出会い
真夏の深夜3時、俺は一人、バイクで山道を疾駆していた
恋人とくだらないことで喧嘩をしたので発散をしているわけだ。
メーターはすでに時速100㎞を超えている。
ふと遠い空に目を向けると一筋の赤い線が光の矢のごとく一直線に突き進んでいる。
「隕石か?」
それにしては妙だ、音も衝撃波も感じることなく先にある山のほうに吸い込まれていった。
胸騒ぎがした、不吉な前兆かどうかはわからない、ただ其処に行かなければならない、本能がそう告げていた。さらにバイクを加速し、光の吸い込まれていった場所を目指した。
山は途中から徒歩での移動を余儀なくされた、バイクを降りて30分程の場所にそれはあった
直径50mほどの沼のほぼ中央に、先ほどとは違い、弱々しい赤い光を発する高さ5m、直径3mほどのカプセル状のものが半分ほど沈んだ状態で突き刺さっている。
俺は何も考えることなく沼に入りカプセルに近づいていく。
何故か近づくほどに心臓の鼓動が早くなる。
俺はこれが何かを知っている?
目の前のカプセルは特に熱を帯びていることもなく、むしろ冷気を感じる。
カプセルには溝が一定の間隔で走っており、そこから冷たい風を感じる。
中に何かあるのか?
カプセルにそっと手を触れるとやはりは表面は冷気を帯びており、この真夏においては心地良ささえ覚える。表面に触れたまま手を外周に沿って滑らせると何かが反応した。
弱い赤い発光現象から更に弱い緑色の発光現象に変化をし、カプセルに走る溝を境目にして一部のプレートがスライドをした。どうやらカプセルが開いたようだ。
怖ぶるでもなく俺はカプセルの中を確認する、弱い常光灯のような光に包まれながら一定のリズムを刻むように上下運動をする布が目に入る。俺はその布をゆっくりと捲っていく。
常光灯の影響でオレンジに見えるが美しい銀髪のロングヘアがまず目にはいった。
俺は一瞬時が止まったような感覚を覚えた。俺は彼女を知っている?
彼女と表現したが長髪だからといって女性とは限らない、いや明らかに彼女だという確信があった。
もう少し布を肌蹴させていく、そこには健やかに眠る女性の顔があった。
あまりにも美しく可愛げのある寝顔に俺はしばし時間を忘れて見つめていた。
どのくらい見ていただろうか、ふと女性が寝ながらにしてクシャミをした、なんとも可愛らしいクシャミだ。女性というよりも、まだ少女のあどけなさを残したその娘ははっとした顔で我に返ったようだ。
「ん?ここは…どこ、というかあなたは誰?」
娘は布で顔を隠すように俺に向かって静かに尋ねてきた、どうやら俺を危険視はしていないようなので若干の安堵を得た。
「それは俺が君に問いたいね」
「そもそもなんで君はこの星の言葉を知っている?」
彼女の質問に対し自分の疑問を交えてみた。
何故、俺はこの娘に対して警戒心を持たないんだ、いや、それは彼女にしても同様か。
「んぅ…解んない、どうやら記憶がなくなっちゃったみたい」
結構重要なことかと思うのだが、彼女においては重要度は低いようだ。
「あ、でも私、自分の名前だけは憶えてる。」
なんとも都合の良い記憶喪失だな。
「私はイブ」
それまでの口調とは異なり、自信に満ち溢れる眼をして力強く名乗った。
気づいた時には彼女を抱きしめていた。
彼女は何も言わずにそれに応えるように抱きしめ返してきた。
「なんだろう、こうしていると落ち着くのは、私はあなたを知っているの?」
俺と同じ感覚を彼女も感じていたようだ。
「解らない、初めて会うはずなのに何故か知っている気がするんだ」
素直な感情のままに答えた。
「うん」
彼女はそれだけを返した。