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異世界が召喚されました。 ~モンスターとダンジョンの出現で地球滅亡の危機ですが、気にせず観光を楽しもうと思う~  作者: 結城 からく


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第42話 暗殺者は迷宮の主に仕掛ける

 角の生えた男は、顔を押さえながら呻く。

 血の涙を流す目は俺を見ていた。


「こ、来ないでくれ……もう、誰も傷つけたくないんだ」


「正気を取り戻したのか」


 俺が尋ねると、男は首を横に振る。

 指先が角に当たると、彼は大きく震えた。

 自らの変貌に恐怖しているらしい。

 本人も意図しない現象で、止められないのだろう。

 男は絞り出すように声を発する。


「違う。限界なんだ。これ以上、は耐えられない……っ!」


 男は本格的に変貌していく。

 背中を突き破って蝙蝠のような翼が生えた。

 絶叫が響き渡る。


(酷い有様だな。悪魔か何かかよ)


 眼前の光景に不快感を覚えつつ、俺は後方に意識を向ける。

 ケイト達が密かに移動し、戦闘態勢に入った。

 いつでも攻撃を仕掛けられる位置に動いてくれたようだ。


 事前の打ち合わせでは、不死身である俺が前衛を担って、とにかく向こうの注意を引く段取りだった。

 やはりその通りで進めるつもりらしい。

 これは最も堅実とは理解しているが、少し人道から外れているのではないだろうか。

 発案したアリエラはともかく、警部やケイトも反対することはなかった。

 彼女達の中で、俺はそういう扱いでも構わないという認識らしい。


(まあ、信頼されているんだと解釈しておくかね……)


 肩をすくめた俺は拳銃を構える。

 狙いを男に合わせて、引き金に指をかけた。


「さっさと終わらせてやるよ」


 俺は拳銃を発砲し、まずは男の額を撃ち抜いた。

 さらに連射して両手足も穿つ。

 弾丸を受けた男は、地面に膝をついた。

 あちこちから血をこぼしながら、壊れた人形のように泣き言を繰り返す。


「痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い――」


 次の瞬間、男は全身から高熱を放射した。

 危険を察知した俺は、咄嗟に顔を腕で庇う。

 皮膚の焼ける激痛を覚えるも、構わず突進を開始した。


(このまま発熱し続けられると厄介だ……)


 俺だけでなく、ケイト達も少なからず傷付くことになる。

 放置しても良いことはないだろう。

 短期決戦でさっさと仕留めてしまった方がいい。

 俺は腕の間から前方を注視する。


「うああ、あああっ、あああああ……ッ!」


 男は自らの放つ高熱で焼けていた。

 皮膚が焦げて、筋線維が剥き出しとなっている。

 白煙を上げる羽を滅茶苦茶に上下させていた。

 その姿は、血を流す異形の怪物である。

 人間の面影はもはや見られない。


 俺は地を蹴って距離を詰めると、男の首に向かって斧を叩き込んだ。

 渾身の刃が皮膚を破ってその先へと進んでいく。

 刃は半ばほどで止まった。

 その途端、高熱の放射も中断される。


「…………」


 斧を握る俺は、違和感に気付く。

 食い込んだ刃は破損していた。

 どれだけ力を入れても、硬い感触に阻まれてそれ以上は進まない。

 一気に断ち切るつもりだったが、失敗してしまった。

 鉄骨でも入れてあるのかと思うほどに硬い。


(どういうことだ?)


 俺は刃の食い込んだ皮膚を注視する。

 皮膚の隙間から、白い膜のようなものが覗いていた。

 どうやらそれが斧を止めているらしい。


(……骨か?)


 質感から俺は推測する。

 凄まじい防刃性だ。

 男はいつの間にか体内も人外化していたようだ。

 もはや人間とは思わない方がいいだろう。


「――お前は、敵だな」


 男が睨み付けてくる。

 俺は斧を引き抜きながら飛び退いた。


 肉食獣のように追い縋る男が、素早く片手を振るう。

 尖った爪が、俺の首を切り裂いていった。

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