ひと時の安らぎ
カウント0と同時にディスオーダの両肩部から弾頭が射出される、数秒で炸裂し勢いよくキラキラするものを混じえたチャフが展開される。
俺は尚も移動を続けている、そろそろ山林から出て公道に出るころだろう。
地形を予測している俺の耳にインフィニティが呼びかけてくる。
「シーカーの光学迷彩の無力化を確認、これよりレーダーにて捕捉していく、現在、後方10mで距離を縮めつつ追跡してくる」
武者震いというか安心感が一つある、イブ達の方ではなくこちらに来てくれたことがありがたい。
とはいえ、ここで俺が倒れたら次はイブ達の方へ向かうのは簡単な推測ができる、だから負けられない。
「移動速度を少しずつ落とし、接触寸前で逆噴射、相手の出鼻をくじき一気に叩きのめす、どうだ?」
インフィニティに俺のプランを伝える。
「シーカーは対人の捕獲ネットを有しているが、メタルソルジャー用のは携帯していない、飛び道具も携行していないようだから有効な手段だろう」
インフィニティは続ける。
「逆噴射のタイミングは私がする、あとはサトキが仕留めろ、超音波ナイフは両腕の下腕部に内蔵されている、どちらでも良いから装甲を引きはがして奪え、こちらのパワーなら容易に装甲を剥がせる」
何気に俺を名前で呼んでくれたか。
「任せろ!」俺の覚悟と同時にディスオーダの速度が落ちる。
シーカーを表す光点がグンと近づいてくる。
「今だ!」インフィニティが発すると同時に急激なGが俺の体に襲い掛かる。だがめげていられない。
不意を突かれた格好のシーカーの下を潜り抜けるように背中を取った俺は、そのまま腰にしがみ付き、こちらの重さを利用し地面に叩きつける。
シーカーが体勢を整える前に相手の左上腕を軸に動きを封じる。そのまま下腕の装甲に力を加えて一気に装甲を剥ぐ。
インフィニティの言う通り、ナイフが格納されているのを目視すると同時にそれを奪い取った。
あとはこちらの思うままだった、各関節にナイフを突き立て完全に動きを封じ、インフィニティがコントロールを奪うために外部端子ケーブルを用いて、仲間にダミー信号を送るようにした。
追跡を継続し、俺たちの潜伏場所を探るというプログラムらしい。加えてブービートラップも用意した、仲間のシーカーが探しに来て有効範囲内に入った段階でジェネレーターを暴走、自爆するように仕向けた。
このAIを敵にして戦うとしたら、どれだけの被害が出るのか想像したくないな。
「なぁ、残りの2体はどうするんだ?それにイブ達とも早く合流しないと心配だ」
インフィニティはトラップのセッティングをしながらなのだろうか、少々間を置いて応えた。
「残りのシーカーはおそらくこの星の情報収集とカプセルの痕跡の確認が主目的なのだろう、こいつは作業を見た者たちを駆除する役割に回ったに過ぎないはずだ」
俺はその回答から連想したことを口にした。
「ということは、俺たちがイブとその関係者であるということは向こう側には伝わってはいないと理解していいのか?」
抑揚のない口調で返事が返ってくる。
「それはないだろう、サトキ達と接触した時、すでにこの星のテクノロジーでは作りえない装備としてディスーオーダを目撃されている。しかもその装備は彼等の探しているカプセルの反応と合致しているところまで分析、伝達をしているだろうからな」
確かにその連想は固くないな、なら尚のこと実際に戦闘をしたこのシーカーが早々に見つかることは避けないといけないな。
色々とまとめなければならないことが山積みとなってきた。
思案に暮れる俺の頭の中にインフィニティの声が被さってくる。
「この星の軍隊がお出ましのようだ、本格的に危機に直面したことを先の爆発で悟ったのだろう、お前も呼び出しされるのではないのか?」
俺も軍人だったことを思い出した。新米だけどな。
俺の優先順位はイブとレナの安全だ、インフィニティの本体曰く無事に下山して自宅に移動中とのことらしい、途中でレナも目を覚ましているので運転は彼女がしている。
ディスオーダも人型からフローターモードに戻して貰った、任意での変形は可能だが、しばらくはインフィニティの許可の下でのみに制限するようだ。
まずは安心した、次に俺の軍用電話を確認する。
履歴がヤバイことになっている。
丁度、着信があったので出てみれば、俺の自宅の付近での出来事だったので安否確認の電話であったことらしい。
何故か、俺に対する出動命令も出ていないとのことだ、軍は隠ぺいでもしようってのか、事は最大規模の災害に匹敵することになっている気がするが。
俺には引き続き休日を満喫していろ、との指示が出た程度で話は終わった。
なんだこの扱いは、ちなみに電話の相手は同僚のヒトミで現交際相手だ、そういえばこいつと喧嘩したことでイブに出会えたんだよな。