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世界最強の劣等生剣魔士  作者: 高橋創将
春の襲撃編
29/49

春の襲撃編 28 「俺の『異能力』を知らないとは……」

 ■■■


 光優を蹴り飛ばし続けていた咲葵が、不意に吹き飛ばされていた。もちろん吹き飛ばしたのは蒼翔だ。

 彼女は予想より少し早い動きに、反応できなかった。しかし、地面を転がっている間に態勢を直していたので、そこまで遠くには飛ばされなかった。


「やぁやぁ蒼っち。はやいnーー」


 起き上がりながらそのセリフを吐いている途中、正面から強い衝撃を与えられた。素早いスピードで間合いに入り込まれ、鳩尾を正拳突きされ、そのまま吹き飛ばされた。


 後ろの木々を次々と倒していく。幾台かの木を倒したところで咲葵の体は止まった。


 付けていた眼帯は外れ、隠していた左眼が顕になる。左眼に色は無かった。


「いててて……こりゃ肋骨あばらぼね折れちゃってるよ……威力強すぎ蒼っち」


 当然全身からは大量出血。肋骨が折れて、肺に突き刺さっているためか、息が苦しい。体が動きそうにない。彼女は死の狭間で生きている。


 だが、彼女に『死』は存在しない。

 彼女の左眼が微量に光る。


 すると、瞬きをする間もなく、咲葵の体は元通りになっていた。


「あぶねーあぶねー!本気で死ぬところだったよ蒼っちー」


 彼女は蒼翔に話しかけているが、蒼翔の姿はどこにも見当たらない。どこかに隠れているのか、はたまたまだ遠くにいるのか。──まぁでも、例え近くに来たとしても俺の眼なら──と彼女が心の中で呟いていた矢先。何か衝撃が来たな、と見てみると、彼女の右腕が血飛沫を撒き散らしながら宙を舞っていた。


「なっ──」


 だがそんなことは束の間、次は左足が血飛沫を撒き散らしながら宙を舞っていた。

 だが、彼女の足や腕はもう元通りになっている。

 しかし、元通りになったはずの足や腕がまたも宙を舞っている。幾知れずの腕や足が宙を舞い、地面に転がっている。


(ちくしょう!姿が見えない!見えさえすれば……!このままじゃ──)


 そんな無限ループのような戦闘が一瞬にて変わる。攻撃がピタリと止んだのだ。視線の端っこには自分の腕や足が無数に転がり落ちている。

 彼女は少し息を荒くしながら次の攻撃に構えていた。


 だが、一方に攻撃してくる気配はない。だが何やら妙な感じがする。まぁただの勘なのだが。

 聞こえてくるのは森のうめき声のみ。風が吹き、木の葉が舞う。


 そんな中どこからか『チッ』という、機械音のタイマーのような音がした。


「まさか……っ!──」


 咲葵が気付いた時にはもう遅かった。

 地面に転がり落ちていた腕や足が一斉に大爆発を起こした。


 彼女は防御態勢を構える前に爆発に巻き込まれた。その爆発の威力、爆風にいとも簡単に吹き飛ばされる。爆煙の中から勢いよく飛び出してきた彼女の体は、最初に蒼翔と光優がいた位置にまで飛んでいき、そこにある太い木にぶつかってストップした。


「な、何が起こってるんだ……」


 身動きが取れない光優は今何が起こっているのかわからなかった。だが、視線の先には咲葵がここまで吹き飛ばされてきたことしか映っていない。


「……痛いなぁ蒼っち……てか殺す気ですよねー……バケモノかよっ!」


 そう吐き捨てながらゆっくりと立ち上がる。


「そろそろ姿を見せてくれないかなぁ蒼っち。こんな痛いけな女の子の腕や足を平気で吹っ飛ばす人の顔が見てみたいんだよぉ……」


(ちくしょう!世界最強の名は伊達じゃないってことかよ!こんなの無理ゲーだよキャハハ!)


 姿は見えない、しかし攻撃される。確かにこんなのは無理ゲーである。透明人間に襲われているようなものである。

 普通ならば気配を感じるのだが、そんな気配を感じさせる前に攻撃が飛んでくる。2度目だが、こんなの無理ゲーである。


「さぁ正々堂々とかかってきなよ?──世界最強様?」


 挑発的な態度の咲葵はまだ自信に満ち溢れていた。


 ──俺は勝てる。


 ──世界最強に勝てる。


 ──世界最強に勝ったことがあるから!


「貴様……何故()を襲う?」


 突如どこからか聞こえてきた蒼翔の声。いつもの優しい声ではなく、尖った怖い声。


「あ?別にそんなことどうでもいいだろ世界最強様?俺は蒼っちを殺しに来た……ただそれだけさ!」


「ふん。殺しに来た……か……」


 その言葉が聞こえるのと同時、光優の目には衝撃的な光景が映っていた。


 蒼翔が咲葵の横に呆然と立っている。

 しかし、その隣の彼女の首から上が綺麗になくなっていた。

 血飛沫すら出ない。心臓も動いている。

 体はまだ気付いていない。

 首から上が彼によって宙高く舞っていることを。


「──貴様に俺は殺せない」


 そして、宙高く舞っていた彼女の頭は塵となって消え去った。


(あれは……『死灰しはい』……っ!)


 超高等魔法『死灰』。対象のものを塵となって消えさせる魔法。この魔法によって消えたものはどんな復活魔法であろうと復活することは永遠にない。この魔法は魔法陣を組むことが難しく、使える者はほとんどいない。


 その衝撃的な光景に言葉が出なかった。


 崩れ去る彼女の体からは、血は流れてこない。


(何故血が……っ!?まさか……『不死悟ふしご』っ!?)


 超高等魔法『不死悟』。対象の者に『死』を感じさせない魔法。言わば安楽死。しかし少し安楽死とは違い、その者の体は死を感じていない。だから血が出てくることもないし、体の中の臓器が止まることは無い。魂だけが死ぬという、『死灰』と並ぶ超高等魔法だ。


 蒼翔は振り返り、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。


 だんだんと近付いて蒼翔が立ち止まったその時。

 何やら肉に刃が刺さる音がした。


「あれれ〜蒼っち〜俺に蒼っちは殺せないんじゃなかったっけ〜?」


 蒼翔の心臓を後ろから一突き。刃は背中から貫通し、胸から出てきている。

 血がダボダボと溢れ出す。


「ご愁傷様?蒼っち」


 そのまま刃を捻るのと同時に、彼女は蒼翔を蹴り飛ばした。

 何かの魔法を使ったのか、尋常ではない程速く、遠くに木々を倒しながら飛んでいく。


「なぁ蒼っちやそこの凡人さん。俺がどういう『異能力』か知らないよね〜?」


「……」


 確かに知らない。彼女は『異能力者』として有名だが、本当の『異能力』は知らない。一般では『想力分子』がみえる、という異能力で広まっている。


「ま、教えてあげないけどね〜企業秘密だからな〜」


 こういう話をしていても、蒼翔はまだ吹き飛ばされている。

 どれだけ威力が強いのだろうか、彼はまだ生きているのか。


「ありゃ、こりゃ死んじゃったかな──」


「──痛てぇなクソ眼帯野郎」


 瞬間、彼女の体は天高く飛んでいた。

 いつの間にか背後にいた蒼翔が蹴り飛ばしたのだ。

 そして数分後に天高いところから落ちてくる。地面を凹ませながら着地した彼女の体はボロボロになっていた。


「キャハハ!あれでも死んでないとかマジチートでしょ蒼っち」


「それは俺のセリフだトカゲ野郎。貴様の頭は確かに俺が『死灰』によって塵としたはずだが」


「キャハハ!まさか蒼っちも俺の『異能力』を知らないとは……ならばしょうがない。教えてあげよう」


 ゆっくりと立ち上がる彼女の体は何故か無傷だった。傷一つ、血の一滴も垂れていない。


「俺の『異能力』……右眼はもちろん世間でも言われている通り『想力分子』が見えるというクズ能力。そして左眼は『見た』ものを思うがままに操れ、消すことも再生することもできる能力。キヒヒ」


 光優は言葉を失う。

 だからか、と今自分がこの状態になっていることが理解できた。つまりは、彼女の『異能力』によって自分の体は操られているのだ。


「残念だねぇ蒼っち?俺の『異能力』は魔法を、『想力分子』を使わない!つまりだよ!超高等魔法を使おうが俺は何度でも蘇る!」


 魔法の付属効果は『異能力』には作動しない。つまり、魔法は肉体や精神には干渉するものの、『異能力』には干渉できない為、例え精神が狂っていても、体がボロボロでも『異能力』は本来の能力のまま発動できる。


『異能力』に対抗できる効果は『異能力』で起こり得る効果しかない。


『死灰』『不死悟』の効果は強力ではあるが、それはあくまでも魔法的効果。もしこれが『異能力』によって、起こり得る場合はいくら再生しようとしてもできない。


 ようは坂堂咲葵は不死身。


「さぁ!ここからがお楽しみだよ!蒼っち!」


 突如光優の体が動き出す。


「なっなんだこれっ」


 自分で動かしていない。つまり、咲葵によって操られている。

 ゆっくりとゆっくりと彼の体は蒼翔に向かって進んでいく。

 剣を作り出した光優はその剣を片手に蒼翔に走り出す。


 だが、


「ほう。良いことを聞いた。貴様の『異能力』はこんなものか」


 蒼翔が手を振る。ただそれだけで、光優の体は吹き飛んでいく。


「ええっ!?仲間じゃねぇのかよ!?」


「仲間?笑わせないでくれ。貴様が乱入してこなければ、この男と戦っていた」


「は……?」


 事実である。


「それが無くても坂堂咲葵。そんなもので自分を殺そうだなんて、一生かけても無理ですよ」


(玄翔様……人格が変わっていたと思ったけどそれは演技だった……?なんの為に……)


 吹き飛ばされたがまだ体が動かない光優は考えていた。

 一人称がいつものに戻っている。確かに言動からして人格が変わった感は無かったと思う。


 彼は気付いていなかった。蒼翔はただ情緒不安定なだけであり、人格が変わったわけではないと。はたまた作戦として、そのように演技していたわけでもない。

 それに、蒼翔もまた自分が人格が変わっていたと錯覚している。


「キャハハッ!面白いこと言うねぇ蒼っち。俺の『異能力』に対抗できるものなんてないのにね……!」


 その言葉に辺りが静まり返る。

 そう、彼もまた体を操られたのだ。

 しばらく続く沈黙の時間。だが──


「──どうしました?『異能力』は」


「え?」


 彼は何故か咲葵の目の前に立っていた。先程まで少し離れた位置にいたはずなのに。


「言ったでしょう──貴様には殺せない、と」


 瞬間、彼女の眼には『想力分子』の動きが見えた。


「『隕石落下』」


 超高等魔法『隕石落下』。空中に巨大な隕石を作り出し、そのまま落下させる。『石下せきか』とは違い、無数の小さな石を落とすのではなく、巨大な1個の隕石を落とす魔法。発動させるには大量の『想力分子』が必要なので、超高等魔法の1つとされている。


「おいおいおいおいマジかよ……ここら辺一帯を吹き飛ばすつもりかよっ!?」


「どうした坂堂咲葵」


 徐々に轟音を立てながら近付いてくる巨大な隕石は炎を浴びていた。


「いやいやいやいや。魔法効かないって言ったよな!?ここまでする!?」


「効かない?それはないな。少なくとも貴様の体力は削れる」


(こいつっ!気付いてやがる!)


 そう。彼女の『異能力』の特に『再生すること』に関しては、大量の体力を消耗する。わりと体力ありきな部分があり、魔法により体力を削られたら直接『異能力』に関係なくても、『異能力』を使うことがまずできない。その場合、ただの《剣魔士》になる。


「さて。実は『隕石落下』は2個発動させた。1個直撃でもかなりの体力がなくなる。それが2個だ……貴様の『異能力』が持つか、俺の『想力分子』の底が尽きるか……試してみようぜ?」


「……刈星……刈星蒼翔オオオオオオオオオオオオオ!」


 巨大な隕石が落下してきた。

 だが人が立ち入るような森ではなかったので、最低でも10キロメートル先にしか人は住んでいない。


 彼女の断末魔と共に隕石が直撃し、辺りを巻き込む大爆発を起こした。

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