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異世界が召喚されました。 ~モンスターとダンジョンの出現で地球滅亡の危機ですが、気にせず観光を楽しもうと思う~  作者: 結城 からく


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第12話 暗殺者は意気揚々と外へ赴く

 俺は軽い足取りで署内を移動する。

 ともすればスキップでも始めてしまいそうだった。

 それだけ良い気分なのである。


 警部から聞かされた依頼は、俺にとって好みの内容だった。

 それはすなわち、街中に居座る暴徒団の処理である。

 彼らは、モンスターパニックに乗じて犯罪行為に走り始めた者達だ。

 大半が犯罪者で、脱獄した囚人も混ざっているらしい。

 そんな連中が徒党を組んで、愉快な毎日を送っているそうだ。


 暴徒達は生存者を捕まえて、面白半分に惨殺したり、奴隷にしたりしている。

 モンスターを飼っているという情報もあった。

 警察署を襲撃してきたことも何度かあるという。

 なかなか好き放題に暴れているようだ。


 警部はそんな暴徒に手を焼いている。

 彼らは数が多く、複数のグループに分かれて活動していた。

 そして、街中を探索する警官を襲うのだ。


 掃討しようにも、彼らの戦闘能力は高い。

 人間やモンスターを殺すことで、レベルアップを繰り返しているためだ。

 単独ならともかく、集団で行動する彼らには警官では敵わなかった。

 彼らがいる限り、物資調達も満足に行えず、人的被害ばかりが増えていく。


 その流れを不味いと思った警部は、俺に依頼した。

 殺人という一点において、俺ほどの適役は珍しい。

 レベル的にも向こうの連中を凌駕している。


 無断外出中、俺は暴徒らしき人間を何度か始末したことがあった。

 彼らは戦い慣れている様子だったが、大したことはなかった。

 数が増えたところで同じだろう。


 警部から彼らの拠点を記した地図を貰っている。

 すべてを網羅しているわけではないものの、記載された分を残らず爆破すれば、安住の地は消滅する。

 暴徒達は、今までのような活動はできなくなるはずだ。


 そうこうしているうちに、俺は寝泊まりする牢屋に到着した。

 口笛を吹きながら荷物を整理する。


(警部も愉快な仕事を回してくれたものだ)


 つまらないことなら断るつもりだった。

 こういった依頼は悪くない。

 得意分野そのものである。


 暴徒達は確かに悪党だが、俺は批難できる立場にない。

 俺はむしろそちら側の人間だろう。

 成り行き次第では、彼らの仲間入りを果たしていた可能性もある。

 まあ、巡り合わせが悪かったとして、彼らには大人しく殺されてもらうつもりだった。


「あ、あの……」


 リュックサックを漁っていると、後ろから声がした。

 振り向くとケイトが立っている。


 彼女は俺の同行者に選ばれたのだ。

 警部の推薦で、おそらくは見張り役だろう。

 俺に同行するなんて、なんとも不遇である。

 彼女の扱いには同情せざるを得ない。


 俺は立ち上がって話しかける。


「早いね。もう準備ができたのか」


「はい、必要な物は【空間収納】に入れてあるので……」


「便利そうで羨ましいよ」


 ケイトは常に大量の武器を所持している。

 今回もきっと役に立ってくれるだろう。


 俺が彼女の能力を気に入っていることを、警部は見抜いている。

 だから同行者に選んだに違いない。

 その判断、非常に適切だ。


 下手な警官が付いてくることになったら、事故を装って殺してしまうところだった。

 俺の"味方殺し"という悪癖も把握されているようだ。


 それにしても、目の前に立つケイトは明らかに怯えている。

 俺は苦笑しつつ尋ねた。


「どうした? 俺の素性を知ってビビっているのかい」


「……っ」


 ケイトは緊張した面持ちで息を呑む。

 どうやら図星だったようだ。


 警察署に着いてから話す機会がなかったが、彼女はデータベースで俺のことを調べたのだろう。

 そこで真実を知った。

 新人のケイトからすれば、さぞ恐ろしい存在だと思う。

 こんな態度になってしまうのも納得だ。

 むしろ同行者の任を断らなかったことに驚いているくらいだった。


 彼女なりの責任感だろうか。

 俺を警察署に招いたのは、他ならぬケイト自身だった。


「安心しなよ。今の俺は、悪党を倒すヒーローさ。君に危害を加えることはない」


 そう言って俺は警官の帽子を被る。

 街中で見つけた死体から拝借したものだ。

 この地域は日差しが厳しい。

 体調管理には気を付けなくてはいけない。


 対するケイトは、複雑な表情を浮かべていた。


「よ、よろしくお願いします……」


「こちらこそよろしく」


 俺は片手を上げて応じる。


 こんな人間を相手にも礼を欠かないとは、彼女の律儀さには感心させられる。

 もう少し横柄になってもいいのではないだろうか。


 一方、ケイトは俺の荷物を見ていた。


「それが、ハンクさんのお荷物ですか?」


「ああ。コツコツ揃えてきたんだ」


 俺はリュックサックの中身を披露する。

 ナイフや拳銃、サブマシンガンなどの銃火器に加えて、自作の爆弾も入っていた。

 これらは街中で見つけたり、暴徒から奪ったものだ。

 予備弾薬もそれなりにあるため、銃撃戦もこなせる。


「す、すごいですね……」


「個人的には準備不足だがね。鉄砲店が荒らされていたのが痛かった。まあ、悪党共から奪ってしまえば解決さ」


 俺はリュックサックを背負うと、牢屋を出た。

 佇むケイトに手招きをする。


「さて、そろそろ行こうか」


「待ってください! もうすぐ日が暮れますよ。出発は夜明けまで待つべきかと……」


「夜間は危険だって言いたいんだろう? 残らず殺すから問題ないよ」


 せっかく楽しい仕事なのだ。

 朝まで待つなんてできない。

 それなりに時間のかかることなので、早めに取りかかるべきだろう。


「えぇっと、その……頼もしいです、ね?」


 反応に困っているケイトを引っ張るようにして、俺は警察署の出入り口へと向かった。

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