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異世界が召喚されました。 ~モンスターとダンジョンの出現で地球滅亡の危機ですが、気にせず観光を楽しもうと思う~  作者: 結城 からく


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第39話 暗殺者は異世界を想う

 休憩と情報共有を済ませた俺達は出発する。

 適当なドアを潜り抜けながら、ダンジョンをひたすら下へと向かっていった。

 戻ることができない以上、とにかく進むしかない。


 アリエラによると、どんなダンジョンでも下にいくのが基本的に正解らしい。

 その先に最深部があるのだという。

 無論、道のりは楽なものではない。

 階層を下るごとに、出没するモンスターは強力になっていく。


「おっと、危ない」


 俺は上体を反らす。

 眼前を黄金の斧が通過していった。

 風圧で前髪が浮かび上がる。


 斧を握るのは、筋骨隆々の大男だ。

 最大の特徴は頭部が牛であるという点だろう。

 ステータス表示によると、ミノタウロスという名称らしい。


 咆哮を轟かせるミノタウロスは、斧を振り回しながら突進してくる。

 斬撃で壁や床を粉砕しながら距離を詰めてきた。

 俺は軌道を見極めて躱していく。

 反撃に移ろうにも、斧の破壊力が凶悪すぎる。

 首や手足を斬り飛ばされると洒落にならない。

 おそらく死なないだろうが、行動不能にはなるだろう。


 視界の端には女性陣がいた。

 彼女達は、ミノタウロスの背後に回って遠距離攻撃を仕掛けている。

 しかし、ほとんど効いていない。

 いずれも鋼のような筋肉に阻まれていた。

 ミノタウロスというモンスターは、常軌を逸したタフガイなのだ。


(仕方ない、少し強引にやるかね)


 決心した俺は、後方へと跳ぶ。

 追い縋るようにして横殴りの斧が襲いかかってきたので、首を傾けてやり過ごそうとした。

 刹那、額から嫌な音と衝撃が響いてくる。

 骨が削れた予感がするも、気にする余裕は無かった。


「食らいやがれ」


 俺は拳銃を連射し、ミノタウロスの顔面に被弾させた。

 そのうち数発が両目を抉る。

 ミノタウロスは絶叫し、地団駄を踏みながら暴れ始めた。


 俺はそこに掴むかかる。

 強引に黄金の斧を奪い取ると、ミノタウロスの脳天に何度も叩き付けた。

 当然、ミノタウロスは激しく抵抗した。

 だがその力も段々と弱まり、やがて完全に沈黙する。

 斧はミノタウロスの頭部を完全に両断していた。

 もはや原形を失っている。


「よし、これで終わりか」


 ミノタウロスを惨殺した俺は、額の汗を拭う。

 いや、汗と思いきや血だった。

 裂けた頭部から垂れてきたものである。

 斧の斬撃は、頭蓋骨にまで到達していたようだ。


 俺はゴミ袋から救急箱を取り出すと、針と糸で傷を縫合を行う。

 別に再生能力に任せても問題ないが、こうして応急処置を施しておくと治りが早いのだ。

 四肢の欠損も、この方法で迅速に回復できる。

 何度も負傷することで学んだ小技だった。


 塞がった傷から糸を引き抜いていると、視線を感じた。

 アリエラがじっとこちらを見ている。

 彼女は少し気味が悪そうに尋ねてきた。


「ねぇ、あなたが【不死身】なのは知ってるけど、痛くはないの?」


「もちろん痛いさ。まあ、慣れれば平気になる。職業病ってやつかな」


 俺が傷だらけなのは、世界が変貌する前からのことだ。

 幾度も死ぬようなダメージを負ってきたが、持ち前の生命力と悪運で生き延びてきた。

 痛みを感じなくなることはなく、むしろ鮮明に知覚している気すらした。


 とは言え、無様に痛がるような真似は許されない。

 その間に殺されてしまうからだ。

 俺は激痛の中でも冷静に頭を働かせられるように訓練している。

 すべては生きていくために必要な技能だった。


 それを聞いたアリエラは苦笑いする。


「怪物ね。知り合いに【不死身】持ちがいたけど、あまりの苦しみに狂っていたわ」


「ダンジョンマスターのスキルもそうだが、ハズレ枠は多いようだな」


「そういうものよ。望むスキルを取得できるのは、とても幸福なことね」


 アリエラはどこか遠い目をして言う。

 彼女は様々な出来事を見聞きしてきたのだろう。

 若いように見えるが、経験は豊富と見える。

 賞金稼ぎなんて仕事をやっているのだから、日陰者には違いないと思う。


 異世界とは、なかなかに大変な場所らしい。

 ただ、俺には合っているイメージだった。

 少し行ってみたい気持ちもあるが、生憎と方法が不明だ。

 自由に行き来できる手段が確立されたら、是非とも旅行してみたいものである。

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