調査に向けて
タイヤの無くなったバイクの奇妙な乗り心地はすぐに慣れた。フロートシステムのお蔭で揺れは無くまさに滑るような感覚だ。
リニアモーターカーみたいなものかと思ってインフィニティに問いたが、「理屈は全く違うが、感覚的な意味におけるお前の理解としては十分だ」
こいつは俺に恨みでもあるのか?喧嘩腰以外の何物でもないぞ。
「なぁ別に性格まで変えろとは言わないが、せめて俺のことを「お前」ではなく名前で呼んでくれ、俺にはサトキという名前があるんだ。」
少々の間を置いてから「その案に関しては善処しよう」
正直驚いた、まさかこいつが俺の意見を取り入れることがあるなんて。とはいえイブと出会ってからまだ1日も経過していないんだよな。
等と考えながらも、付近の異変を探る眼は真剣だ。
俺の住むこのあたりはベッドタウンだから昼間はさほど騒がしくはない、都心部に比べれば導入されている最新技術も多くない、マザーアースの時代に合わせるなら西暦でいうところの2600年ほどの科学水準。
この星はマザーアースに非常によく似た形でテラフォーミングされたジェミニアースと呼ばれている。俺はこの星の軍人だ、新米だけどな。
惑星間の交流は近い範囲内では頻繁に行われているが、ワープ航法なる技術はまだ確立されておらず、現にこのジェミニアースとマザーアースとの交流は無い。余りにも遠すぎるのだ。
また、俺がそうであるように各星で軍隊を有しているのは星間戦争もあるからだ。ここ200年で大規模な星間戦争は3度起きた。同じ人類同士ではあるが、地球を離れることはできても、戦争という枷から離れることは出来なかったらしい。
科学技術が発展しても有人による戦争が続くのは、ハッキングを恐れてのことだ、過去の戦争は無人機同士での戦闘であったが、ある時、敵国の無人兵器に対してコード侵入をしプログラムを解析、改ざんすることが起きた。
結果は想像する通り、自国の無人兵器すべてが敵側に寝返ったのだ、そのあとの惨劇は語る必要もないだろう。その星はあっという間に征服された。
この辺りにはまだ異変が起きていないようだ、一旦帰ってから光の柱へと調査に行こう。幸いと今日は休日だしな。
現状における安心感からか、突然睡魔に襲われた。そういえば一睡もしていないんだったな。
「5分でも寝ておけ、私が代わりに家まで操縦してやる」
案外、こいつも気遣うことのできる良い奴なのかもな。
「すまない、その言葉に甘える」
確かにこの場所なら5分程度の距離だが、寝れることの解放感は大きい。
ガレージに着くと既にレナとイブの二人が待っていた。
インフィニティがタブレットの方から到着タイミングに合わせて二人を降ろしていたのだろう。
さすがに5分の睡眠だと中途半端なことこの上ない為か、足元はふらついている。軍人の癖に情けないなぁというレナの発言に対しインフィニティが「全くだ」と同調する。
こいつら意気投合してるし。イブはそのやり取りを見てクスッと笑う、まだ新米なんだから大目にみてくれ。
レナの作った昼食を食べながらこの後の予定を決めていく。
最初は俺一人で光の柱の許に行こうと主張したが、イブも一緒に行くと聞かなかった。加えてレナもオカルトマニアの血が騒ぐとかいう理由で、自己責任で付いてくることになった。
この間、インフィニティによる会話の介入は無く、ただ沈黙をしていた。反対では無いということのようだ。