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ボードファイト! 本編  作者: あああ
プロローグ等
1/11

プロローグ

はじめまして。あああです。

不定期更新です。頻度は…遅めかと思います。

 





 ───今回の採用は、お見送りとさせていただきます───





 一枚の紙には、ただこう書かれていた。



「………」



 この手紙を受け取った少女…イルファナ・ユールミルは、普段の明るさからは考えられないほどの暗い表情をしながら、無言でその手紙を眺めていた。



それは夏も過ぎてきた今の少し前…夏真っ盛りの頃に募集があった企業に書類を送った時のもので、つまり書類審査で落とされたというわけだ。



「……今回も、ダメだったのか?」



 そんなイルファナを見ながら、机を挟んだ反対側に座っていた少し厳つい顔をした父が声をかける。



「…………うん」



「そっか……でも、次こそは行けるわよ!」



 今度は、その間に座っている、父とは対照的に穏やかな顔つきの母が励ました。



 イルファナが似ているのはどちらかと言えば母親の方だろう。母親譲りの青みがかった綺麗な黒髪と、年齢を感じさせないミステリアスな美しさがあった。

 それでいてガタイはそこそこ良く、顔の堀りがしっかりしているのは、父親に似た所だ。



「これで10社目だよ?もうダメだよ」



「でもなぁ…お前は、ずっとボーダーになりたかったんだろう?」



 ボーダー。この世界で、誇り高いとされている職業だ。



「私の能力じゃ、ボーダーは無理だったんだよ」



 そう言いながら、イルファナは自分のステータスを確認する。




 ──────────────


 ☆イルファナ・ユールミル Lv.1


 HP 1443

 パワー 51

 Mパワー 56

 ガード 41

 Mガード 38

 スピード 3

 レンジ 3

 ムーブ 3

 リターン 30


 リーダースキル:なし


 所持スキル:スケルトン生成


 セットスキル:スケルトン生成


 装備:なし


 ──────────────




「はぁ……」



 ステータスを見ながらつくため息はもう何回目だろうか。

 イルファナは、このステータスに自分の夢を否定されているようで、自分のステータスが嫌いだった。



「じゃあ、家を継ぐか?」



 ユールミル家は、代々審判してきていた。



「それは嫌」



 自分が成りたかったボードファイトの審判をするのだけは、嫌だった。



「でもなぁ…それじゃあこの先、どうするんだ?」



「……」



 何も答えられなかった。

 ユールミル家が代々審判をしていた事もあり、イルファナは今までの人生のほとんどをボードファイトに費やしてきたのだ。

 今更、他のことを始める気にもなれなかった。



「お父さん、もうそろそろいいんじゃない?」



 母…セナ・ユールミルが父に向かって何かを促す。



「そうか……お前がそういうなら、そうだな…」



 父…アルド・ユールミルはしばらく考え込むと、イルファナに進言した。



「お前が、本気でボーダーになりたいと言うなら、ユールミル家がスポーサーになってやろう」



「……えっ?」



「お前の、スポーサーになってやる。いや、スポーサーと言っても、生活資金を送るくらいだ。

 支えられるのはお前と…そうだな、あと二人くらいが限界だ。

 家は審判をやっているから、表立ってスポーサーになることは無理だからな」



「うん…わかってる。

 でも、いいの?私が一人で《塔》に挑戦しても、陣地を獲得するのはおろか、仲間を見つけるのも難しいと思うし…」



「お前の意志の強さは十分わかった。無理だと思ったら帰ってこい。それなら、お前も納得できるだろ?」



「最初から諦めるみたいに言わないでよ」



 イルファナは父から言われ事が嬉しかったのもあり、照れ隠しにぷりぷりと怒る素振りを見せる。



「悪い悪い。でも、俺もずっと審判してきたんだ。お前のステータスを見れば察するものもあるさ」



「私だって…」



 イルファナが何かを言いかけたが、アルドがそれを遮った。



「でもな、ステータスやスキルだけで勝負が決まるわけじゃない。

 それに、これから獲得するスキルだって獲得するまではなにかわからないんだ」



「………うん」



 イルファナの返事は、落ち込んだものだった。



 アルドの言うことは嘘ではなかった。

 しかし、やはり強いステータスやスキルを持っているものが強いのは当たり前だし、スキルだって、基本的には初期スキルと相性がいいスキルを獲得するものだ。


 その点、イルファナのステータスとスキルは、相性が悪いのだ。

 そのせいで、今まで何社もボードファイトに参加している会社を受けてボーダーになろうとしたのだが、ステータス送検の段階で、落とされてきたのだ。



「実は俺にもな、ボーダーになりたかった頃があったんだよ」



「そうだったの?」



「ああ…意外だったか?

 とにかくな、《塔》には色んな奴がいる。俺は、俺みたいな奴らと固まって色々もがいたんだ。結果はダメだったけどな。

 きっとお前と同じ境遇の奴もいるはずだ。そいつらと、やりたいようにやってみるといいさ」



「……うん」



 今度は、力強く返事をする。




 イルファナは両親の優しさに感謝をしながら、この日この時、《塔》へと一人で乗り込むことを決めた。《塔》でどんなことが待ち構えているのか、希望を胸に抱きながら。



 ………乗り込むとは言っても、両親の仕事の都合で家が《塔》の中にあるのだが。


良かったら、是非評価をお願いします。

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