。
「……なんで……?」
「なんで? って、お前が“外れスキル”持ちで役に立たねぇからだよ! 【水生成】なんて飲み水を確保するだけのスキルじゃねぇか! あと【通販】っつたか? お前はもう一つわけわからねぇスキルを持ってるみたいだが、どうせそれも外れスキルだろ? まともに使ってるところなんて一回も見たことねぇぞ」
“スキル”。それはこの世界の住民が十歳になったときに女神から与えられるもの。
私が与えられたスキルである【水生成】は、魔力を消費して一度に二リットルほどの水を作り出すというものだ。
生活面ではとっても役立つスキルだけど、戦いにおいては役に立たない。
【魔法剣】を持つ魔法剣士のフレイ。
【聖炎騎士】を持つタンクのグレン。
【上級回復魔法】を持つ神官のニトロ。
幼馴染の彼らが持つスキルは、戦いにおいてどれも一級品の実力を発揮する。
私なんかのよりもよっぽど強い。
「俺たちはもっともっと強くなってSランク冒険者になる。そこにお前は必要ない! 見た目しか取り柄のないお前は、俺たちのパーティーには相応しくないんだよ!」
「俺は足手まといを守る気はない」
「大して役に立たないのに、いちいち回復魔法を使わないといけないのは面倒なんですよ。魔力の無駄です」
他の仲間たちもフレイに賛同する。
悲しさから、私は何も言い返せなかった。
「いい加減現実を受け止めたらどうかしら? 誰もアンタを必要としてないのが分からないの?」
愉快そうに笑いながら話しかけてきたのは、スカーレット。
彼女は、最近私たちのパーティーに加入したばかりの天才魔術師だ。
さっきまでの彼女とは印象がまったく違う。
本性を隠してたってことか……。
「スカーレットは強力な上級魔法スキルを三つも持っているんだ。水を生み出すだけのお前とは比べ物にならねぇよ」
「水の確保なんて、水の攻撃魔法が使えれば事足りるわ。水を生成するだけで精一杯とか笑わせないでよ!」
「そういうことだ。お前の存在価値は一つもねぇんだよ」
私は口を開こうとしたけど、何一つ言葉は出てこなかった。
私は強くないし、外れスキルしかないし、【通販】は便利だけど戦闘では一切役に立たないから。
「見た目だけはいいアンタがいたら、私にとっては迷惑なのよ。だから消えてもらうわ。フローズンショット!」
スカーレットの持つ杖の先から発生した氷柱が、私めがけて飛んできた。
反応することなんてできるわけがなく、私の腹部に氷柱がめり込む。
「ぐふ……」
私は吹き飛ばされてしまう。
「後ろの穴に落ちたらどうなるかしらね~」
スカーレットがニタニタ笑いながらそう言った。
ここは地下百階層からなる巨大迷宮。いわゆるダンジョンと呼ばれている場所の地下三十一階だ。
この階には、『奈落』と呼ばれている巨大な縦穴がある。
それが私のすぐ後ろで口を開いていた。
「三十一階層で追放したいと言い出したのはこのためか。……まあいい。飯を作るしか能のない雑用係はここで退場だ。せいぜい死なないように頑張ることだな」
「無様すぎていい気味だわ。それじゃあ、さようなら」
崖際まで追い詰められていた私は、スカーレットの炎魔法で生じた爆風を受けて宙に舞った。
真下には、絶望を表すかのように闇が広がっている。
奈落に落ちていく中、フレイの肩に腕を回して私をあざ笑うスカーレットが見えた。
一瞬フレイと目があったが、その特徴的な赤い瞳は濁っていた。
フレイは……いつから変わってしまったのだろうか……。
「踏み入った者は誰一人として戻ってこなかった」と言われている奈落。
私はその中に吸い込まれるように落ちていった。
彼らの笑い声を聞きながら……。
あらすじにもあるように、来週から投稿予定の新作の第一話がこれです。キーワードにあるように百合やグルメや無双とかするので、連載版が楽しみって人はブクマや評価をお願いします。
感想で作者を持ち上げてくれると、喜んでモチベが天元突破します。
「第一話 追放」ということで今話はシリアスでしたが、基本明るくコメディチックな感じの話です。連載版では爽快なバトルとか個性的な敵とかいっぱい出てきますよ。