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世界最強の劣等生剣魔士  作者: 高橋創将
春の襲撃編
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春の襲撃編 36 「あの人の標的らしい」

 ■■■


 蒼翔が目を開くと、目の前には光喜、光優、咲綺。隣には絢瞳が立っていた。


「兄貴……絢瞳ちゃん……」


 聞き覚えのあるセリフ、見覚えのある光景。


 そう、ここは暴走していた蒼翔を絢瞳のキスで救った場所だ。

 本来の道ならここで彼は、覚醒状態の蒼翔になるはずだが、今はそんな感じがしない。普段の彼になっている。


「蒼翔殿……?」


 いつまでたっても口を開かない蒼翔に疑問を抱いたのか、光優が口を開く。

 すぐさま今の状況を理解してこの場をどうしようか考える。


 この場合はどうするべきなのか、蒼翔にはわからない。


 しかし、もし最初の世界の道と一緒ならば、この後学校に向かい、その途中で《剣魔士特別自衛隊》と交戦することになる。


 それを避けるべきか、はたまたその道通りに進むべきなのか。


 こんな感じで未来に選択肢ができてしまうのは正直嫌気がさす。心底《消える暗殺者》を恨む。


「皆さん無事ですか」


 咄嗟に出た言葉がこれだった。

 まぁ正直、答えを聞くまでもなく皆がボロボロなのだが。


「うるせぇ劣等生如きが…」


 1番最初に答えたのは思いもよらない咲綺だった。

 放った言葉自体は威勢がいいが、声と見た目がボロボロで中身の威勢が伝わってこない。


 光喜が心配の声かけるも同じ言葉を繰り返すだけでまともな答えは返ってこない。


「蒼翔殿。《消える暗殺者》と何があったんですか?」


 蒼翔はしばしば返答に悩む。


 それは勿論、これからどう動けば先程みたいに世界を滅ぼしかねないような事態にならないように、緋里を助け出すのかを悩んでいるから。


 結局緋里を助けに行こうにも、途中で《剣魔士特別自衛隊》のほとんどを乗せたルビーレッドが待ち構えている。


 蒼翔1人ならば、覚醒状態前の蒼翔の本来の力でも対応はできる。


 そうか、とここで思い付く。


「ここから先は自分が1人で行きます。皆さんありがとうございました」


 そう言い放ち、蒼翔は他の者が口を開く間も無くその場を跳び去った。



 その場にいた者達は困惑していた。


「天童兵長……」


「綺瞳ちゃんにあんなことしておいて兄貴は……」


「くっそ!あのクソ劣等生!俺だってミイナ先生のこと助け……に……」


 と、言葉を最後まで発せれずにその場に倒れ込んだ。


 すぐさま全員が近くに寄る。

 光優が息はしていることを確認する。

 どうやら怪我と疲労で意識を失っているだけみたいだ。

 立っていたのも不思議なくらいだった。


「天童兵長どうしますか?蒼翔君を1人で行かせるのも……」


 光喜が咲綺の手当をしている最中、綺瞳は光優にこれからどうするべきか問う。


 しかし、行くなら先程彼が跳んでいく時にすぐさまついていけばよかった。その時に動かなかったということは、少しでも行きたくないという心情があったということだ。

 そんな中途半端じゃ……いや中途半端じゃなくても、そもそも足でまといになるだけだろう。


 だが、しばらく黙り込んでから光優はただこう言った。


「──ミーは玄翔様・・・の護衛を務める」


 ■■■


 蒼翔は学校目掛けて跳んでいた。

 飛んでいるのではなく跳んでいる。まぁ飛んでいる時間は長いが。


 もうどれくらいだろうか。前の世界ではもう既に衝突している場所には来ているはず。


(紅弩……)


 恐らく紅弩の仕業だろう。

 もう既に近くにいると思われる。


 蒼翔の異能力は『想力分子』。想力分子を操る能力だ。それは空中を漂っている想力分子も例外ではない。

 つまりこの世の想力分子に触れているものを感知できるというわけだ。


 しかしそれはある程度の個体の大きさであり、物質であるということ。

 紅弩の異能力により、原子レベルに小さくされたら容易に感知できるものではない。


 原子レベルの大きさのものにまで感知していたら、蒼翔の自我はぶっ壊れるだろう。

 だから通常は無意識ながらもある程度の個体からしか感知していない。


 彼は一旦その場で空中を漂う。


 ──目を閉じ感覚を澄ませる。


 ──彼を中心に広がっていく、想力分子から感じ取る世界の形。


 しかし数メートル及ぶところで様々な感覚を体験し、耐えきれなくなりすぐさまやめる。


(これを常時、広範囲を感知し続けているのが覚醒状態か……)


 己の圧倒的な力に幻滅する。


 狭い範囲だが、紅弩をルビーレッドを感知することができなかった。


 と、右数十メートル先で、何やら物体が大きくなっていく感知をした。間違いなくルビーレッドだ。

 その感知をした瞬間、蒼翔目掛けてレーザーが放たれた。


 大爆発を起こし、辺り一帯を煙幕で覆うのと同時、轟音と共に爆風が木々を揺らしていく。


 数十秒後、煙幕から姿を現した両者が睨み合う。


「不意の先制攻撃とは趣味が悪いな紅弩」


「考えたの私なんだけど」


 スピーカー越しに聞こえてくるのは遼光の声。


「やってんの俺だから実際俺だろクソアマ」


「あんたちょっとこっち来なさい!!!」


「今任務中だろうが。軍人として任務を果たせ。このクソアマ」


「わかってるわよ!でもね!でもね!クソアマは余計だと思うのだけど!ねぇ!クソアマは余計だとおも──」


 急に音が何も聞こえなくなった。

 《剣魔士特別自衛隊》は相変わらずであった。


 しかし今はそんなことはどうでもいい。すぐさまここを乗り越えて、緋里のとこに行かなければならない。


 多少強引にでもここを突破するしかない。


 幸運にもルビーレッドの位置は進行方向からズレている。このまま魔法を使って突破するのが1番いい。


 空中に留まるのにも魔法を使ってはいるが、『想力分子』を操る彼にとってはこのまま進行方向に自分自身を飛ばす魔法も併用して発動できる。


 自分自身を吹き飛ばす魔法を発動させようとしたその時。


「待ちなさい蒼翔」


 タイミングを見計らったかのように遼光の声が聞こえてきた。

 仕方が無いので魔法の発動を取り消し、その場に留まる。


「なんでしょうか隊長」


「ここから先に行くならこの艦体を修理費があんまかからないくらいに壊してから行きなさい」


 スピーカーから「隊長!?」という声が聞こえてくる。

 蒼翔は察しがいいのでなんでその発言をしたのか理解した。


「隊長。いえ、今は遼光さんの方がいいですか。残念ながら今は遼光さんの後始末に構う余裕はありません。失礼します」


 予め発動待機させておいた魔法を発動させる。

 瞬発的に進行方向へと消える蒼翔。


 彼が通る数秒後に遅れて風が木々を襲う。


 だが、数キロ経ったところで突如背中に現れた拳に地面に叩きつけられる。

 魔法で速度上昇と拳での下方向への力が加わり、とんでもない威力で地面に叩きつけられた。普通の人間なら死んでいるところだ。


 一瞬気を失いかけたがなんとか意識を保ち、すぐさま体を捻らせ拳を右手で殴り飛ばす。


 飛ばされたのは拳のみ。

 もちろんそのままの意味で、飛ばされ転がるのは拳のみ。他には何も無い。


 一見するとただの恐怖映像だが。


「お前か……紅弩」


「ご名答」


 拳が段々と小さくなり、それと同時に身体が姿を現す。


「よぉ久しぶりだなぁ……蒼翔?」


 ■■■


 ただ1人。ただ1人だけ空を飛んでいる者がいた。

 正真正銘飛んでいる。


 人より大きい金色の剣にまたがり空を飛ぶ者。


 ──天童光優だ。


 エクスカリバー第8形態。

 浮遊する大人の男より一回り大きい剣。持ち主─光優─の意思に従い動く。大きさは自由に変えれる。


 速度は決して遅いわけではない。しかし全く蒼翔の姿やルビーレッドの姿は見えない。彼の速度が速すぎるのだ。


 前に意識を集中させ、ただ前に進むこと数分。


 何か小さな点が見えたと思うと、それがだんだんと大きく形が見えてくる。

 恐らく《剣魔士特別自衛隊》のルビーレッドだろうと察した彼はそこに蒼翔がいるだろうと推測する。外れているのだが彼はそんなことは知らず突っ込んでいく。


 戦闘らしきものが行われていないことに気付くと、スピードを落としながら近付き、約200m付近で停止する。


 光優はエクスカリバーに乗っているだけであって、蒼翔のように魔法で浮いているわけではない。原理的には魔法の絨毯のようなものだ。まぁ光優の場合魔法で浮くことも可能だが。


 あえてここで剣を構えて魔法に切り替えないのは、相手に戦わないという意志を伝えるためである。


 彼の目的は蒼翔を守ること。今現在目の前にあるルビーレッドは蒼翔に危害を加えているとは思っていない。そもそも蒼翔が近くにいないため逃げられたのだろうと思っている。


「あら光優じゃない」


 と、光優が停止して間もなく艦隊から声が聞こえてくる。


「いやーやけに重装備だねぇ」


「……何しに来たの?」


「そりゃあもちろん玄翔様の護衛に」


「玄翔?玄翔なら今は休暇で《剣魔士特別自衛隊》の本部にいるわよ?」


「ほう……」


 そこで察す。

 どうやら意地でもこの騒動に刀塚玄翔が関与しているとしたくないのだろう。まぁ仕方がない。無理もないだろう。


「失礼。ミーは刈星蒼翔殿の護衛でした」


「へー。それはつまり、テロリスト集団『アルサ』を裏で操り、今事件の首謀者刈星蒼翔のお仲間さんということでよろしいかしら?」


「……」


 どうやら防衛省は『刈星蒼翔』という存在を消したいらしい。


 そしてまた、何故ここで『アルサ』の名前が出てきたのか。今事件とは何なのか。その事件に『アルサ』がどう絡んでいるのか。

 それは光優は知らないことである。


「そう。だと言ったら?」


 だがそんな知らないことをここで細かく問うようなことはしない。


「そりゃあもちろん捕まえて警察なり検察なりに差し出すわよ」


 その発言により、どうやら自衛隊だけで収めるつもりはないと理解する。警察、検察等を出してくるということは。


 これは自衛隊トップではなく──


(中村大臣か……)


 もっと上の防衛省大臣が今回の件の首謀者だという訳だ。

 そうとなれば全ての辻褄が合う。


 あぁそうか、と納得して微笑が漏れる。


「遼光。どうやら君もミーもあの人の標的らしい」


「何を言ってるの?」


「そのままの意味さ。今起きてること全てがあの人の筋書き通りということさ。今ここで君とミーが相対しているのもね」


「それはつまり──」


「そう。ミー達はもう既に詰んでいる。そこで1つ君に提案がある──」

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