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異世界が召喚されました。 ~モンスターとダンジョンの出現で地球滅亡の危機ですが、気にせず観光を楽しもうと思う~  作者: 結城 からく


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第41話 暗殺者はダンジョンマスターと再会する

 扉の向こうに続くのは、広々とした空間だった。

 サッカーくらいはできそうなスペースである。

 全体が岩で構成されており、警察署の面影はほぼ完全に消滅していた。

 まさにダンジョンといった様相を呈している。


 じっくりと観察すれば、署内の調度品は散見される。

 だが、ここを建物と称するのは無理があるだろう。

 それほどまでに自然豊かな光景だった。


 俺は慎重に扉を越える。

 神経を張り巡らせるも、差し迫った危険は感じられない。

 いきなり攻撃される可能性も考慮していたが、そこまで悪辣ではないらしい。

 片手に握る斧を意識しつつ、俺は空間の奥に注目する。


 そこには一人の男が蹲っていた。

 十中八九、俺が取り逃がした生存者である。

 男は毛布に包まって震えていた。

 こちらを見向きもせず、ただぶつぶつと何事かを呟いている。


(相変わらずパニック状態か)


 最初に会った時もそうだったが、男は精神的に不安定らしい。

 はっきりとした目的意識が感じられず、ただその場にいるだけといった感じだ。

 ダンジョンマスターという自覚すらないのだろう。

 ここまで無我夢中で逃げてきたに違いない。


 それにしても、男は隙だらけだった。

 侵入した俺達には目もくれず、ひたすら妄言の吐露に徹している。

 この空間には他にモンスターもいないため、仕掛けるには最適な状況だった。


(卑怯……というわけでもないか)


 俺は斧を置いてライフルを構えた。

 スコープを覗き込み、照準を男の頭部に合わせる。

 そこから躊躇なく連射した。


 計三発の弾丸は、男の頭部に命中した。

 男は血を飛ばして倒れ込み、弱々しく痙攣し始める。

 そこから血だまりが広がっていく。


 俺はライフルを仕舞うと、斧を握って男に近付いていく。

 今のは致命傷だろうが、万が一ということもある。

 首を断って完全に殺しておきたかった。


 そうして近付く最中、突如として男が上体を起こす。

 彼は涙を流しながらこちらを睨み付けてくる。


「やめてくれぇっ!」


 叫ぶ男が手を振ると、そこから青白い稲妻が放たれた。

 眩い光を発しながら迫ってくる。


(――魔術か!)


 理解する前に俺は跳躍していた。

 寸前で稲妻を回避するも、今度は氷の槍が飛んでくる。

 男の手から射出されたそれは、、俺の脇腹を貫通していった。

 臓器の一部が引き出される激痛に襲われる。


「痛ぇなおい」


 宙返りした俺は、無音で地面に着地する。

 その間に、男が追加の槍を飛ばしてきた。

 俺は斧で叩き割って防御する。

 脇腹の穴が塞がっていくのを一瞥してから、男の姿を観察した。


 銃撃を受けた頭部は割れている。

 その断面から、ねじれた角が生えつつあった。

 加えて血に汚れた顔は不自然に青白く、両目は黄色く濁り始めている。


「どうした。特殊メイクにでも失敗したのかい?」


 俺は拳銃を引き抜いて発砲する。

 全弾が男の胴体に炸裂した。

 男はよろめいて何歩か後ずさるが、血を流しながらも倒れない。

 時折、身体を跳ねさせながら、不気味に佇んでいた。

 その肉体は、だんだんと変貌を進めている。


 拳銃のリロードを行いつつ、俺は軽くため息を洩らした。


(まったく、さすがボスといったところかね)


 一連の銃撃が効いている様子はない。

 むしろ、怪物しての目覚めを早めている気さえした。

 あっけなく殺せたと思ったが、そう簡単にはいかないようだ。

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