共闘
「すみませーん」
「ええと…イルファナ・ユールミル様とセリア・フリスマン様ですね?」
「はい!」
そろそろ1時間も経とうかという頃に、イルファナ達は管理委員会へ戻ってきていた。
「チーム結成はもう完了していますので、ご確認ください」
受付の人がそう言ってタブフォンの画面を見せてくると、そこにはチームのホームページが表示されていた。
「すごい簡素だね…」
「そうだねー!」
そこには本当に何も手をつけられていないホームページといった感じで、一番上に『クマさんのぬいぐるみのホームページ』と書いてあり、その下にチームメンバー、獲得陣地、攻略済ダンジョン、活動履歴、その他の5つのリンクがあるだけだった。
イルファナ達がタブフォンを軽く眺めたことを確認すると、受付の人がそのタブフォンを指し示しながら、説明を始めた。
「こちらがチームのタブフォンになります。
チームのタブフォンからホームページのカスタムや、掲示板のブログ機能の使用が出来ます。
詳しい事はチームタブフォン内にある説明書をご覧下さい」
「わかりました」
受付の人は、イルファナの返事を聞くと次は先程より口調を強くして説明を再開した。
「それと、チームタブフォンは必ずパスコードを設定してください。
そして、万が一チームタブフォンを失くした場合は、利用を停止しますので、いち早くご連絡ください」
「は、はい!」
「そしてチームメンバーの募集ですが、募集期間が終わりますとメッセージが届きますので、そのメッセージにありますふたたび掲載というボタンを押していただきますと、同じ条件でふたたび募集を掲載致します。
もし募集内容を変更する場合は、管理委員会に来ていただいて手続きが必要になりますので、ご了承ください。
その他わからないことがありましたら、管理委員会にて受け付けますのでいつでもお待ちしております」
「わかりました!」
受付の人からの説明が終わり、チームタブフォンのパスコードの設定を完了したことを確認すると、ようやくイルファナ達は正式なチームとして管理委員会に認められた。
丁度今からウルカーナ陣地へと向かえば時間もいい感じだったので、イルファナ達はチームタブフォン内の機能は後で確認する事にして、さっそくウルカーナ陣地へと向かうことにした。
☆☆☆
「そういえば、セリアさんは今日はどこに泊まるんですか?」
「ウルカーナ陣地のホテルをとってあるわ」
「それならよかったです!
もしかしたら、予定が狂っちゃってるかなって思って…」
「ふふっ、イルファナがソロをしてる間に、慌ててとってきたのよ」
「あわわっ、やっぱり狂っちゃってましたか……」
シュンとするイルファナを見て、セリアは微笑ましい気持ちになった。
(この子はあれね…犬みたいな子ね)
セリアが、そんなに気にしないで。とイルファナを励ますと、イルファナはすぐに笑顔に戻る。
そんなイルファナを見て、セリアも少し笑顔になる。
(やっぱりこの子といると、少しずつでも変わっていける気がするわ)
まだ出会って半日も立たない二人であったが、セリアはもう何年も一緒にいる気がするくらい、やりやすさを感じていた。
それがイルファナの性格から来ているのか、セリアが今まで殻に閉じこもりすぎていたのかはセリアにはわからなかったが、イルファナの事は大事にしないとね…と思っていた。
☆☆☆
ウルカーナ陣地へは予定より早く着いてしまい、30分ほど空き時間ができてしまった。
「セリアさん、どうしますか?」
「そうね…30分だと微妙なところよね。
どこかへ行くにしては時間が少ないし…素直にここで待つことにしましょうか」
「そうですね!」
そういえばイルファナはいつも同意してくれているわね…と思ったセリアは、少しからかってみることにした。
「そうね…待つついでに、敬語を使わなくする練習でもする?」
「ひえっ、それは嫌ですー!」
「ふふっ…そんなに?」
「ま、まだまだ恐れ多くて…そのうち頑張りますっ!」
「そうね。じゃあ、楽しみにしてるわ」
☆☆☆
そんなこんなで会話を楽しみながら待ち時間を消化した二人は、ダンジョンもどきをプレイしようと受付へと向かっていった。
「いらっしゃいませ」
「タッグを予約していたものなんですけどー…」
そう言いながら整理券を渡す。
「はい。確認できました。
それではご案内しますので、あちらの店員にこれを渡してください」
「はい」
受付の人から番号が書かれた紙を受け取ると、案内役の人にそれを渡した。
そして、案内されてダンジョンもどきへと入ろうというちょうどその時、入り口の奥からあの漆黒のローブを羽織った人…カリファが出てきた。
「っ!」
思わず反応してしまったイルファナは、カリファの方を確認した。
しかし、カリファはフードを被っていてどんな人かはわからなかったが……セリアと同じくらい小さかった。
(あれっ?草原で見た時はそんな感じには見えなかったけど…でも、この人だよね…)
セリアもカリファの方を見ていた事も考えると、この人がカリファで間違いないだろう。
すれ違いざまに、こちらを見てきたカリファとフード越しに目が合った様な気がしたイルファナは、好奇の視線を感じた。
「…?」
気のせいかとも思ったが、すっごいジロジロ見られているので、気のせいではないだろう。
しばらくするとカリファは満足したのか、去っていってしまった。
「お客さん?」
去っていくカリファの背中を眺めていると、店員から声がかけられた。
イルファナもセリアもカリファの事が気になったが、今はとりあえずダンジョンもどきの事だと割り切り、今度こそダンジョンもどきへと入っていった。
「それでは、お楽しみくださいませ」
店員さんがその言葉と共に去っていくと、ソロモードの時にあったのと同じ機械がアナウンスを始めた。
『ウルカーナダンジョンもどきへようこそ。
タブフォンのお持ちの方はバーコードの提示を。お持ちでない方はフリープレイを選択してください』
二人順番にタブフォンをかざすと、無事に個人識別が完了した。
『イルファナ・ユールミル様、セリア・フリスマン様ですね。
それでは、ウルカーナダンジョンもどき タッグプレイをお楽しみください』
「難易度はどうしましょうか?」
「ソロはイージーでやりました!」
「じゃあ…ノーマルに挑戦してみる?」
「ノーマル!頑張ります!」
「ふふっ、了解。頑張りましょうね」
セリアがノーマルモードを選択すると、確認のアナウンスと共にフィールドが展開される。
ノーマルモードは全5階層となっており、第1層は2-5の掃討戦だった。
「2-5ね…イルファナは、どっちがいい?」
「私、ここがいいです!」
二人で機械を覗きながら、ルールの確認や開始位置を決める。
「初戦なんだし、気楽にやりましょう」
「はいっ!」
セリアは作戦を確認しようともしたが、イルファナにプレッシャーをかけてしまうかもと思い、軽く声をかけると試合を開始させた。
試合中はプレイヤー同士が隣りあったマスに配置された場合を除いてコミュニケーションを取ることは禁止されており、個人個人で行動を考えなければいけないのも、ボードファイトの一つの面白さであった。
『各チームの配置を確認します。
1-2.1-3にそれぞれエネミーA、エネミーB。5-2.5-4にそれぞれセリア様、イルファナ様。
それでは、戦闘を開始します』
アナウンスと共に、戦闘が開始される。
(今回のエネミーは…弓持ちと槍持ちね。
弓の方はレンジ3くらいあってもおかしくないわね…槍はいつも通り、攻撃特化かしら)
セリアは、相手の装備からエネミーのタイプを割り出していく。
ウルカーナダンジョンもどきでは、相手の装備が確認できるように設定されていたため、ある程度のタイプの予想が可能だった。
そしてウルカーナダンジョンもどきでは、装備をしているエネミーとしていないエネミーがいるのだが、今回は後者のようで、エネミーAが竹槍、エネミーBが紅弓を装備していた。
(今回は動いてからスケルトン生成…場所もセリアさんの邪魔にならないようなところに…)
セリアが敵を分析している一方、イルファナは自分のことで精一杯だった。
下手なところにスケルトンを出してしまえば、セリアの幽霊がうまく動けなくなる……どころか、下手したら自滅してしまう場合もあるので、前回のように適当に出してしまったら痛い目を見るかもしれないのだ。
『ターン2 セリア様の行動です。ムーブ可能です』
(さてと……ソロじゃないのは久しぶりね、全力で楽しまないと)
久しぶりの共闘に気を高めたセリアは、様子見の幽霊生成を行うと、行動を終了させた。
『セリア様、スキル:幽霊生成を使用。4-2に幽霊Aが出現。
セリア様の行動を終了します』
(あれっ?セリアさんは動かないんだ…動かない方がいいのかなあ…)
『ターン3 イルファナ様の行動です。ムーブ可能です』
(あわわっ、私の番だ…!ど、どうしよう…動こうかと思ってたけど…ちょっと怖いなあ)
イルファナは、セリアの行動を見て動くことを一旦保留する事にした。
「スケルトン生成!えっと…4-3.4-4.4-5.5-5!
ムーブはしないで…行動終わり!」
『イルファナ様、スキル:スケルトン生成を使用。4-3.4-4.4-5.5-5にそれぞれスケルトンA、スケルトンB、スケルトンC、スケルトンDが出現。
イルファナ様の行動を終了します』
(こ、これでよかったのかな…)
自分の行動に不安を抱いたが、セリアに確認をすることも出来ないので、イルファナにはどうしようもできなかった。
『ターン3 エネミーBの行動です。ムーブ可能です。
2-2へムーブ。
エネミーB、スキル:レッドアローを使用。
セリア様に314ダメージ。幽霊A撃破。
エネミーBの行動を終了します』
(範囲攻撃ね…わざわざ直線上に来たってことは、直線系攻撃スキルかしら。
前後左右には出さない方にした方がいいわね…それに、イルファナは相性が悪そうね。
先にエネミーBをやらないと…)
敵を冷静に分析したセリアは、エネミーAの行動次第では変わるが、まずはエネミーBの撃破を狙うことにした。
それはイルファナも同じようで、範囲攻撃に恐怖を感じ、エネミーBに狙いを定めた様だった。
『ターン4 セリア様の行動です。ムーブ可能です。
スキル:幽霊生成 クールタイム残り3』
「マジックカノン!」
セリアは、敵がうまく一直線上に並んでくれたので、見逃すまいとマジックカノンを放った。
『セリア様、スキル:マジックカノンを使用。
エネミーBに146ダメージ。エネミーAに151ダメージ』
「ムーブは……5-1」
エネミーBの先程の攻撃スキルのレンジが、スキル依存なのかキャラ依存なのかはわからなかったが、レンジ4…ということは無いだろうと予想したセリアは、エネミーBマスを3つ開けた。
これは、最悪攻撃されてもレンジ4想定で動けばいいだろうという、序盤の情報探りでもあった。
『5-1へムーブ。
セリア様の行動を終了します』
「146に151ね…Mガード45くらいかしらね…」
『ターン6 セリア様の行動です。
スキル:幽霊生成 クールタイム残り1
スキル:マジックカノン クールタイム残り3』
「スローダウンしかやることないわね…私も早くレベルを上げて、スキルを色々覚えたりところね」
ボードファイトにおけるレベルは、ステータスの変化は10レベル毎に少しだけ上昇するだけで、基本的にはスキルの獲得がメインとなる。
イルファナはおろか、セリアもまだまだレベルの伸び代があるので、しばらくは二人でダンジョン巡りになるだろう。
というのも、レベルを上げるにはダンジョンの攻略以外に方法がないからである。
『セリア様、スキル:スローダウンを使用。
エネミーBのスピードが16ターンまで5に上昇。
セリア様の行動を終了します』
『ターン6 イルファナ様の行動です。ムーブ可能です。
スキル:スケルトン生成 クールタイム残り17』
「ムーブ……しなくていいや…やることがなーい!」
『イルファナ様の行動を終了します』
「はやくスキル覚えないとどうしようもないよ…」
何も出来ない虚しさを噛み締めるイルファナ。
セリアはその姿を見ながら、早くレベルを上げようね……と思うのだった。
『ターン6 スケルトンBの行動です。
3-4へムーブ。
スケルトンBの行動を終了します』
『ターン6 スケルトンAの行動です。
3-3へムーブ。
スケルトンAの行動を終了します』
『ターン6 スケルトンDの行動です』
((あっ……))
アナウンスを聞いた瞬間に、イルファナとセリアが心の中で察した。
『スケルトンD、イルファナ様へ攻撃。イルファナ様とスケルトンDに30ダメージ。
スケルトンDの行動を終了します』
「うわあああああん!!
どうしてこうなるのおおお!!」
前回と同じ過ちを繰り返すイルファナ。
セリアは声をかけることは出来なかったが、試合が終わったら励ましてあげよう…と決めたのだった。
『ターン6 スケルトンCの行動です。
4-4へムーブ』
((あっ……))
このターンで2度目の察しであった。
『スケルトンC、イルファナ様へ攻撃。イルファナ様とスケルトンCに30ダメージ。
スケルトンCの行動を終了します』
「……うぅぅっ」
(イルファナ…元気出して…)
なんとなく空気が重くなった気がした二人だった。
『ターン6 エネミーAの行動です。ムーブ可能です。
2-3へムーブ。
エネミーA、スケルトンAへ通常攻撃。スケルトンAに3038ダメージ。スケルトンA撃破。
エネミーAの行動を終了します』
「スケルトンちゃあああん……オーバーキルすぎるよう……」
(3000……イルファナに見せてもらった時も思ったけど、このスケルトン撃破されないことあるのかしら…)
相変わらずの打ちひしがれ様のイルファナと、スケルトンの被ダメージ量を聞いて、そう思わざるを得ないセリアであった。
ついに始まりましたタッグバトル!
なんか下手したら負けそうで怖いです。
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