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世界最強の劣等生剣魔士  作者: 高橋創将
春の襲撃編
32/49

春の襲撃編 31 「馬鹿みたい」

 ■■■


 辺りは隕石の落下と、今繰り広げられている戦闘で焼け野原と化していた。緑で生い茂っていた森はどこへ行ったのだろうか。


 そんな中、地面にぽっかりと開いた穴の奥に、ただ空を見上げるしかない者達がいた。


「綺瞳ちゃん大丈夫?」


「う、うん、大丈夫だよ。……ありがとう」


 先程は目の前で殺されそうになった綺瞳だ。強く押さえつけられ、かなり傷を負ったに違いない。そう思って声をかけだが、案外大丈夫そうだ。


 綺瞳は自分の無力さに絶望していた。


 ──どうして私はただ戦闘を見ていることしかできなかったのか。


 確かに二刀流家はそもそも戦闘特化の家系ではない。でも、助けたい人を助けることすらできなかった。それは家系云々の話ではない。


 《剣魔士》として、人として、助けることが出来ないなんて、とても無力だ。

 ましてやそれが好きな人なら尚更だ。


 ──好きな人を助けれない私なんて……無力だ──


 そう。私は無力だ。どれだけ頑張ろうとも、所詮は二刀流家。人を助けることなんてできない。


 無力無力。無力だ。無力なんだ。無力だよ。無力なんだよ。


 綺瞳は絶望していた。


「綺瞳ちゃん」


「……」


「僕達は劣等生だ」


 急な発言に綺瞳は耳を疑った。いや、よく考えれば当たり前の発言なのだが、この状況での急の発言はよくわからない。


「僕は松田家の跡取りだ。父さんは短剣の使い手だ。短剣だけじゃなく魔法も使えて、学校は優等生卒業だ。でも……僕は劣等生だ。魔法も言うほど使えない。短剣に関しては父親譲りだけどね……でも劣等生には変わりない」


 急な話だけれど、綺瞳は耳を貸していた。


「綺瞳ちゃんはどう思う?優等生の家系の唯一の跡取りが劣等生なんだよ……」


「私の家系は劣等生だからよくわからない……」


「アハハ……そうだよね」


 この発言を言ったあと後悔するが、言ってしまったものはしょうがない。


「それでプレッシャーとか嫌になって、あんなグレたフリをしてたんだ……」


「そう……」


「でもね、『無力』だと思ったことは無いよ」


「……」


「だって僕にはこの『短剣』がある」


『短剣』という言葉と共に、光喜の手に短剣が現れる。


「確かに魔法は使えない。短剣も対して強くない。ましてやあの世界最強様々には歯が立たない」


 そう言って光喜は空を見上げる。そこには《消える暗殺者》と蒼翔が向かい合っていた。無論、見ているのは蒼翔の方だ。


「でもね、さっきは少し隙を作れたんだよ。こんな弱い短剣でも、隙を作って兄貴に攻撃させることが出来た。例え、直接攻撃を当てれない、ダメージを与えれなかったとしても、兄貴の役に立った」


 まぁ正直あまり効果はなかったが。


「綺瞳ちゃんは自分は無力だと思う?何も役に立ってないと思う?」


 唐突な質問に少し口がこもる。


「……私は無力だよ。蒼翔の何の役にも立たなかった。ただ迷惑をかけただけだった」


「そうかな?僕はそうに思えない」


「何を言って──」


「──だって、まだ知り合ったばっかでしょ?」


「……」


「僕も綺瞳ちゃんも兄貴も、あそこの変人も……まだ出会ってそんなに日が経ってない。今は無力かもしれない。いや、僕も綺瞳ちゃんも無力だ」


「……!」


「でも……でも、だからなんだって言うんだ。今無力だからなんだ。これから役に立てばいい」


「……でも私は攻撃手段なんて……」


「誰も攻撃で助けてくれなんて言ってないだろう?それに、攻撃に関しては兄貴に必要無いと思うな」


「だったらもう私は──」


「綺瞳ちゃんにしか出来ないことがあるでしょ?」


「私にしか……できないこと……?」


「情報提供……戦闘において有利となるのは、相手の攻撃手段をどれだけ知っているか、だ。その相手の情報をあの兄貴に教えてみろ。もう無敵だぜ?」


 蒼翔だって初めて見る攻撃には少しばかり対処が遅れることがある。攻撃することに関しては世界最強だ。でも見たことない攻撃が来た時、必ず対処できるかと言うとそういうわけではない。


 知らない攻撃も事前に知ることが出来たら、それなりの対応、対処ができる。そしたらもう防御も完璧だ。もはや攻撃も防御も完璧なら負ける相手はいない。


「二刀流家は情報収集のスペシャリストだ。まぁ僕もそうだけど、あまり家系に頼るのは好きじゃない」


「う、うん……」


「でも……守りたいものの為にそんなプライドあったら邪魔なだけだよ。守りたいものを守りたい時に守れなくなる。それが直接守ることがなかったとしてもね」


「……」


「僕は攻撃しかしらない。でも綺瞳ちゃん。君にはサポートできる力がある。これは君にしか出来ないことだ」


「私にしか……」


「そう、綺瞳ちゃんにしかできない。だから、今は考え過ぎないで。考えるにはまだ早いよ」


「そうかな……」


「そうそう。僕みたいに何も考えない方が気楽だよ」


 そう言いながら短剣を持って、剣を振る。


 その姿はとても残念だった。剣の基本がなってない。


 でもなんでだろう。


 何故か──


「馬鹿みたい」


「なっ!?」


「うううん。馬鹿みたい」


「なんで2回言ったかな!?」


 綺瞳が笑った。

 どうやら普段の感じに戻った様子だ。

 光喜の言葉は届いただろうか。


 まぁ届いた届いてないにしろ、今は絶望してなくてよかった。そう、思うしかない。


(──そうだよね。まだ色々考えるには早すぎたかな)


 綺瞳の瞳には蒼翔かれしか映ってなかった。


「ま、今出来ることはここで兄貴の帰りを待つこ──」


 蒼翔の帰りを待っていた2人の、いや3人の目の前に。


 彼が苦しみながら落ちてきた。


 その彼の上に──


「あ〜あ。もうダウン?もうちょっと楽しませてくれると思ってたのにな〜……ま、まだその姿もこの世界(・・・・)では2回目だからしょうがないってのはあるけど」


 ──《消える暗殺者》は見下ろすように浮いていた。



 遡ること数分前。

 2人が宙に浮き、互いに戦闘を始めようとしている時である。


「思う存分殺り合おう」


 蒼翔がゆっくりと灼屑を抜き始める。人は動くものに目がいく。奴は剣に目がいっていた。


 剣が半分くらい鞘から抜けた時。

 剣がピタッと止まった。

 そしてニヤリ。


「なっ……!」


 《消える暗殺者》の後方に用意されていた魔法陣が、次々と爆発を起こす。

 彼に直接は当たっていない。だが、爆風で体勢を崩す。


 体勢を崩したことにより、視界から蒼翔が消えてしまった。

 この一瞬が蒼翔に隙を与えてしまった。


 眼前に差し迫る剣先。

 だが、


「幻覚かっ……!」


 当たることはなく、その場に止まっていて、ただ躍動感があっただけの剣先であった。


 これが幻覚だということに気付き、本攻撃が後ろからだと予想し、体勢を変えようとするが。


 未だ残っている黒煙の中から灼屑が背後を狙う。


 体勢を変えり切れなかった《消える暗殺者》は灼屑の剣が肩に突き刺さってしまった。


「グハッ……」


 だが、すぐに剣は抜けた。

 その隙に異能力を使い少し高いところに移動した。その時にはもう既に肩の傷は綺麗に治っていた。


 しかし──


「なっ──」


 移動した先に、『想力分子』の刃が飛んでくる。

 たった1刃。だが彼は直感でこれをまともに受けてはいけないと察し、体を捻り、ギリギリのところで避ける。


 彼を通り過ぎてった刃は倒れている木々を切り裂いていき、地面を貫き目視出来ないところまで飛んでいってしまった。


「あれまともに食らわなくてよかった……」


「早速人で実験をしてみたかったんだけど……」


「へ、へぇ……恐ろしいことを言うね蒼翔は」


「貴様に言われたくはないな」


 こうやって会話をしているが、《消える暗殺者》には蒼翔の姿が見えていない。

 黒煙はもうほぼ消えかかっている。なのにどこにも見当たらない。


 次の瞬間、右斜め上と左斜め上から自分をクロスに切り裂くかのように刃が飛んでくる。

 無論異能力で移動し避ける。


 その2つの刃は倒れている木々を切り裂き、地面に触れるのと同時に大爆発を起こす。


 ただでさえ先程の超高等魔法「隕石」で辺りは悲惨なことになっているのに、まだこれ以上悲惨な場所にしたいそうだ。


 移動した先にまたも刃が飛んでくる。


 あたかも移動する場所が分かっているかのように。


 《消える暗殺者》は無数に飛んでくる刃を避けていた。だから彼は気付かなかった。──手の上で踊らされていたということを。


 それは一瞬だった。


 いつの間にか彼の腹は剣によって貫かれていた。

 その剣を握りしめ、嘲笑うかのように《消える暗殺者》を見つめているのは蒼翔だ。


「ここで終わりだ──《消える暗殺者》」


 口から血を吐き出す。

 そして剣を抜くと、またも口から血を吐き出し、腹からも血飛沫が。


「あ……お……と……っ!」


 刺された箇所を押さえるが血は止まらない。


「さぁ死ね……死んで、死んで、死んで貴様の罪を償え。いや、償えはしないか。ならただ──死ね」


「クッソオオオオオオオオオオオオ──」


 その断末魔と共に彼の首から上が消えた。


 彼の体と頭が重力に逆らえず地面へと真っ逆さまに落ちていく。

 彼が地面に落ちる直前。


 ────あ〜あ。また(・・)負けちゃったか。蒼翔はつよいねぇ。


 そんな声が聞こえてきたと思うと、世界が止まった。


 風、人の動き、心臓、細胞分裂、動物の鳴き声、どこかで起きている夫婦喧嘩、はたまた紛争地帯の攻撃、魔法、剣、学校の授業、爆発──つまりは、世界の時がピタリと止まった。


 ────本来ならこの段階でこの世界は消さなきゃならないんだけど……この世界は少し面白いから残してあげよう。戻す地点はここら辺にして、と。


 ────さて、蒼翔。この世界の続きをしよう。僕の目的の為に君は必要だからね。しかし、あの子は少し愚かだな。でもまぁいいか。少しは君のことも楽しませれそうだし。このままあの子に任せてみよう。


 ────とろこで僕。


 ────なんだい?僕


 ────この世界のこといじくり過ぎてないかい?


 ────んー確かに。いじりすぎたね。


 ────そのせいで矛盾がいっぱい起きてるけど、大丈夫なのかい?僕


 ────大丈夫だよ。この世界の矛盾は、いずれ忘れられる。今はこの世界に僕はかけたいな。だからいじっていじって、無理矢理にでも目的を達成させる。目的さえ達成できれば、僕達・・が起こした矛盾は帳消しだよ?


 ────そうだね。今は目的の為に。


 ────聞こえてないと思うけど蒼翔。この世界の君には期待している。だから……期待に応えてくれよ?蒼翔?


 その声は世界に響く。まるで世界が箱のようなものに入っており、その上から語りかけているかのように聞こえてくる。


 複数人喋っているが、全部声は同じだ。

 《消える暗殺者》。全ての声が彼のものだ。だが、普段から聞き慣れている声とは少し違った──


 ────さぁ再び始めよう。僕の、僕達の目的の為に。この世界の為に。

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