私にもナンバーが……
修正内容:誤字脱字、言い回し等を修正しました。内容に変更はありません。
私の名前はジャスティー。平民なので、家名はない。
医師である父と、父の手伝いをしつつ家事をこなす母の間に生まれた、平凡な娘。
母から受け継いだ濃い茶色の瞳と、肩より少し長い薄茶色の髪の毛を持ち、体型は標準。医師の娘という以外、これといった取り柄がない、まさに平凡な娘。
生まれてから十年、運命の相手同士ではなく、恋愛結婚をした両親のもとで平和に暮らしている。
両親の仲は良く、互いを大切に思っているのが分かる。私にとって理想の夫婦だ。
私も二人のようにな愛結婚に憧れているが、欲を言えば、『運命の相手』と恋愛結婚をしたい。
私の運命の相手はどんな人だろう。友人たちとそんな話をしては、皆で想像して楽しむ。
同年代の友人の中には、すでにナンバーが現れた子もいる。手の甲、首筋など、現れたナンバーを嬉しそうに見せてくる。
私は一体、どこに現れるのだろう。期待と、少しばかりの不安を抱いていたある日、靴下をはいていると、母が声をあげた。
「ジャスティー、それ……。左足……」
「え?」
母の言う通り、いつの間にか左足の裏にナンバーが現れていた。
一体いつの間に……。場所なだけに、いつから現れていたのか分からない。
ナンバーが私にも現れたと喜んだものの、改めて見直し衝撃が走る。国文字が、生まれ育ったフレイブ王国でなかったから。
「うーん。やっぱりこの国文字は登録されていない。世界連合に加盟していないのか、これから新しく生まれる国なのか、別の理由なのか……。判断できないな」
本と私の足の裏を見比べていた父はそう言うと、持っていた本を閉じる。
「お父さん、その本は?」
「これかい? この本には世界中の多くの国が加盟している、世界連合が発行している本だよ。連合に加盟している国の国文字が一覧で載っているし、加盟していなくても国文字が判明している国も載っていて、運命のナンバーを調べるのに便利な本なんだ」
「見せて、見せて」
せがむ私に本を渡してくれる。
めくると、確かに国文字と国名が並んで記されていた。私も頑張って自分の足の裏をのぞき、一致する国文字がないか探してみる。しかし父の言う通り、私の足の裏に現れたナンバーの国文字は載っていなかった。
「この本に載っていない国って、沢山あるの?」
「そうだね。これを見てごらん」
父は私の持っていた本を取ると、最後の辺りのページを開く。そこには世界地図が描かれていた。
「この世界地図に色がついていない国があるだろう? それが国文字の分かっていない土地なんだ。そういう所は閉鎖的で他国と交流がなかったり、内乱が繰り返され安定していない国だったりするんだ。そういう国の国文字は、分からないことや安定していないことが多い」
確かに所色のない土地は、思ったより多くある。地図の三分の二は占めているように思われた。
「思ったより多いだろ」
私は素直に頷く。
「あたしの相手は、この色のついていない、どこか外国の人なんだね……。あたし、いつかその国に行って誰かと結婚して、お父さんやお母さんと離ればなれになるの……?」
十歳になったばかりの私は、両親と離れて暮らすと考えただけで悲しい気持ちになる。
「心配しなくても大丈夫。国文字が指している国が、どの国か分からないのに、行き様がないだろう? それに、必ず運命の相手と結婚しなければならない決まりじゃない。お父さんとお母さんだって、運命の相手同士ではないしね。
いいかい、ジャスティー。お父さんもお母さんも、お前が一番幸せになれる相手と結婚してほしいと願っている。それが運命の相手であろうとなかろうと、関係ない。お前を幸せにしてくれる人なら、その人との結婚に反対はしないよ」
頭を優しくなでてくれる父の言葉が嬉しく、私は抱きついた。
中には運命の相手との結婚に固執する家もある。特に身分の高い家ほど、顕著になる。
見知らぬ外国に行かなくてはならないのかと不安になっていた私は、父に運命の相手との結婚にこだわらなくていいと言ってもらえ、救われた気持ちになった。