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異世界が召喚されました。 ~モンスターとダンジョンの出現で地球滅亡の危機ですが、気にせず観光を楽しもうと思う~  作者: 結城 からく


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第15話 暗殺者は笑みを止めない

 跳び上がった俺は、空中で姿勢を制御する。

 片手に持ったナイフを回転させて、逆手に握り直した。

 この方が刺しやすい。

 特にこういう状況では姿勢的にもベストだった。


 着地地点には、ちょうど暴徒のバイクがいる。

 このまま強引にしがみ付くつもりだった。

 そしてバイクを奪い取る。


 俺の攪乱によって、警察車両に乗るケイトの危険を減らすのが目的だった。

 真っ当な手段で彼女を守りながら戦うのはやりづらい。

 自ら陽動となり、連中を迎撃するのが手っ取り早いだろう。


「おっ」


 落下中、俺は声を上げる。


 視線の先にあるのは、一挺のショットガン。

 バイクを運転する男が構えており、銃口はしっかりと俺を狙っていた。

 反応する間もなく、ショットガンが火を噴く。


 吐き出された散弾が顔面に直撃した。

 肉の潰れる音が響き、視界の半分がブラックアウトする。

 俺は空中で突き飛ばされたように仰け反った。


 どうやら頭部を散弾で耕されたらしい。

 激痛を味わいながらも、俺は笑う。


(いい腕だ)


 俺は腕を伸ばし、バイクの端にしがみ付くことに成功した。

 アスファルトにぶつかりながらもジャンプして、暴徒の首筋にナイフを突き立てる。


「ご、はぁ……っ!?」


 暴徒が目を見開く。

 ナイフで捩じりながら引き抜くと、傷口から真っ赤な鮮血が迸った。

 一部が俺を濡らし、後方へと流れていく。


 明らかに致命傷だが、ここで手を抜く俺ではない。

 そのまま暴徒の首を絞め、背中をナイフで滅多刺しにしてやった。

 暴徒は悲鳴すら上げられず、ただ痙攣するのみとなる。


 運転手の責任放棄でバイクが転倒しかけたので、俺は片脚でハンドルを操作した。

 瞬間的に大きく傾くも、バイクはなんとか立て直す。

 俺は死んだ暴徒を引きずり降ろしてバイクを奪った。

 その際、ショットガンを奪うのも忘れない。


 片手でハンドルを握りつつ、俺はショットガンの造形を確かめる。

 二連式のそれは、銃口が切り詰めてあった。

 射程を犠牲にした代わりに、至近距離での破壊力を上げるカスタマイズだ。

 俺の頭部が吹き飛んだのも納得である。


「さて、と……」


 バイクを運転しながらショットガンの残弾をチェックする。

 先ほど一発撃ってきたので、残り一発だ。

 暴徒を殲滅するには絶対に足りない。

 せめてもう十発くらいは欲しかった。


(しまったな。暴徒のポケットを漁ればよかった)


 密かに後悔する俺は、バイクのハンドルに吊るされた袋に気付く。

 中を開けると、ショットガンの予備弾が入っていた。

 運転しながら装填できるようにストックしてあったのだろう。

 俺は思わず笑みを浮かべる。


「はは、こいつはラッキーだ」


 予備弾は三十発ほどあった。

 俺は嬉々としてショットガンのリロードを始める。

 鼻歌混じりに排莢と装填を済ませた。

 片手がバイクの運転で塞がっているが、大して問題ではない。

 両手が使えなくてもリロードできるように訓練をしてある。


 残る暴徒達は、警察車両とこちらを交互に見ていた。

 どちらを襲撃すべきか判断に迷っているようだ。

 数も少なくなったことで、彼らは上手く連携できていない。

 手分けして仕掛けるという選択肢すら取れない状況だった。


 俺はそんな暴徒達に向けてショットガンを二連射する。

 散弾を食らった暴徒がアスファルトに落下した。

 まるで人形のようにバウンドしながら、彼らは速やかに人生をリタイアする。

 レベル補正で身体能力が上がっていても、交通事故には勝てないようだ。


 そうした被害を目の当たりにして、暴徒達は狙いを俺に決定する。

 数秒もせずに他のバイクから射撃が行われた。


 俺は回避行動を取らない。

 ただ無防備に弾丸を受けた。

 全身を襲う衝撃。

 身を貫かれる苦痛を浴びながらも、俺は一切怯まない。

 血を流しながらリロードをする。


「俺は不死身、なんだ。その特性を最大限に活かさなくちゃなァ……」


 知らず知らずのうちに笑ってしまう。

 撃たれた痛みすら、血に酔うための刺激に過ぎない。


 穴だらけの腕を上げて、俺はショットガンの照準を暴徒達に合わせる。

 恐怖に歪む彼らの表情を楽しみながら、ゆっくりと引き金を引いた。

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