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各々の出発

ブクマ登録、ありがとうございます。

 セドナーにまたがり、私はアコッセさんたちとルーチェの形跡に向かう。

 私を先頭に、一団は進む。護衛対象の二人は、半ばを走っている。

 ルーチェの形跡へ向かうには、森の中を走るしかない。木々に阻まれ、全力疾走は難しいが、それでも通常より速く馬を駆ける。

 目的地まで半分を過ぎた頃、後方から集団の馬が駆けてくる音が聞こえてきた。


「アコッセ副団長!」


 後方を走っていた団員が声をあげる。


「左斜め後方に!」


 斜め後ろに振り返れば、馬に乗った集団の姿が見えた。


「敵でしょうか」

「おそらくそうだろう、増援の連絡は届いていないからな。アローン団長の手から逃げてきた集団なのか、我々を狙っているのかは分からないが……。もし我々を狙っているのだとすれば、敵に目的を知られたのだろう。あの避難場所に滞在させる団員は、選んだはずだが……」


 私たちのことは、伝達で回されていない。それなのに知られたとすれば……。そういうことなのだろう。残念なことに、アコッセさんが信頼して選んだ人物の中に、裏切り者がいる。そうだとすれば、一体、誰が……。


 ひゅん!


 考えていると、放たれた矢が飛んできた。


「俺たちを狙っているぞ!」


 手に持った剣で矢を払いながら、私たちは事前に決めた通り、お互いの距離を空ける。的を絞れないようにするためだ。


 どすっ。


 目の前を通り過ぎた矢が、木の幹に刺さる。一瞬にして体温が下がった。危ない、もう少しで矢が当たっていた……。


「作戦通りだ! 第一班、後方へ!」

「はい!」


 第一班、全員の声が重なる。

 それを合図に、全員で前後の二手に分かれるよう、動く。後方は前方と距離を取り、敵を引きつけ、攻撃する役目があなる。まずは五人の団員が、馬の速度を落としていく。私たち前方は速度を落とすことなく、馬で駆ける。


 皆、どうか無事で……。


 後方を務める団員の無事を祈りながら、私たちは前を向き、走り続ける。


◇◇◇◇◇


「リファレント殿下、ただ今戻りました!」


 王を亡くし、制圧を完了したユレントロ王国を、夫と仲間たちに任せ、ルーチェは魔法具を使うと、一瞬でフレイブ王国に帰国した。

 ユレントロ王国に帝国が、兵を転送しようとしていたが、それを阻止するため迎え撃っていれば、やがて転送が行われなくなった。それは帝国がユレントロ王国を諦めたと意味するのか、別の作戦へ向け、一時的に息を潜めたのかは分からない。

 気がかりではあるものの、今が機会と、アローンたちに加勢するため、ルーチェは帰国を決めた。ユレントロ王国へ送るはずだった戦力を、帝国がフレイブ王国へ向ける可能性があるからだ。


「ルーチェ、報告を受けた。よく働いてくれた。帝国に送りこんだ密偵によると、彼の国は大きな被害を被ったので、ユレントロ王国を諦めたそうだ。とはいえ、万が一もあるので、連盟を組んだ国々が、兵をユレントロ王国に向けている。帝国にもその情報が伝わっている頃だろう」

「そうですか、諦めたのならば良かったです。アボッカセはどうなりました?」

「アローン団長が作戦を遂行中、奪還まで時間はかからないだろう。だが敵の企みは、アボッカセの侵略ではないと分かった」

「どういうことですか?」


 ルーチェは乱れた髪の毛を、慣れた手つきで一つにまとめ、後頭部の高い位置に結いながら尋ねる。


「南で未知の病が猛威を振るっている話を知っているだろう? その病気は、ホーベル王国の風土病だったのだ。その病を治す薬は、アボッカセ周辺と、その国向こうのホーベル王国の一部でしか生息できない、エルフィールという植物を原料としている。

 しかし我が国のエルフィールは、何年もかけ何者かに燃やされ、ほとんど残っていない。その犯人は、おそらくホーベル王国の者だろう。

 推測になるが、敵の企みは、まず、フレイブ王国にとって未知の病を広がらせる。薬に辿りついた頃には、我が国はエルフィールを失っており、途方に暮れる。そこにホーベル王国が、薬、もしくはエルフィールを交換に、無理難題の取引を持ち掛ける。もしくは人々が病に苦しむ中、侵略に乗りこむ算段。そんな所だろう」

「あの病気が……。そういうことでしたのね」


 まさか病まで関わっているとは、考えもしなかった。こればかりはルーチェも、敵ながらあっぱれと、悔しいが認めざるを得ない。

 同時にフレイブ王国を侵略するのに、執念も感じる。長い時をかけ、他国を奪いたい気持ちは、理解できないが。


「しかしそうなると、これからどうされるのですか? ホーベル王国と取引を行いますの?」

「いや。フェーデとジャスティーが、お前の形跡にエルフィールを植え替えていた。そこならエルフィールを燃やす何者かに、見つからないと考えたそうだ。そこに生えているものが薬に使えれば、問題ない」


 形跡があの山を指すと、すぐにルーチェにも分かる。

 まさかあの山に開けた穴が、そんなことに使われるとは。当時は父親たちに叱られたが、有効利用でき、なりよりだ。


「植え替えたのなら、問題ありませんね。良かったこと」

「それが……。なぜか異様に大きく育っているそうだ。変種したと考えていいと……。それが薬になるかは、試さないと分からない。それに……」


 はあ……。と、口に手を当て、大きく息を吐く兄の様子に、なにか不穏なものをルーチェは感じた。


「お兄様?」

「フェーデがな……。発熱を訴え、今は気を失っている。あの病に罹った可能性が、高いそうだ。今アコッセ副団長とジャスティーたちが、形跡のエルフィールを摘みに向かっている。その副団長たちは現在、集団に攻撃を受けている。

 ルーチェ。帰国早々申し訳ないが、すぐアボッカセへ向かってほしい」

「承知いたしました」


 ルーチェは令嬢ではなく、軍人として王家に忠誠を誓う礼を、リファレントに向ける。

 すぐに着替え転送部屋へ、足を進める。行き先はアボッカセの隣町。そう、マシェットの実父が守っている町だ。

 アボッカセの兵団基地内の転送部屋は、敵の襲撃とともに破壊されたので、直接アボッカセへ転移することはできない。隣町に転送されたら、すぐに魔法で飛んで移動し……。


「ルーチェお姉様」


 ルーチェを呼んだのは、エニュスだった。

 振り向くと、二人の少女が立っていた。

 エニュスはなぜか、お忍びで出かける時のような恰好で……。しかもスカートではなく、ズボンを着用している。その隣には、剣を下げたジュビーの姿が。こちらもなぜかドレスではなく、兵団員の服を着用している。


「二人とも、まさか……。駄目よ。城に残っていなさい」


 言われずとも、二人も同行する気なのだと分かる。


「私も、国民の皆を……。友だちを助けたい」

「イデレータ様にも、リファレント殿下にも、許可を得ています。もちろん陛下にも。アボッカセには今、圧倒的に魔法使いの数が足りないと聞いています。私はルーチェ様やフェーデ殿下と同じ、攻撃に特化した魔法使いです。きっとお役にたてます」

「魔法使いなら、他にもいるでしょう」


 強い口調で言うが、二人は退かない。


「私が転送部屋の道具を使えば、直接アボッカセに転移できる。隣町から飛ぶこともなく、それだけ魔力を温存できる。そうでしょう、お姉様」


 確かに空間魔法に長けるエニュスの力を用いれば、それが可能となる。しかし……。


「ジュビー……。確かにあなたは、攻撃魔法に特化しています。だけど……」

「ご安心ください。団長を務めたことがある祖父から、剣の手ほどきを受け、訓練していることは、ルーチェ様。あなたもご存知のはず」


 女性も立ち上がる時なのよ、嫌なことだけれどね……。そう言ったのは、自分だ。もちろん忘れていない。

 顔を天井に向け、目を閉じる。


「……エニュス、あなたも陛下の許可を得ていますか?」

「もちろん」


 二人が戦う覚悟を決めたのなら、自分が拒むことはできない。自分が彼女たちだったら、同じ行動に出ただろう。

 目を開き、二人を見据える。


「分かりました。直接アボッカセに向かえるのなら、時間も短縮され助かります。すぐに行きましょう!

 エニュス、フェーデの居場所は分かる? そこに移動できないかしら。あなたは到着次第、魔法を使い、防御に努めること。皆を一カ所に集めるなりし、魔力を無駄にせず、少しでも長く皆を守りなさい。

 ジュビー、あなたは私と一緒に、アコッセ副団長の助けに向かいます。

 私が敵ならば、アコッセ副団長たちを襲うことはもちろん、形跡に植え替えられたエルフィールも狙います。それを死守するのよ」


 転移前から二人に指示を出す。一刻も無駄にはできなかった。

お読み下さり、ありがとうございます。


やっと様々な人物が集結しつつあります。

まだまだ最終回まで長いですが、頑張ります。

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