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インフィニティ

シャワーから上がったイブに今度は食事を与えたいのだが、生憎と俺は料理が苦手だった、正確にいえば他人に食べさせる料理など作ったことがないというのが正確かもしれない。

しょうがないので非常食のカップラーメンでも良いかと思い湯を沸かす。イブはリビングで端末タブレットを弄っているが後で俺も調べさせてもらおう。

湯が沸き始めたタイミングでルームベルが鳴った、浮遊ディスプレイで相手を確かめるとショートカットの若い女性が眉間に皺を寄せて睨んでいた。

妹のレナだ、何しにこんな深夜に来るんだ。さすがに若い女性をそのまま放置するわけにはいかないのでロックを外す。


ドアが開くと同時にドカドカと音を立てて近づいてくるのがわかる。

「おにーちゃん!今日は迎えに来てくれるって言ったでしょ!おかげでコンサート行けなかったんだからね!」

あぁそういえば、そんな約束していたなぁ、あまりにも頭に来てバイクを走らせていたら予定までぶっ飛んで行ったようだ。等とは口が裂けても言えない。

「あ、整備に手間取ってついさっき帰宅したばっかりなんだ」と白々しいことを言ってみる。

無論、それを信じる妹ではないが、あきらめたような顔になり「もういいよ、バカ、今度はちゃんと約束守ってよ」

良くできた妹で兄は感心するよ本当に。にしてもこんな時間に来て文句を言うほどのことでは無いはずだ。


「で、本当は何のようだ?」回りくどいのは嫌いなので単刀直入に聞く

「うん、なかなか寝付けなくて夜空を見上げていたら赤い光が見えたの、なんかすごい胸騒ぎがして誰かに話したかったんだけど、友達みんな寝ている時間だからお兄ちゃんに言いたかったの」

思い出した、こいつはオカルトマニアだったんだ、怪奇現象とかの話になるといつまでも俺を拘束する悪魔の一面をもっていた。

「でねでね!って、なんか女の人の気配がする」

そういうとリビングへのドア口を覗いたレナが絶句する声が微かに聞こえた。

「どゆことお兄ちゃん?」カクカクと首を動かしながら聞いてきた。

そもそも隠すつもりはないんだがな。

「その赤い光を追っかけた先で拾った子だ、名前はイブ」

「いや、そうじゃなくて、あ、うん」

なんか変な反応だが納得はしたのかな、そうだ、ここはひとつ恥の上塗りをしよう。

「すまん、レナ、彼女になんか食べ物作ってくれないか?話は食事をしながらしよう」

一瞬唖然としたレナの顔が印象的だった

「んもう、良いように使われてるなぁ」でも断らない妹を兄は慕っているぞ。言葉には出さないがな。


それまで端末に集中していたイブだが、料理の途中で匂いに反応したのか、キッチンにやってきてレナの動きを見ていた。

おもむろにレナの見よう見真似で手伝い始め、レナも関心しながら指示を出していった。

素晴らしいほどの意気投合っぷりを目の当たりにした。


料理が終わるころには早めの朝食の時間になっていた。

三人でテーブルを囲み、食事をしながらまずは俺の知る限りをレナに説明した。

次にイブに質問をしながら状況を整理しているのだが、ほとんどが解らないという回答で一蹴されてしまう。

最後に俺はイブが大切に持っているタブレットについて質問をしてみた。

イブは思い出したように語り始めた

「これは私のパートナー、ちゃんと私と対話をして色々と教えてくれる大切なもの」

俺もレナも今一、飲み込めない。

そんな思いが顔に出たのであろう。イブは特にあきれることなく続けた「インフィニティ、この人たちは大丈夫だから色々と説明してあげて」

イブがタブレットに話しかけるとタブレットはディスプレイ面から弱い光を発し音声でこういった。

「私はインフィニティ、イブのガーディアンにして情報端末」

俺もレナも思ったことは一緒だろう、タブレットごときがガーディアンってどうやって守るんだよ。と

インフィニティと名乗ったタブレットは予測していたのか

「情報端末だからこそできる護衛方法というものがある、加えて私は今のお前より優秀であることを断定できる」

あ、板に喧嘩売られたよね、今?

「インフィニティ、やめて、売り言葉に買い言葉だよ、今はあなたが知ることを教えてほしいの」

俺がキレる前にイブが仲裁に入った…人間と板の喧嘩に。

それを見ていたレナは腹を抱えて必死に笑いを堪えている。

しばしの沈黙のあとインフィニティは謝罪もなく淡々と説明をし始めた。

俺、こいつ苦手だわ


インフィニティの説明によれば、彼らは俺たちのいる世界とは時空も時間も超えたところの人類らしい、言えることは少なくとも俺たちの世界よりも未来の時間軸の存在であろうこと。

そしてある理由により追われている身で、途中ワームホールに入り込んだ挙句にこの世界へと舞い降り、俺に拾われたということだ。


ワームホール自体は今も解放された状態なので、彼等を追跡している存在も近いうちにこの世界にやってくるであろうというのだ。

追跡者はイブを捕え元の時空に戻るとされるが、文明を持っているこの世界も破壊の危機にさらされるであろうと警告した。

回避の方法は、彼等と時空間戦争をし勝利するか、戦闘が始まる前にワームホールを閉じるかの2択だという。前者においては科学技術的に於いても明らかに俺たちが不利であることは自明の理である。

回避策はワームホールを閉じることだけというのが正直なところだろう。


というかこんな話を俄かに信じられるのか?

レナに視線を向ければ真面目な顔して聞き入っている、いやSFな話に興奮しているのだろう、これだからオカルトマニアは。

追われ人のイブはというと、微かな笑顔を俺に向けながらじっと聞いていた、その顔の本当の意味は救いを求めているように見える、記憶を喪失しているのに彼女はインフィニティの語る全てを信じているようだ。


さて、どうしたものか、彼女に対して協力はしてやりたいのは本心だ。が確証が欲しい。

インフィニティが俺の思考が邪魔するように言う。「昨夜お前が見たカプセルが信じられないか?そして私が今のお前たちの技術力では作りえないことすらも理解できないか?見て、そして感じたことを受け入れることがそんなに怖く恥ずかしいことか?」

「まぁ良い、数時間もすればお前が欲する確証が現れる、私はそのための準備をすでに整えた。」

何とも上から目線な野郎だな、コンピュータの癖しやがって。


しかしどういうことだ、数時間後に確証が現れるだと。それって普通に考えれば危険が迫っているということの裏返しだろ。

コンピュータの予測なのか、それとも過去の事実を語っているだけとでもいうのか。

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