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異世界が召喚されました。 ~モンスターとダンジョンの出現で地球滅亡の危機ですが、気にせず観光を楽しもうと思う~  作者: 結城 からく


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第29話 暗殺者は殲滅する

 振り下ろした斧が、オーガの額に食い込む。

 俺はそのまま抉るように引き抜いた。

 噴き出す血飛沫。

 直後、オーガの手が俺の腕を掴んでくる。


「おおっ」


 圧倒的な握力に、腕や肩が粉砕された。

 おまけに引き抜くこともできない。

 片腕を諦めた俺は、蹴りをオーガの額に連打していく。

 傷はさらに抉れ、ついには頭蓋が陥没した。

 崩れた脳漿が体外に漏れ出ていく。


 そこまで行くと、オーガは痙攣を始めた。

 顔面は半ば以上が潰れており、両目や鼻はまともに機能していないだろう。

 普通の生物ならまず死んでいる。

 まだ活動できるのは、オーガの生命力故であった。


「よっと」


 俺は額を蹴って跳び上がった。

 掴まれていた腕が、弾みで引き千切れる。

 回収しようにも、オーガの手が掴んだままだ。

 残念ながらそれだけの猶予はない。


 隻腕になった俺は着地し、近くに転がる槍を拾う。

 そこから少し遠くで詠唱を行う杖持ちのゴブリンへと接近していった。


 ゴブリンが杖の先から雷撃を放つ。

 それは俺の顔面に直撃した。

 皮膚が焦げて、片目が破裂する。


 白煙で視界が埋まるも、俺は気にせず突進を強行した。

 一気に踏み込み、杖持ちのゴブリンに槍の刺突を繰り出す。


 穂先がゴブリンの腹を貫通した。

 俺はそのままアスファルトの道路に縫い止める。

 ゴブリンが断末魔を上げ、やがてそれも弱まって絶命した。


「ふぅ……」


 一息つこうとした俺は、横からの咆哮に反応する。

 猛速で接近してくるそれは、大型の猪だ。

 鋭利に伸びた牙は、炎を纏っている。


 その牙が俺の脇腹に炸裂した。

 熱した鉄を刺し込まれたような苦痛が走る。

 炎を纏う牙が、体内を焼いていた。


 突進の勢いは衰えず、近くの建物の壁に衝突する。

 牙はまだ刺さっていた。

 獰猛な鼻息を鳴らす猪は、力任せに頭を押し付けてくる。

 こうして獲物が死ぬまで体内を抉り焼くのだろう。

 なかなかにグロい習性だ。


「……っ」


 俺は小さく吐血した。

 ともすれば死にそうな痛みだが、こういう感覚には慣れている。

 過去の仕事では、これより酷い傷を負ったことだってあった。


 俺は身を捻って猪の位置を確認すると、片手でその頭を掴む。

 さらに親指を猪の目に突き込んだ。

 親指は根元まで沈み込んでいく。


 その途端、猪が悲痛な声を轟かせた。

 頭を大きく振って俺を投げ飛ばす。


「いてっ」


 俺は地面に落下して転がった。

 片目を失った猪は、向こうから再び突進してくる。


(まったく、忙しない奴だ……)


 倒れる俺は視線を巡らせる。

 そうして頭上に発見したのは、警官の死体だった。

 その手元に転がる拳銃を掴み取ると、撃鉄を起こして猪に向ける。


 目前に迫る猪が頭を沈ませた。

 衝突の瞬間、勢いよく跳ね上げてくる。

 燃える牙が、今度は俺の胸部に直撃した。


 それと同時に俺は、拳銃の銃口を猪の眼窩に突き込む。

 しっかりと抉るように固定してから、引き金を引いた。


 轟く銃声。

 弾切れを起こすまでの三発が、猪の頭部を蹂躙した。

 猪は急停止すると、口から血を垂らして横に倒れる。

 胸に刺さった牙が自重で抜けた。


「はぁ……」


 俺は拳銃を投げ捨てると、身体を引きずって移動した。

 猪の死骸にもたれながら息を吐く。


 辺りを見回すと、山のような数のモンスターの死骸が広がっていた。

 どれだけ少なく見積もっても二百は下らない。

 いずれも俺が始末したものだ。


 陽動を買って出た俺は、警察署前に押し寄せていたモンスターを殲滅した。

 今の猪がラスト一体だったのだ。

 殲滅までの間に何度もレベルアップしたが、その数十倍は致命傷を負う羽目になった。

 今も脇腹の穴から内臓がはみ出ている。


 再生能力がなければ、さすがに死んでいるだろう。

 もっとも、このスキルがあるからこそ、強気な戦い方を選んだわけだが。

 やはり負傷を考慮せずに暴れまくれるのはいい。


 俺はゆっくりと立ち上がった。

 その足で先ほど倒したオーガのもとへ向かう。


 頭部の破損したオーガは既に息絶えていた。

 俺は握られた手を破壊して、自らの片腕を取り戻す。

 断面同士をくっ付けていると、やがて動くようになった。


 再生能力が作用したのである。

 相変わらず便利なスキルだった。


 次に俺は近くを探索して、警官の死体から銃器や手榴弾を拝借する。

 落ちていたビニールのゴミ袋に詰め込んで、サンタクロースのように背負った。

 少し重たい気もするが、捨てるのも勿体ない。


 戦闘が始まってから結構な時間が経過したが、警察署内はまだまだ騒がしい。

 たまに銃声も聞こえてきた。

 まだ戦いは続いているようだ。


 ケイトやアリエラの安否を確認しなければいけない。

 生存者を助ける義理なんてないが、こういうシチュエーションは嫌いじゃない。

 アドレナリンが大量に分泌されるような感覚があり、生きていることを強烈に実感できる。

 変貌した世界を満喫していた。


「ふむ」


 俺は全身をチェックする。

 まだ完治とはいかないまでも、動きに支障がないだけの状態にはなった。

 悠長に休んでいる暇はない。

 これくらいまで再生すれば十分だろう。


 血塗れの俺は、正面入り口から署内に踏み込んだ。

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