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世界最強の劣等生剣魔士  作者: 高橋創将
春の襲撃編
45/49

春の襲撃編 42 「あなただけは」

 ■■■


(今の揺れはなんだ……)


 職員室前。

 大きな揺れがあったものの、地震な感じではなかったしすぐに止まった。男は相変わらず苦しんでいる。

 だがそんなのに構っている暇はない。敵の頭を取れればそれでいいのだ。


 苦しんでいる男を放置し、職員室の扉に手をかける。


 ──何か嫌な予感がした。


 このまま開けてはならない、と一旦手を引く。

 恐らく何かトラップが仕掛けられているはずだ。そう確信する。



 一方、職員室内は作業している者達以外は戦闘態勢で待ち構えていた。廊下から戦闘の音が中まで聞こえてきているのだ。準備するに決まっている。


 当然の如く廊下組達は全滅するのはわかっていた。だからあえて扉にトラップをしかけておいた。

 開けたら爆発するというなんともシンプルなトラップだが、即興で出来るトラップがこれしかなかったので仕方がない。


 外の者が扉に手をかけた、と感じ取る。だが一行に開く気配はない。

 恐らく何かを察知して開けない方がいいと思ったのだろうか。


 お互い一言も喋らずに、そこに誰かいるとわかりながら扉越しに睨み合う。


「ねぇ君」


 藍が戦闘態勢の男1人に声かける。

 その男は自分なのか?と疑問に思っており、


「君だよ君」


「隊長!なんでしょうか!」


「──扉開けておいで♡」


 その場にいた全員が驚愕する。それもそのはず。爆発するとわかっていて扉を開けてこいと言うのだ。


「なんで驚いてるの?教師に行かせる手もあるけど、殺すなって言われてるし。君しかいないじゃん!」


 狂っている──と思わなかった。


「隊長!承知致しました!」


 先程までの驚愕した顔はどこに行ったのだろうか。周りの者達も何の不思議そうもなく戦闘態勢のままでいる。


 男がゆっくりと歩いていき、扉に手をかける。

 そして躊躇なく扉を開け──爆発と共に男は死んだ。


 その場にいる全員何ともないような顔、当然のような顔で戦闘態勢を取っている。



 さすがに向こう側も死んではいないだろうが、多少なりとも怪我は負っているだろうと藍は考えていた。そもそも学校側の人間は殺さないようにと言われている。


 作戦当初、生徒を殺すことを目的としていたが、作戦直前になって変更になったのだ。


 なんで殺してはダメなのか知らないが、そんなことはどうでも良かった。快楽を求める、ただそれだけ。



 ──人の命をこんなにも手駒のように捨てれる快感は最高である。



 そんなことをフと今思い出して少し顔がにやけてしまう。


 ──笛が1つ鳴る。


 瞬間、藍の目の前にいた男達の胴と脚の間から血飛沫が舞う。


「あれぇ♡これはすごい当たりを引いちゃったかなぁ♡」


 ゆっくりと、その男は歩いてきた。


「……君がこの事件の首謀者かな?」


 藍の前方約5メートル。


「んー……首謀者じゃないけど。まぁ似たような感じ?」


「まぁそうか。こんな小学生みたいな奴が首謀者なわけないか」


「んふふ♡ぶっ殺す♡」


 先に動いたのはライトであった。


「──剣術、剣扇舞─乱れざ…く…ら……っ!?」


 驚愕した顔のまま固まるライト。


 剣術『剣扇舞─乱れ桜─』は攻撃が速すぎるゆえ、技名を言っている最後の方には斬り終わっているはず──だった。


 発動しなかったわけではない。魔法ではないから発動するしないとかはない。確かにその技を使った。そして攻撃も当たった。


 だが──


「──どうかした?」


 全くの無傷であった。

 確かに当てたはずだ。はずなのに。


「その場で突っ立ってどうしたの?なんか変な言葉聞こえた気がするけど!」


「……貴様、何をした」


「貴様って酷いなぁ。女の子なんだから可愛く呼んでよ。って名前言ってなかった!そして聞いてもなかった!」


「そんなことはどうでもいい。名乗る必要も──剣城ライト──ない」


「へぇ剣城ライトっていうんだ。あの剣城家の次期当主じゃん!」


「何故俺の名を知っている!」


 自分で名乗っただろ、と誰もツッコミはしない。なぜなら自分で名乗ってはいたが、それに本人は気付いていない。


 名前を言う直前、一瞬魂が抜けたような目をし、名乗った後すぐさま元に戻っていた。

 本人は名乗ったこと等知る由もない。──何故なら藍が無意識に言わせたのだから──。


「私は高畑藍って言うの!よろしくね!」


(クソっ完全にペースを持ってかれている。落ち着いてペースを戻さなければ……)


「あれれーせっかく女の子が名乗ったのに無視するなんてひどーい!」


「生憎貴様の名前など知る必要もない。どうせここで死ぬのだからな」


 すぐに剣を構えて藍に向かって斬りかかる。

 剣先が藍に触れる直前。

 ピタリとライトの動きが止まった。


 静かに剣をしまい始めた。

 そしてゆっくり元の位置に戻り、また剣を抜く。


 藍に向けて振った剣と同じ動きを真似してその場でとどまる。


「……さぁ振ってごらん?」


 その一言と共に、ライトは続きの如く剣を振る。


「なっ……どういうことだ……」


(俺はさっき確実に奴の間合いに入って剣を振ったはずだがっ……!)


 位置が変わっていないことに驚く。

『剣扇舞』を使ったならこの場での剣振りに納得が行くが、今自分自身でやろうとしたのはそれを使わず直接斬ることだった。


「……君には私を殺すことはできないよ♡」


 いや、そんなことはないはずだ。考えるんだ、と自分自身に言い聞かせ落ち着かせる。


 最初の攻撃が何故効かなかったのか、何故その場で剣を振っていたのか。


 考えろ。考えるんだ。

 俺は剣城家の長男。

 こんな偽剣魔士・・・・に後れを取るはずが無い。


 だから考えるんd──


 ──視界が明るくなった。


 音もなく。


 陰もなく。


 この職員室──否、この階全てが真っ二つになり、上が丸々無くなっていた。頭上は空。


 だが、すぐに大きな陰が現れる。


「何……ッ!」


 上を見上げると、大きな塊──校舎が降ってくる。


 こいつの仕業かっ!と正面にいた敵を見る。

 だが、その敵──藍も驚愕の表情をしていた。


 じゃあ誰の仕業──と思った時には、轟音と衝撃波が彼らを襲った。



「ゴホッゴホッ!」


 衝撃波で転倒していたライトは、口に入った砂埃で席をしながら立ち上がった。

 太陽の日差しが当たっているということは、ここには落ちていないようだ。


 フと周りを見回してみると、他の者達も衝撃波で倒れていた──藍を除いて。


「あーびっくりしたっ。さすがにやり過ぎじゃないのっ!?」


 だが、傷は負っていた。額や足から血が流れている。しかし痛んでいる様子は全くない。


 独り言のようだが、こちらではなく校舎が落ちた方を見ていた。


 校庭が瓦礫まみれになり、校舎は原型を留めていなかった。散乱する机や椅子が目に入る。


 そしてその真上に浮いている者も1人。


(……誰だ)


 と、その者を見ていたら、その目の前に男──刈星蒼翔が現れる。全身ボロボロで血塗れになっている。

 意識は無さそうだ。


「──起きるんだ蒼翔」


 お面を付けた者がそういうと、蒼翔が吹き飛ばされたかのように瓦礫の中に落ちていく。


「……き……さ……ま……ッ……」


 その衝撃で目が覚めたらしい。


「か、かっこいい……」


 そんな中、隣から乙女の声が聞こえてきた。

 藍だ。


「刈星蒼翔……いい表情……あぁ……興奮する……もっと……もっと痛む顔、苦しい顔、絶望する顔がみたい……」


 彼女は瓦礫の中、死にそうになりながらも動く蒼翔に興奮していた。

 ライトには「かっこいい」発言以外何を言っているのか聞き取れないくらい小さな声であった。



「あぁ……大好き……」



(──蒼翔♡)



 ■■■


「起きるんだ蒼翔」


「き……さ……ま……ッ!」


(んーやり過ぎたかな)


 持続時間の限界と怪我具合ではもう意識を失っててもおかしくないのだが。

 それにしても持続時間が短すぎる。これでは当初の目的が達成されない。


「……君はこんなところで倒れている場合ではないだろう?大好きなお姉ちゃんがまだ助かってないのだから──」


「……ッ!」


 瞬間、彼の鳩尾に蒼翔の拳がめり込んでいた。


「ゲハッ……」


 そのまま回し蹴りをくらい、立場が逆転した。

 瓦礫に埋もれてるのが《消える暗殺者》で、宙に浮いているのが蒼翔。


「は、速いねぇ……」


(僕の力で動きを把握出来ない速さ──)


「──ヤバっ!」


 突如彼の地面に魔法陣が現れる。それを察した彼はすぐ様瞬間移動しようとするが。


 発動された魔法は『太陽柱サンピラー』。その名の通り太陽の柱。魔法における『太陽柱』は、太陽の熱をそのまま柱にするもの。つまり、魔法陣から空をつきぬけている光の柱は、太陽光、太陽そのものである。しかし、物理学としてはどうかとは思うのだが、その魔法陣の上でしか効果、太陽の熱等の影響を受けない。魔法陣の外に出てしまえば、それはただの『太陽柱たいようちゅう』。


『太陽柱』(サンピラー)の中にいた者は、跡形もなく消え去る。それは当然といえば当然と言えるのだが。


 この魔法は禁止魔法にされており、超高等魔法より上のランクの魔法に分類される。


 瞬間移動が少し間に合わず、身体が半身焼けていた。焼けるだけで済んでいたのは不幸中の幸いであろう。


「……『太陽柱』を使えるだけじゃなくてそれを操れるとは流石だねぇ蒼翔……」


 瞬間移動したはいいものの、衝撃と痛みで地面に倒れている。もはや横に移動しただけであるが。


 この魔法が禁止魔法にされているのには効果だけでは無い。この魔法、『太陽柱』の範囲は術者が決めることが出来ないのだ。よって、範囲(ここでは魔法陣の大きさ)はランダムになる。どこまで巻き込むのか分からない。そして巻き込もうものなら、跡形もなく消え去る。これが禁止魔法『太陽柱』。


 今回、魔法陣の大きさは《消える暗殺者》を覆う程度。これが偶然とは言えない。相手が刈星蒼翔だからこそ、これは偶然ではなく意図的なことだと言える。


 彼の声は蒼翔には届いていないようだ。彼は意識があるのか分からない。いや、多分ないであろう。


(この状態での暴走はかなりやばい……だが『太陽柱』を操れる程度には意識があるのか?それともまた奴の仕業なのか……とにかく状況が変わった……早く撤退しないと)


「……逃げるな……!」


『瞬間移動』でその場を立ち去ろうとした矢先。


「きさ──あなた(・・・)は……あなただけはここで仕留める……ッ!」


(まさか──あお──)


「ッ!」


 もう一度『太陽柱』が放たれる。

 運良く範囲外に出れたが、もう片方の手先が消えてしまった。


 範囲外に出た瞬間、『瞬間移動』で蒼翔と同じ高さの位置まで移動する。


 改めて蒼翔の様子を見る。


 呼吸も荒くなく、冷静な立たずまい。そして眼が蒼く光っている。


 これは間違いなく覚醒蒼翔の上を行く存在。

 だがこれは先程、持続時間が全然なく終わったはずだ。

 考えられるとしたら第三者からの強制。

 いやもはや1人しかやれる人、やる人はいないのだが。


 この状況はマズイ。先の戦闘は短期間だと踏んでいたから余裕カマしていたが、今回はどのくらいこの状態が続くかわからない。

 もう既に目的は達成しているし、なんなら目的以上の収穫があった。後は自分で仕込んだ『アルサ』と『バダリスダン』達が思う存分暴れてくれればそれでいい。もうここに留まる必要は無くなった。だから離脱しなければ。


 もう両手がない。さっさと異能力で生えなおせばいいのだが、もうそこまで頭が回っていない。


(とりあえず遠くに逃げる──)


 異能力を使い学校から10km程離れたところに避難する。ここは先程蒼翔達が通ってきた森林の上。だが──


「──逃げるな、と言ったでしょう」


 ──目の前に蒼翔が現れたのだ。


「どうしてっ……!」


「あなたは私から逃げられない。あなただけは──」



 ──【そこまでだ2人共(・・・)



 2人(・・)の脳内に響き渡る声。それと同時にリアルの耳の方からも聞こえてくる声。


 2人(・・)を囲むように十人程度のお福さんのお面を被った《消える暗殺者》が現れる。


「ど、どういう──」


【さぁ一旦ここは引こう。君の目的は達成したのだろう?念擂々(ねんらいらい)?】


「《消える暗殺者》!どういうこと──」


 ──【君は少々僕の邪魔をし過ぎだ──「──」?】


 リアルと脳内で再生されたその言葉により、蒼翔の瞳から光が消え、そのまま地上へと落下していく。



 残されたお面を被った者達。全員見た目は一緒だ。


「わざわざ迎えに来てくれたのか僕」


 その声は少し怯えていて。


【うん。そーだね。少しやりすぎな君に説教をしにね】


 その声は少し怒りが混じっていて。


「へ、へぇ……僕としては結構期待通りに事が進んでいると思うけど?」


 その声には少し嫌味が混じっていて。


【──さっき蒼翔が僕に会いに来た。会いに来れないはずなのにねぇ?】


「なっ……や、やはりあいつが──」


 瞬間、囲んでいた者達から剣を突きつけられる。

 両手がないこの状況。何も出来ない。


【──君の失態だよ?念擂々くん】


「ぐっ……すまない。注意不足だった」


【──うんうん。わかればいいんだよわかれば】


 徐々に剣がしまわれていく。


【まぁ君のおかげで物語がだいぶ進んだよ。得られた情報も多いし。多少の設定誤差は不問にしようか】


「少し欲張りすぎたところもあるが……」


【まぁまぁそれはそれで退屈しないからいいよ。しかしこれだと予定通りにはいかなくなったね】


「この先のこともしっかり考えてあるよ僕」


【そうか。なら君に任せよう。運良く頭のいい君に取り憑いて良かったよ】


「……ッ」


【じゃあこの後もよろしくね。期待しているよ】


 そう言うのと同時に、周りにいた者達が次々と消えていく。そして全員消えるタイミングで、失った両腕が復活する。


「……ふっ……これも計画通りだよとおし──」


 念擂々はその場から消えた。

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