時代遅れなる戦艦
時代遅れなる戦艦。
主砲は二八センチ、六五口径の長砲身を連装にして砲塔として四基搭載。
装甲防御は三六センチに耐えられるようにして、船体は高速航行を可能にするために全長を長くし全幅は細くしていた。
直進性は抜群の性能だったが、旋回性に難が出ていた。
それでも最高速度は三八ノットを達成していた。
「艦長。また、追加装備ですか……」
「ああ、レーダーというものらしくて天気が悪くても敵が見えるらしいぞ」
「敵が見えても、主砲がこれでは……」
「何言ってる。射程は四万に届く距離を撃てる」
「砲弾は軽いので命中精度に難がありますよ」
「接近すればいい」
「敵艦が三八センチ超える砲弾を撃ち込んできます。この艦では一撃で沈んでしまいます」
装甲ペラペラというのは言い過ぎだろう。設計当初は固いものでこの速度は最大の武器だった。他国も脅威に思っていたほどに。
だが、他国は大艦巨砲へ走りあっという間にこの戦艦は時代遅れなる戦艦となった。
「戦争は起きているのですか?」
「起きてはいない。今はな」
「艦長は起きると思いますか?」
「起きるときは起きる」
そう話していると艦内スピーカーでラジオの放送が流れる。
国内では聖戦に勝利した偉大なる王の遺した詩が流れる。それに合わせてナレーターが内容を読み上げる。
内容は隣国との戦争に入ったとのこと。
起きちゃったか。しかたない。
「あーあ、全員に戦闘配置と出港用意の命令を出せ。戦争だ」
「えっ、この放送が?」
「そう。秘密の作戦開始命令。ほら、敵の主要港の砲撃に行くよ。すぐに艦を出せ!」
出港したのは同型艦六隻。
この艦を先頭に順次出港。
敵となった国の海軍主要港までの距離は全速力で一晩走って到着する距離。
朝方に出れば夜中に近づくことができ。
威力が少ない砲でも十分に接近し、六隻からの集中的砲撃にて軍港を火の海にした。
威勢を誇っていた大艦巨砲の戦艦たちは何もできずにこちらの砲撃を受けて大破着底していった。
この砲撃戦は開戦当初の電撃的勝利に貢献したとして歴史に刻まれ、時代遅れなる戦艦は再び注目されることになった。