異変
その異変は午前中に起こった。
イブが落ちた山の方角に光の柱が現れたという情報が軍の情報部から届いた。こう見えても一応軍人なのでな。
俺の部屋からでもその光の柱は目視できる、明らかにイブと関連性があるのはここにいる者なら予想は容易い。
今はこれといった被害が出ている様子は聞かないが、それもいつまで続くのかは不明だ。
或いはインフィニティあたりに聞けば答えてくれるのかもしれない。
「おぉ!お兄ちゃん!あの光の柱ってやっぱりイブちゃんと関係あるんだよね?」
レナは相変わらずの反応だ、昨夜遅くから一睡もせずに自分なりの推察を続けていたようだが、新しい餌が投入されたことで興奮が再燃したようだ。
そのイブはインフィニティの説明ののち眠そうにしていたので、普段は妹に貸しているベッドに寝かせている。
インフィニティはテーブルの上に置きっぱなしだが、イブが寝た後は沈黙を続けている。
こいつも寝ているのか、今のうちに叩き割ってやろうか。
とりあえず、イブが起きるまで付近の様子でも調べてみようとバイクを置いてあるガレージに行く、レナには昼食の準備を頼んでおいた。
俺の部屋はガレージを1階にした2階建ての部屋だ。屋内から直接ガレージに降りることのできる階段があるからさほどの苦労は感じない。
最初の異変はここで起きた、俺のバイクが無い。いや正確に表現すると俺のバイクであったらしきものが別の物体に変化していた。
2輪走行車であるはずのバイクが無輪になっている。タイヤどこ行った?
俺のバイクとしての名残はカラーリング程度な気がする。
呆気にとられている俺の耳に聞き慣れたくない声が、元バイクから聞こえた。
「そろそろ降りてくる頃かと思っていた、私は待ちくたびれたぞ。」
この明らかに上から目線の物言いはインフィニティのものだ。
キレそうになる感情を押し殺して俺はそれに問いた。
「まず、なんでお前がここにいるんだ、そして俺のバイクをどうした?」
それは、抑揚を変えることなく答えた。
「その二つの問いは一つの回答として理解できるだろう、お前のバイクは私がナノ技術を用いて戦闘用兵器に改造してやった、その際にタブレット端末と同期することによりお前のサポートをしてやれることができるわけだ。」
人の私物を勝手に弄っておいて尚も上から目線とか、どんな教育を受けてきたんだこいつは。
「ちょっとまて、このガレージにはそもそもバイクを改造するに必要な資材はないぞ、にも関わらず体積が増しているのはどういう理屈だ」
俺はもっともたる質問をぶつけた。
「簡単なことだ、イブがこの地へ降りてくる際に使用していたカプセルを使ったまでのことだ。」
当然、俺は腑に落ちない、あれは塵となって消滅したはずだ。
「所在を隠すためにナノレベルまで分解しただけで、破壊はしていない。それをお前のバイクを媒体として再構築しただけのことだ。」
理解はできるが平然と言われると何故か腹が立つ、しかしこいつと口論をしていても勝てる自信が無い。
「もういいや、とりあえず俺のバイクが媒体ってことは、少なくとも今まで通りには使うことができるんだろ?この辺りを軽く見回りたいんだ」
相変わらず抑揚のないトーンでインフィニティは「四の五の言わずに跨ってみろ、転ばない程度にサポートはしてやる」
本当に俺、こいつ嫌いだわ。