戦闘開始
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「アコッセ副団長! また後ろから!」
迫ってくるのは、後方を任されていた五人ではない。ということは……。
ぎゅっと、手綱を握る手と、結ぶ口に力が入る。
倒されたにしても、生きていてほしい。そう願わずにいられない。
「第二班! 頼む! 先ほどリファレント殿下から連絡があったように、間もなくルーチェ様とジュビー様が応援に来られる! それまで持ちこたえろ! 隣町に転送され、こちらに向かってくるだろうが、お二人は空を飛ぶことが早い! きっとすぐに来られる!」
「はい!」
私を含む五人が返事をする。
今回敵と対する第二班に、私も連なっている。ここから先、アコッセさんに同行するのは、特に腕のたつ精鋭だ。帰り道の安全確保のため、彼らの出番は最後となっている。
早くルーチェが来てくれたら、戦況は大きく変わるはず。なにしろ彼女は、山の形を変えるほどの力を持つ、魔法使いなのだから。ルーチェなら一撃で、敵も全員倒せるかもしれない。
イデレータ王子の運命の相手である、ジュビー様は……。私は、魔法使いとしての彼女の実力を、知らない。だけどルーチェと一緒に来るからには、きっと彼女も、優秀な魔法使いに違いない。
心強い味方の到着を待ちわびながら、私はセドナーから降りる。それからすぐに、ここから離れるよう、セドナーのお尻を叩くと、弓を構える。
私たち第二班は、敵を迎え撃つため、二列に分かれる。前方三人は剣部隊。後方二人の私たちが、前列の後援を務める弓部隊。
見える敵の数は、およそ二十人。これで打ち止めなのか、後からもっと、彼らの仲間がやって来るのか……。
なんにせよ、多勢に無勢。不利な状況に変わりない。それでも逃げることなんて、できない。絶対に生きて帰る。そしてフェーデや皆と、また笑い合うんだ。
弓部隊全員に、魔法具は与えられている。人数こそ少ないが、私たちは魔法具という、大きな戦力を持っている。
敵の中に魔法使いがいるかもしれない。もし魔法で攻撃されても、私には皆から贈られた、あの短剣がある。短剣にはめられた石を使えば、魔法を防ぐこともできる。
すべては道具の使い方次第。
◇◇◇◇◇
ぎりぎりまで待ち、私たちは赤い矢尻の矢を、放つ。
弓が放たれた直後、馬に乗った敵は、左右二手に分かれる。隣に立つ団員が、ちっと舌打ちする。
「くそっ、空振りか!」
団員の言う通り、人気のない場所で、魔法の火が上がる。
「前の五人も、同じ魔法具を使っていたからな。学習されたか……」
火の矢は、残り四本。
これから敵の動きを気にしつつ、矢の残数にも注意しなければならない。難しいが、残数を間違えれば、命の危機にも繋がる。やるしかない。
「魔法が放たれる時間を考えると、少し後退した方がいいな」
「はい!」
背後を気にしつつ、前方を見据えながら私たち二人は、後退する。
「相手は魔法を打ってこないな……。魔法使いもいないし、魔法具も持っていないのかもしれない」
「でも、こちらの弓を、奪われたかもしれません」
「そうだな。とにかく魔法には、気をつけることだな」
左に分かれた部隊が、右部隊と合流しようとするのか、向きを変える。
部隊が私たちから見て、横向きになる時を狙い、私は風の矢を放つ。
想像以上に強い風の塊が敵を襲い、数頭の馬が転倒する。その拍子に落馬した敵に向かい、全員で駆けだす。
確実に敵を仕留める! 落馬した敵は、恰好の相手! 一人でも戦力を削ぐのが、私たちの役目!
森の中、馬が急に向きを変えるのは難しい。右に向かっている部隊は仕方なく真っ直ぐ進み、もう一つの部隊が、こちらに向かってくる。人の足より、馬の足の方が断然早い。敵を倒す前に、追いつかれてしまう! だけど……。
「食らえ!」
団員の放った水の矢が、足留めの役割を果たす。逃げようにも左右の木々に邪魔され、正面から浴びてしまったのだ。
最初に落馬した敵は起き上がると、すぐに私たちに向かってくる。
「うおおおおおおおお!」
誰よりも足の速い団員が、真っ先に敵に切りこんでいく。この団員の取柄は、足の速さだけではない。剣の腕もある!
刃と刃のぶつかる音が響き渡る中、他の二人も追いつくと剣を振り上げ、加勢する。
私たちは他の敵に注意を払わなくては! 右に向かっていた敵も方向転換し、こちらに向かってくる。
敵は四方に散らばり、私たちを囲い出そうとする。全方位に意識を向けなくてはならない。
完全に敵に囲まれる前に、逃げ道を作っておかなければ……。
一番人数の集中している敵の足元に向け、土の矢を放つ。土がどういう反応を示すのか、正直想像つかないが、地面と合わせればいい結果が生まれるかもしれない。
「わあぁ⁉」
炸裂した魔法は、地面を揺らしながら土を盛り上げ、壁を作るように伸びていく。それは横幅より高さのあるモノ。四角いまっ平らな面を伸ばし、成長を止める。
盛り上がっている間、まるで生きているように地面が動くので、馬がバランスを崩し、次々落馬していった。
思った以上の戦果を挙げられたが、これでは駄目だ。私たちもあの場所から、逃げることができなくなった。使いどころを誤った……。
「なるほど、土はそういう……」
効果を聞かされていなかった団員も、驚いている。
その時、視界の隅に弓を構える敵の姿が飛びこんできた。
あれは……。
矢尻に色がついているように見えた。
ただ色がついていると感じただけで、何色かまでは分からなかった。
私たちの魔法具が奪われたのか。そうだとすれば、どの矢で打ち返すべきか。
悩んでいる間に、敵の矢が放たれた。
お読み下さり、ありがとうございます。
明日(平成31年1月19日)は私用で忙しくなるので、更新が行えません。申し訳ありませんが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。




