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反撃に向け

途中、三人称から一人称に変わります。


◇◇◇◇◇


誤字修正、及び言い回しを修正しました。内容変更は、行っておりません。


「アローン団長、聞こえるか」


 水晶玉から聞こえてきた声は、王都にいるフェーデのものだった。


「今、陛下から勅命を受けた。私もアボッカセ襲撃者の討伐に加わる」

「そうですか。私は今、誘拐された者たちの救出に向け、作戦会議を行っております。居場所は分かったのですが、誘拐された者たちが人質にされ……」

「人質がいなければ、盗賊を魔法で吹き飛ばせるが、難しいな」

「最悪、被害者が出る可能性もあります」


 生きて全員救出が一番望ましいが、それがどんなに難しいことか、二人には分かっていた。


「私も手を貸すため、そちらへ向かう。だが、私がそこへ行くことは伏せ、アボッカセへ向かうと広めろ。その上で私を奇襲に使えば、多くの人質も救えるだろう」


 フェーデの提案にアローンは考える。

 アローンが人質を放置し、アボッカセに戻ることはないと敵は読んでいるはず。事実その通りである。その上でフェーデが王都から到着となれば、誘拐事案はアローン、アボッカセ襲撃にフェーデが尽力を注ぐと考えるのが、普通だ。

 誘拐を企んだ盗賊は、アローン相手に長引かせるのが目的。そこに二人で奇襲をかければ、想定外の事態に盗賊も慌てるだろう。だが……。


「……アボッカセを放置し、誘拐を早急に解決させる。そういうことですね」


 そう。一旦、アボッカセ襲撃者を放置することになる。

 これ以上、誘拐解決に、時間を割くなということでもある。

 確かに足留めをくらい、アボッカセへ戻ることができない。誘拐がなければ、すぐに解決できた事案なのに。


「承知しました。到着をお待ちしております」


 早急に事態を打開するには、これが一番かもしれない。フェーデの提案を受け入れることにした。

 それからフェーデとの通信を終え、今度はアコッセに連絡を入れる。


「アコッセ、フェーデ殿下がそちらに向かうことになった。伝令を回す準備をしろ。……これから話すのは、密な内容だ。周りに誰もいない場所へ移動しろ」


◇◇◇◇◇


「お兄様……。いえ、リファレント殿下。それは本当ですの? アボッカセが襲撃だなんて」

「冗談で言える話ではないよ、事実だ。被害状況はまだ不明だが、町の多くで火の手が上がった。敵に火矢を放たれてね。アローン団長や別の部隊、多くの者が近場に現れた盗賊の討伐に向かい、基地が手薄になった隙を襲われたのだ」

「……その盗賊も襲撃者の仲間なのでしょうね」

「話が早くて助かる」


 同じことを国王も導きだし、リファレントも同意見だった。


「これから私、国王主催のパーティーに参列しますの。そんなのは放って、今すぐ帰りたいですわ。謁見した際、明らかに国王は、なにか企んでいた様子でしたし。こんな小国、近いうちにインバーション帝国に蹂躙されるでしょう。本当、それを気がつかない愚王で……」

「お前の愚痴に付き合っている時間はない。いいな、出発前の陛下の話、忘れてはいないな? もしお前がその国を敵とみなすなら、陛下も同じ判断を下されるそうだ」

「そんなに信用されるとは、光栄ですわね」


 声だけのやり取りだが、水晶玉の向こうでルーチェが微笑んだと分かる。


 彼女は十分、やる気だ。なにがあれば開戦を宣告するのではなく、今や開戦を行うタイミングを計っている。

 それを知らないかの国は、帝国に命じられた通り、ルーチェを引き止めることだけに躍起になっている。それがますます、ルーチェの怒りを買うと知らずに。

 まさか帝国の手ではなく、フレイブ王国の手により国が亡ぶとは、想像すらしていないだろう。だが、その状況を作り出したのは、彼らなのだから。全てが終わり、後悔すればいい。


「我が国は平和を愛しているが、戦う時は戦う。戦うことを放棄し、見せかけの守りで安堵する者に、戦う覚悟を決めた者の力、とくと味わってもらおう」


 兄弟の中で一番心配していたエニュスは、アボッカセの報に顔色を無くしたものの、倒れることはなかった。


「頼もしい弟妹たちだ」


 四人の弟妹の顔を浮かべ、リファレントは喜ぶ。

 次代。己が王に就いてからも、彼らはきっと、今回のように国のため働き、自分を……。フレイブ王国を助けてくれるだろう。そんな弟妹に見捨てられないよう、努力をせねば……。なによりこの戦で勝利せねば、フレイブ王国が亡ぶ。

 絶対に民を、国を、守る。リファレントは改めて、強く決意する。


「リファレント王子、先の病の件でございますが……」


 戦とは別の、悩みの種に関する報告が届く。

 最近、王国の南方で未知の病が猛威を振るっているのだ。有効な薬が見つからず、患者や、患者と疑われる者の隔離しか、有効な策が見つかっていない。

 今回も芳しい報告ではなく、ただの被害状況の報告だった。


◇◇◇◇◇


「傷薬が足りなねぇな」


 避難場所の近くに用意されていた薬は、ある程度の量が用意されていた。その想像以上に被災者が多く、今や尽きかけている。特に火傷に関する薬、包帯の減りが早い。


「どうする? 薬を取りに、町へ行ってみるか?」

「止めておけ。それで俺たちが怪我をしたら、元も子もない。ここで皆を守らないとならないし……。さっき伝令が回ってきた。町にはまだ、襲撃者がうろついている。次の伝令まで、ここで待機だそうだ。フェーデ殿下が来るから、それを待って、奪還作戦に入るつもりかもな」

「応援部隊か、助かる」


 フェーデが来る?

 盗み聞きしてしまった団員の話に、一瞬心が浮き立つが、今はそんな時ではないと、すぐに熱を払うように頭を振る。


「あの! 私、薬草を探してきます! 今の季節なら、幾つかこの辺りに、使える薬草が生えていますし」

「それは助かる。親父さんから教えてもらったのか?」

「昔からよく先生の手伝いをしていたからな。襲撃者がどこに潜んでいるか分からない。よし、俺が付き添おう」


 それから私は、護衛兼手伝いとしてついてきた団員と二人で、薬草を摘みに行く。

 思った通り、使える薬草が生えている。中には乾燥させないと使えない薬草もあるけれど、いつまで避難生活が続くか分からないので、こちらも摘んでおく。例え避難場所で使わなくても、どこかで使う場面があるかもしれない。


 途中、わずかばかりに生えているエルフィールを見つけた。他の草花に紛れ、ほとんど目立たない。

 フェーデと植え替えたエルフィールは、無事だろうか。あの子たちは、また成長したのだろうか。今年はフェーデと、種飛ばしを見ることができるだろうか……。


「ジャスティー、あとどれくらい薬草は必要だ?」


 問われ、我に返る。

 いけない、また……。強く頭を振る。

 こんなことを考えている時ではないと、何度も自分に言い聞かせているのに……。それでも思わずにいられない。


 フェーデに、会いたい……。

お読みいただき、ありがとうございます。


すっかり恋愛面より、国獲りな話になり……。

いや、予定通り話は進んでいますが、想像以上に恋愛面を描くことが少なく、設定ジャンルを間違えたかな……。と、ちょっと悩んでいます。


さて、ジャスティーの周りだけでなく、様々な場所でこれからも話が進みます。

そのため今回のように、一人称と三人称が交互に変わる事が増えますが、なるべく全体的に時系列順に進めたいと考えています。

そのため舞台があっちこっち飛び、一人称と三人称が乱れます。

この状態が当分続き、読まれるのが大変かもしれませんが、なるべく時系列。という点に、ご理解いただけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。


村岡みのり

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