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異世界が召喚されました。 ~モンスターとダンジョンの出現で地球滅亡の危機ですが、気にせず観光を楽しもうと思う~  作者: 結城 からく


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第37話 暗殺者は救出する

「ハンクさんっ!」


 俺を目にした途端、ケイトが顔を輝かせた。

 再会を喜んでくれているようだ。

 なんともピュアな反応である。


 俺は朗らかな笑みで応じた。


「やあ、数時間ぶりだね。元気にしていたかい」


 そう言いながら、俺は二人を観察する。

 ケイトとアリエラは、泥と血に塗れていた。

 それなりに疲労している様子だが、大きな怪我は負っていない。

 ここまでかなり大変な道のりだったのだろう。

 それを窺わせる状態だった。


 ケイトは頬の泥を拭いながら言い淀む。


「私達は大丈夫でしたが……」


「あなたは相変わらず傷だらけね」


 アリエラは俺を見て呆れたように言う。

 ケイトは、それに同意するような顔をしていた。


 確かに俺の格好はボロボロだ。

 モンスターの攻撃を受け続けたせいで血に塗れており、全身が赤黒く汚れている。

 出血したものと返り血が混ざってよく分からないことになっていた。


 もっとも、傷自体は心配ない。

 今も再生能力が機能しており、直前に負った怪我は徐々に治癒されている。

 数分もすれば、傷跡すらなくなるだろう。


 自分の身体を見下ろした俺は、ハンマーを弄びながら笑う。


「それだけ頑張っているという証拠さ。生憎と成果は芳しくないがね」


 二人と会話していると、向こうから銃声が連発された。

 思わぬ再会に意識を取られたが、直前に何をするつもりだったか思い出す。

 警部の戦いに加勢しようとしていたのだった。

 俺はハンマーを握り込んで苦笑する。


「そろそろ助太刀しないと警部が死にそうだ」


「警部がいるのですか!?」


「途中で合流したんだ。今はモンスターを引き受けてくれているよ」


 俺が説明すると、ケイトは安堵した表情になる。

 警部の生存は、彼女にとって吉報だったのだろう。

 同僚が死にまくっている中、誰かが生きているという事実は希望なのだ。


 二人は他に同行者を連れていない。

 誰も助けられなかったものと思われる。

 無論、それを責める気はない。

 この警察署は、色々な意味で手遅れだった。


 一方、アリエラが胡乱な眼差しを向けてくる。


「あなたは何をしているの? もしかして仲間を見捨てたのかしら」


「まさか。少し込み入った事情があるんだが、まあ後で話そう」


 俺は彼女達を促すようにして歩き出した。

 そのままモンスター達に襲いかかる。


 ほどなくして俺達は警部を救出した。

 通路にいたモンスターを殲滅したところで、適当なドアから小部屋へと入り、そこで休むことにする。

 俺以外の面子は、特に消耗が目立った。

 特に警部は少なからず負傷している。

 治療も兼ねて休むべきだろう。


 ケイトの応急処置を受ける最中、警部が俺を睨み付けてきた。

 その眼力には、凄まじい殺気が込められている。

 警部は地響きのような声で恨みを告げてきた。


「貴様……よくも置き去りにしてくれたな」


「人聞きが悪いな。役割分担と言ってくれ。結局、保護はできなかったがね」


 俺は気楽な調子で返す。

 件の生存者を捕獲できていれば完璧だったが、残念ながら失敗してしまった。

 こればかりは俺のミスである。

 警部には無用な苦労をかけさせてしまった。

 それについては申し訳なく思っている。


 警部はため息を吐いた。

 俺との会話を諦めたらしい。

 気を取り直して彼女は話題を変える。


「あなたがアリエラか」


「ええ、そうよ。元の世界では賞金稼ぎをやっていたわ。よろしく」


「こちらこそ」


 二人は挨拶を交えて握手をした。

 手を離した警部は、真剣な面持ちで彼女に問いかける。


「さっそくだがアリエラ。この建物に起きた現象――ダンジョン化について心当たりはあるか」


「もちろんよ。それについては既に結論が出ているわ」


 アリエラは頷く。

 俺はその内容に関心を抱いた。

 やはり異世界人ということもあり、この現象に察しが付いていたようだ。

 椅子に座って続きの言葉を待つ。

 室内の意識が注目する中、アリエラは芯の通った声音で見解を述べた。


「この異変は、ダンジョンマスターの力によるものね。スキル使用者が署内にいるはずよ」

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