嫌われた......?
「なーに不貞腐れてんだっ!」
(たっく……人の気も知らないで相変わらずだなコイツは)
「いや、猫神さんと帰り道まで一緒だったんだけど」
「ほほぅ、ついにやるようになったか」
「いや、観音寺さん知ってるでしょ?」
「あー、犬の人。で、観音寺さんがどうかしたのか?」
「実は帰り道歩いてたら───」
ワンワン!!
「ひっ」
「ん?猫神さんどうした?」
「い、犬はいい思い出なくて……」
「え……ま、まぁ好き嫌いあるもんね」
「そうじゃなくて」
「とりあえずよいしょ。ショコおっきくなったなぁ」
「え?月下君のペット?」
「いや、近所のお姉さんのところの犬」
「へ、へぇ。とりあえず逃げてきたのかな?帰してあげないと」
「帰り道に家あるからしばらくこのままだよ」
「が、我慢するわ」
「そうか。ととと、こらショコ怖がってる人に無理やり近付いちゃいけないでしょ」
「その、月下君は犬の扱い上手だね」
「まぁね、昔はさ犬が怖かったんだ。だけど親に連れられて行ったライブ。そうあの伝説のアイドルグループ『【S】ureivu 【L】ike 【D】og 』のメンバーが楽しそうに犬に触れてるのを見て、ってこんな話あれだよね」
「帰る……」
「え?一緒の方って」
「知らない。荷物貰うね」
「あ、……行っちゃった」
くぅーん?
「お前は気楽でいいな……」
「って経緯がな……」
「いや、観音寺さんあんま関係ないじゃん」
「そうでも無い。俺が女の子と歩いてるのを見かけたからショコに行っといでって言ったらしい」
「なぜそんなことを」
「犬を優先して、マイバッグを落として嫌われるところを見たかったって」
「はっは、あのひとらしい」
「まぁそもそも女子ならきついかもけど男子なら片手で持てる重さの荷物だし、ショコも小型犬だからな」
「ところでSLDってあれか?」
「あれだよもう解散した僕らと同世代の子達のアイドルグループ」
「犬みたいな奴隷だっけ?」
「そそ、それの英表記の頭文字らしい」
「もしかして猫神さんが怒った理由ってアイドル追いかけ回す変態と思われたからでは?」
「な、なわけ」
「いやーありゆる。乙女心はわからんもんなのさ」
「なんか無駄に説得力あるわ」
「んだとコラっ!!」
「はははは!」
「あのーここ私の席なのですが」
陽介が座っていた席。
そう俺の席の前、の住人が登校してきた。
確か名前は月岩三春。
「あ、すません」
「今野くんだっけ?私朝用事があるから、来た時だけどいてくれれば後座ってていいよ。なんか言い方があれでごめんね?」
「いや、気にしてねぇよ!ってか気ぃ使ってくれてありがとな」
「じゃ、私もう行くからいいよ」
「変わった子だな」
「だね、確か昨日は遅刻してきたよね」
「朝から遅刻、もしくは用事となるとイジメ?!」
「いやーさすがにこんな学校始まってすぐであるわけないしょ」
「だなー」
「と、お前の愛しの猫神さん来たぞ」
「別に愛しくないし……少し懐かしい感じがするだけだから」
「男のツンデレは需要ないぞ!!」
「別にデレてねぇよ!」
「ほらつんつんしてるわ」
「あ、」
(目が合った)
が無視される。
完全に嫌われているようだ。
「あちゃー女子と目が合ってすぐ無視される場合はやばいぞ」
「まぁいいよ、他の子探すか」
「お前相変わらずだな、中学の時も結局密かに想いを寄せて諦めて乗り換えてをしてたもんな」
「堂々と近付いて想いを告げて楽しんで捨てるお前とは違いますよ」
「捨てるってなんだよ!マウント用のカードに使われる俺の気にもなれよ」
「無駄にスペックが高いからだよ」
「健だって俺みたいに振る舞えば多分モテるぞ」
「やだね、マウントの材料にされるんだろ?」
「べ、別にー。今狙い目の子はそんな子じゃないし」
「天川さんか」
「そそ、ちょっと話してみたら大人しめでいい子だった」
「おお、マネージャー系の女はイカンとようやくわかったか」
「でもなぁ~マネージャー系と違って攻めにくいってのが難点だな」
「あらかた相手は『私なんかの事好きになってくれるはずがない』って思ってるからじゃねぇか?」
「え?そうか?」
「いや、だってお前思わないか?有名女優と会話しててちょくちょく匂わせぶりな話をしてきたら」
「からかってるって思う」
「そんな感じだ。罰ゲームで~とか利用されるだけ~とか相手が思うから攻めにくい」
「つまり信用させなきゃいけないってことか」
「そうだよ、ってかなんで経験豊富なお前が未経験の俺に助言を受けてるんだ!!」
「確かに」
「『確かに(キリッ)』じゃねぇよ」
「でもほら、第三者程強いものはないからさ」
「なんだ、物事第三者目線でしか捉えれない奴とでも言いたいのか」
「9割正解」
「まぁ確かに俺も過去に数回は匂わせぶりな話を」
「お?どんなのだ」
「『ねぇ、好きな人とか居るの?クラス内で』とか『へぇー、2次元しか興味無いの?』とか。前者は何故かクラス内でと限定している辺りから僕本心は君だよといえばカップル成立もしくはネタにされる。他の子を言うと相手がからかって終わる、もしくはなんでアイツなの!という」
「うん、なんでそうなるんだよ」
「で、後者はリアルの女は可愛くないと言うと殺される。どうせモテないからと言うと新手の自虐ネタ?かコンマパーセントのなら私がパターンだが基本はバカにされて終わる」
「あーわかったわかった。とりあえずお前はいっぺん赤ん坊からやり直してこい!」
「赤ん坊は行き過ぎだ」
「なら前世か」
「前世は多分モテモテだったから戻ったら楽しそうだな」
「いや、どんなんだよ!」
「いやーなんかありそうだなって」
「その個性強さだけは褒め称えれるな……」