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異世界が召喚されました。 ~モンスターとダンジョンの出現で地球滅亡の危機ですが、気にせず観光を楽しもうと思う~  作者: 結城 からく


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第25話 暗殺者は魔術師の名乗りを聞く

「……というわけで街の平和を守るため、私達は暴徒の退治を行っています」


 ケイトが諸々の経緯を話し終える。

 その間、ローブの女は大人しく聞いていた。

 彼女の首にはナイフが添えられたままだ。


 俺は女の背後に立っている。

 余計なことをしないように見張っているのだ。


 この女は相当な手練れである。

 ちょっとでも気を抜けば、たちまち形勢を覆そうとしてきた。

 故に油断は禁物であった。


「なるほど。そっちの話は理解できたわ。頑張っているのねぇ」


「俺も、警官に協力する善良な人間ってわけさ。決して殺人鬼なんかじゃない」


 そう言いながら、俺は女の肩に手を置く。

 振り向いた彼女は、疑うような視線を投げてきた。


「そこは怪しいままよ。あなた、騙されてるんじゃないかしら」


 ローブの女は、なぜかケイトに話を振った。

 驚いたケイトは難しい顔をして思い悩む。


「うーん、どうなのでしょう……」


 そこは即座に否定してほしかったが仕方ない。

 ケイトは、俺との距離を測りかねている節がある。

 互いの方針や価値観が噛み合わないのだ。

 表面的には手を組めているが、きっかけ一つで簡単に破綻しかねない。

 それを彼女は、肌で感じ取っているのだろう。


 一方、ローブの女は身じろぎする。

 彼女は視線をナイフに向けた。


「そろそろ放してくれない? もう抵抗なんてしないから」


「オーケー、信じるよ」


 俺は彼女の拘束を解いて一歩退く。

 ただしそれ以上は動かない。

 瞬時にナイフを突き刺せるのが、この間合いなのだ。

 直前までの位置とは、実質的に変わりがない。

 どちらの場合でも、女を確実に殺せる距離だった。


 案の定、女は俺に要求を告げる。


「もうちょっと距離を取ってくれたら嬉しいんだけど」


「そいつはダメだ。どうせ魔術を使うつもりだろう。死体になりたいのか?」


 俺がそう言うと、彼女はため息を洩らした。

 そして嫌味な眼差しを向けてくる。


「厳しいのね。そんなんじゃ、モテないわよ」


「仕事一筋なもんでね。色恋沙汰には興味がないんだ」


 俺にも恋人がいた時期もある。

 ただし職業柄、長続きしないのだ。

 いつどんな時でも俺は仕事を優先しており、実際にその方が気楽だった。

 幾度もの苦労を経て辿り着いた、自らへのアドバイスである。


「あ、あの……」


 静かな応酬を繰り広げていると、ケイトが控えめに発言した。

 俺への反論を中断した女が尋ねる。


「何。どうかした?」


「こちらの素性と目的は話しました。今度は、その……」


「ああ、あたしの番ってことね。分かったわ」


 流れを察した女は、納得した顔で手を打つ。

 彼女はゆっくりと立ち上がると、俺達に対して誇らしそうに名乗った。


「あたしの名前はアリエラ。異世界で賞金稼ぎをやっていた魔術師よ。よろしくね」

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