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工事中ご迷惑をおかけしております

 全力で地形を変えております。

 異世界的リアルにチュドンチュドン音を発生させながら魔法をぶっぱなしています。

 ちょうど地球への復帰座標もあるので一挙両得。


 国境が平らで結構な距離だったのでぎゅっと縮めて人の出入できる箇所を限定しつつ、迷路にしてみました。上空や地中から無理矢理国境越えしようとすると血の雨が降ったりしみ出したりするように設定しました。その状態で国境を越えると体がビリビリするようにします。

 もちろんそのまま入国し続けると命にかかわるレベルのビリビリになるようにしておきます。

 一人どんちゃん騒ぎで魔法を使いまくっていると、隣国の王様が真っ青な顔でやってきました。息切れてるよ?


「ノザラノムの筆頭魔道師殿とお見受けする。国境改変とは如何な次第しだいか」


 この王様、見事なモミアゲで隣で一番の魔法の使い手なんだけど、おいらは知ってんだぜ? もふもふのクォーターってことをな!

 ってことで防音魔法をピピッとな。


「トゥアノスの王よ。我が命は間もなくついえる」


 ケモ王様、がびーんってなっててちょっと面白い。

 しかし寿命がもうすぐなのは事実である。私が元の体に戻ったら魂がどっかいっちゃったこの体の持ち主は即座に死亡するしかない。つまり即死。

 まぁそんなことはどうでもよくて、今重要なのはこの後ろにたくさんいるケモさんたちですよ!


「我が生きている間に成せなかった事を託すのは忍びない。しかし、王よ。貴方しかいない」


 そうなのだ。ケモさんが家畜扱いのこの大陸で、ケモさんたちを救えるのはトゥアノスだけなのだ。もふもふハーフやクォーターが隠れ住み、なおかつ混血比率の高いこの国にしかできない。


 別大陸にもふわふわさんがいたが、文明レベルが全然だった。具体的には敵がいないので防衛ができない。ノザラノムが攻めて行けば一瞬で植民地になる。

 今は別大陸の捜索はこの体の持ち主だけに一手に任されているが、今後はどうなるかわからない。

 ここでトゥアノスに防波堤になってもらう他ない。その為の国境改変であり、魔法の大盤振る舞いだ。


「しかし我が国は未だ力足らず・・・・・・」


 ケモ王様がしょぼくれて下を向く。うーん、どうすっか。たしかになぁ。この国境に施した魔法って20年程しか持ちそうにないんだよね。

 あと、いまさらだけど言葉使いがちょっとウケる。


「アナタはチガウ。オモイはオナジ?」


 唐突にホム子さんが声を出した。

 ”重い”って何だ? と思っていると頭痛来た。


 ―子供の頃。

 ―裕福な家庭。体の弱い自分。仲良しのもふ子ちゃん。偶然の摂取。改善する体調。

 ―禁断の特効薬。魔力の増加。ケモさんへの迫害。奴隷。食料。


 あー、”重い”じゃなくて”想い”ね。


 この体の持ち主が小さいときは、階級は低いけどケモさんたちも人権があったと。

 で、幼少時に体の弱かった僕ちゃんが仲良しのもふ子ちゃんの擦り傷をたまたま舐めたら劇的に体調が良くなったと。つか、マセガキめ。

 そこからこの国の魔術師たちが人体実験しまくって、ケモさんたちの血は魔力循環の劇的な改善、肉は魔力量増大と。えげつねーな。つい先日まで話してた相手によくそんなことできるな。やっぱこの国嫌いだわ。

 責任を感じたというか、元々階級の低さも嫌だったこの体の持ち主は、ケモさんたちを何とか助けたくて機を伺っていたのね。

 ゆくゆくはケモさんたちを解放したかったけど、一人で全員を守りきれないのでホム子ちゃんを作り、寿命も延ばそうとしたと。

 まぁ、その過程で初恋だったもふ子ちゃんそっくりのホムさんを創っちゃった変態だけど。


「同じだよ」


 ケモさんたちを助けたいのは私も元のマスターも同じだと、ホムさんの目を見て深く頷く。


 初めてこの体の持ち主と考えが一致したが、さて、どうしたものか。

 体の持ち主の筆頭魔道師殿(故人)は、意識改革から考えていたので寿命が足りずに今のざまぁ状態になっちゃってるんだが、さて、勢いで色々やらかしましたが困った。

 確かに守るの辛いわ。今みたいな一強状態で無理やり事を進めるといつ相手が襲ってくるか分からんのをずっと守り続けるのはキツい。攻める方が圧倒的に簡単だわさ。

 私だったら、よーし魔術師全部ぶっころしちゃうぞ♪ とかできなくもないけど、筆頭魔道師氏的には身内も居るし、子弟もいるしで出来なかったんだな。うむ。元々情に厚そうな人物だしな。あくまでこの国基準だけど。


 ケモハーフ国のトゥアノスで力及ばずなら、内乱で国内ごちゃごちゃさせて外に目を向けさせないのがセオリーだが・・・・・・。


 はっ! あるじゃん! いけるいける!


「王よ。トゥアノスの王よ。全ては我が意のまま。時は来たれり」


 予定通りだぜ! みたいな顔で重々しく頷いておく。

 そのままホム子さんをそっと押し出した。


「今来大儀であった。以後トゥアノスにて己が正しき事を成せ」


 ホム子さんがうっすら微笑みながらこくんと頷く。その横でこっそり羊ちゃんたちを筆頭にしたノザラノム中のケモさんも王様にそっと押し付けておく。

 目の前で多量のケモさんを自国内にトスされているのに、王様は目玉ドコーのAAみたいな顔になってて気付く様子がない。

 ま、ホム子ちゃん一人で最終決戦兵器並みの戦力だしね。でもこれはあくまで保険。

 ノザラノムの魔術師たちへの策は別にあるんだぜ。いひひ。


 よっしゃよっしゃと王様たちから少し離れると、ナイスショットで額を撃ち抜かれた。


 あがる歓声、霧のように飛び散る蛍光緑の血。ホム子ちゃんの悲鳴、よろける私。


 そのまま仰け反り地面より少し上で頭位置を停止。どこのポルターガイストだよw


 喜びの勝ち鬨をあげているのはノザラノムの魔術師さんたち。うん、知ってる。知ってて王様たちから離れてあげたよ。


 身体からプシュプシュ飛び散る蛍色の血は、まずノザラノムの魔術師さんたちを覆った。緑色の霧雨にも見える血はノザラノム方面に飛んでいき、空を曇らせた。


「我が命をあがなうまで、呪われよノザラノムヴゥ」


 あ、ダメだ。大根役者過ぎて自分に萎える。ヒィィみたいな顔して墜落&地面にスッ転んだ魔術師のおっちゃんたち見て笑いそうになって声が震えてしまった。

 体の部位は順調に緑の光粒に変わっていく。さらさらした砂のように空を舞い、ノザラノムの空をさらに覆いつくす。


 あとはこのゴタゴタに紛れてノザラノム女子の皆様へメッセージっと。


『女性は魔法が使えないなど誰が言った? 彼らは従順なる奴隷が欲しいだけ。毛人の次は女か、こ』



 あかーん! 時間ナッシーーーーング!!!



 女か子供かとか何とか言いたかったけど、地球に、日本に帰れる座標がやばい! 凄い勢いで逸れて行ってる! タイムリミットが危険!!


 とりま女子達には魔法の使い方と今までの流れってか、別に女子も魔法使えるよとか、もちろん毛人と呼ばれてるケモさん達も魔法使えるよとか、魔法でも魔術でもどっちでもいいんだけど、1から100まで使い方を識っていたこの体の持ち主の使い方ハウツーの記憶をごそっと投げ渡しておく。


 女に魔法が使えない。なーんてのは思い込みの産物だったんだよね。魔術師(=男性。今だと重鎮連中しか知らないようだけど)の皆さんの長年に亘る洗脳の賜物とも言うんだけどね。


 長髪=女性の私がノザラノムの街中で魔法バンバン使いまくったのは皆様御覧のとおり。

 これで男女間の意見の相違で国の分裂待ったなし! に、なるようにちょっと思考も誘導しておいて、なんだったら女子はトゥアノスに移住すればいーんじゃね? とかも教えておいて、これで内乱どころじゃなくて国の瓦解はパッチリ! その間に頑張れトゥアノス。応援してるぞ!


 丁度この体も欠片すら残さず光になったことだし、グッバイ異世界! おいら帰る!!





 あ、しまった。ノザラノムの黄緑濃霧魔術を解除するの忘れてた。まぁ、晴れない恨みってことで(笑)

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