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鬼畜変態呼ばわりされた最強の魔術師4

 この身体の持ち主が美容院という物に行くことになった。

 一年以上ぶりだと笑う身体の持ち主は、幼子を夫に預けて嬉しそうに出かけた。


 美容院とは髪を切る店なのだな。成る程。ノザラノムには無かった物だ。


 ノザラノムでは男に髪は無く、女は髪を伸ばしていた。

 そういえば身体の持ち主の髪は、腰にも届かぬ長さで随分短いと感じた事を思い出した。


 はさみを持つ相手と笑顔で話している女を地面から見つめる。

 我は髪そのものに憑いていたようだ。


 切られた髪と共に、我は地に落ちた。



 諦念を抱きながら我の企みを破った無力な女を眺めていた時、幼子の鳴き声が聞こえた。

 見やると涙を流していたので、泣いているのであろうか。


 いつ訪れたのであろう、困り顔の夫に抱かれた幼子が暴れている。

 落ちてしまうのではないかという懸念は夫も同じだったらしく、致し方無く幼子を地に降ろす。

 そのまま母の元に進んでいた幼子が急に瞳を見開いた。

 焦ったようにあたりを見回していた幼子が、我ごと切り落とされた髪を掴むのにそう時間はかからなかった。


 髪を取り上げようとする大人と幼子の攻防は数日続いたが、女が小さな袋に髪を収めた事で決着がついたようだった。


 我は今、幼子の胸元で揺れている。


 お守り袋という物に込められた我は、この地の常識に捕らわれて、守護霊らしき存在になってしまった。


 我がノザラノムの地を見る事は二度と叶わない。

 誰にも何にも干渉できない日々は長久に続くだろう。


 まぁいい。


 他人の最後の命を掠め取ってまで達成しようとした事を代わりに為してくれたのだ。

 守護くらいしよう。


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