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異世界が召喚されました。 ~モンスターとダンジョンの出現で地球滅亡の危機ですが、気にせず観光を楽しもうと思う~  作者: 結城 からく


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第46話 暗殺者は致命の一撃を放つ

 俺は肉体の再生具合を確かめる。

 無事な箇所が無いほどボロボロだった。

 普通なら致命傷だろうが、俺の場合は許容範囲である。

 治り始めた傷から視線を外すと、変貌した男の姿を見て苦笑い。


「いい顔になったじゃないか。前よりモテそうだぜ」


「ふざ、けるな。いい加減な、ことを……」


 男はぎこちない口調で抗議する。

 鎖骨の唇から、歯軋りの音が漏れていた。


(理性を取り戻したのか)


 頭部が吹き飛んだにも関わらず、男の状態は安定していた。

 肉体は人外化しているが、精神面には冷静さを取り戻したらしい。

 ビジュアルは最大限にまでモンスターになったというのに、なんとも皮肉な結果である。


 そうして観察していると、男が両手を掲げて突っ込んできた。

 思った以上に速い。

 集中しなければ見切れないスピードだった。


「……っと」


 俺は寸前で躱し、踏み込んで男の腹を殴る。

 拳がめり込んで内臓を破裂させる音がした。

 骨の膜は再生していないようだ。


「ぐ、ぶ……っ」


 鎖骨の唇が血を噴く。

 ダメージはしっかり通っていた。


 それを確信した俺は、眼球に指を突き込んで回転させる。

 曲げた指で眼球を抉り出した。


「ああっ、ぎああああぁっっ!?」


 開かれた唇が絶叫した。

 男の右腕が急速に肥大化し、筋肉の塊となる。

 それが怒りに任せて正拳突きを打ち込んできた。


(この間合い……不味いな)


 そう悟った瞬間、正拳突きが顔面に直撃した。

 まるで大型トラックと衝突したかのような感覚だった。

 視界が闇に染まり、身体が地面を転がるのを痛みで把握する。


 指を地面に引っかけることで、俺はなんとか勢いを止めた。

 うつ伏せになった状態で、ゆっくりと顔を上げる。


 辛うじて再生された片目には、男の接近する姿が映っていた。

 血みどろで、両腕がアンバランスに肥大化している。

 首を失った異形は、絶叫しながら襲いかかってくる最中だった。


 ただし、その動きは緩慢で、たまに倒れながら近付いてくる。

 満身創痍で満足に再生していないのだろう。

 弱っているのは明らかだが、そこから放たれる攻撃は強大だった。


 俺は立ち上がろうとして、失敗する。

 両脚が折れて骨が露出していた。

 片腕も複雑に捩れている。


 さっきの正拳突きを食らったせいだ。

 これでは上手く立ち上がることができない。


(まったく、参ったな)


 舌打ちする俺は、近くに武器が無いか探る。

 しかし、こういう時に限って何もない。

 武器さえあればどうとでもなるのだが、その一手が掴めない。

 もどかしい気分をよそに、男は着々と近付いてくる。


 その時、背後から鋭い声が飛んできた。


「ハンク!」


 振り向くと、少し先にアリエラが立っていた。

 モンスターの死骸に囲まれた彼女は、何かをこちらに投げてくる。

 床にぶつかって滑ってきたそれは、一本の斧だった。

 手元まで到達したそれを、俺は掴み取る。

 斧は刃の部分が淡く発光しており、赤熱したような色合いになっていた。


(魔術が付与されているのか)


 俺は直感的に理解する。

 アリエラは、俺のためにトッピングしてくれたらしい。

 ここぞという場面で、素晴らしいサポートだ。


「ころ、す、ころすころすころすゥ!」


 男はすぐ目の前まで迫っていた。

 両手を組んで掲げて、俺を叩き潰そうとしている。


 俺は半壊した両脚で強引に跳躍した。

 膝が割れるのも厭わず、大きく距離を稼いだ。

 前傾姿勢から持ち上げるようにして斧を振るい、頭上から降ってきた男の両腕を切断する。


 一瞬にして両腕を失った男は、そこから悲鳴と共に燃え上がった。

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