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序 崩れゆく思い出
お願いです。と少女は言った。
お願い、なあに? どこかあどけない風に、少女の前に立つ少年が尋ねる。
どうかわたしを壊してください。
え? 少年はかわいらしく小首を傾げる。
どうかわたしを。
どうしてそんなこと言うの?
少女は寂しそうに笑った。
○
緑が影を落とす森の中。注連縄の巻かれた大木がそびえている。
訪れる人々は皆、その木に自らの願いを託す。
何だっていいんでしょ、すがることができれば。そう言って少年は人々を見下ろした。
「願われる側のことなんか何も考えてないんだから」