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世界最強の劣等生剣魔士  作者: 高橋創将
春の襲撃編
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春の襲撃編 25 「ミーは人違いをしたのですかね〜?」

 ■■■


 蒼翔に向けられた敵は先ほどの敵だけであった。あっという間に施設のところまでついた蒼翔は入口を探していた。


 施設はそこにあるのだが、入口が見当たらない。どこも壁だけで入口という入口がない。最新の技術で入口が隠されてるんじゃないか、どこかにスイッチがあるのではないか、色々模索してみたがどれも違う。


 諦めて壁をぶち破ろうかと思った時。

『想力分子』の波動を感じた。

 とてつもない、波動。


(これは……ッ!?)


 この波動は地面の下から感じた。

 この下で何かが起こっている。緋里と綺瞳の安否が心配だ。まぁ緋里が死ぬことはないと思うが。


 だが心配は心配である。

 しかも何かの危機が蒼翔の冷静さを少しなくしている。

 だが、そんなものは一瞬で直る。すぐに冷静さを取り戻した蒼翔は、地面に自分の『想力分子』を埋め込んだ。


 そして土を伝わっていき、床に埋まっている施設の全体図を立体的に現す。現すと言っても、蒼翔の眼に見えるだけである。コンピュータで作られるようにどんどんとその施設は、蒼翔の眼の中で姿を現す。


 それはここら辺の森一帯の地面の中をはり巡るように作られていた。


 施設の全貌がわかったところで、先程の『想力分子』の波動の原因はわからない。あの波動からして《消える暗殺者》ではない。《消える暗殺者》にはあそこまでの波動を作り出す『想力分子』を持ってはいない。


(チッ……)


 蒼翔にこの施設の中まで侵入するのは可能ではあるが、それは少々体力を消耗してしまう。これから《消える暗殺者》を倒しに、いや殺しに行くのに、体力を消耗するのは死にに行くようなものだ。


 感覚を研ぎ澄ませ、『想力分子』の波動を体全身で感じる。

 どこにいるのか。


 森の方へゆっくりと歩いていく。

 そっちの方はだんだん波動が強くなる、周波数が早くなっていっている。つまり、波動元に近づいているということだ。


 と、しばらく歩いたところで波動元の真上ら辺についた。

 この辺りから感じる。

 ここの下に誰かがいる、何かがある。

 それが味方なのか敵なのかわからない。

 だが、試してみなければわからない。


 魔法を展開する?

灼屑やくず』で土を抉りとる?


 答えはもちろん──


 蒼翔が紗枝から『灼屑』を抜き、土を抉りとるために振ろうとした時。

 森の中から魔法の反応を感じた。だが、時既に遅し。

 彼は魔法により吹き飛ばされていた。


「あれあ〜れ。ミーの相手はこんな虫けらですか」


 その魔法を放った主はゆっくりと歩いてきた。

 金髪の短髪。七三にわけられた前髪。ピッチピチのズボン。特に特徴の無い顔。だが異様なまでの堂々たる自信。


 蒼翔は攻撃を当てられた。いつもの蒼翔なら心が折れそうになるが、つい先日も攻撃を当たれらた。だから、動揺も心も折れることもない。

 冷静になりつつ起き上がる。


「ミーの剣は素晴らしいですよ〜?ほ〜ら見てくださ〜い?」


 男は金色に輝いたゴールデンの剣を頬に擦り付けながらニヤけて言った。


(ッ!?)


 普通の剣、に見えるだろう。だが違う。

 この剣は──エクスカリバー。

 金色に輝く黄金の剣。


 こんな空想の、昔話の聖剣が何故こんなところに、と思うだろう。だが考えみてほしい。この剣は明らかに『想力分子』で作られたもの。

『想力分子』とは想像したものを作り出す時に使う分子。それによって作られた剣。つまりは、想像により作り出されたもの。


『想力分子』で作られるものなら、想像したものが具現化する。


 それがこの世界。


 それがこの世界の常識。


 だが、今現在において人々はその常識を見誤っている。


 誰もその常識に気付けていない。


 常識が今では常識になっていない。


 これが、真の常識になった時、世界は崩壊する。


 だからこの方がいい、ではある。


 でもそれもまた違うとは思う。


『想力分子』の本当の恐ろしさを知るべきである。


 恐ろしさを知り、『想力分子』を使うのを躊躇わなければならない。


 躊躇なく『想力分子』を使うことは間違っている。


『想力分子』は人々を殺すために使うものではない。


『想力分子』は不に落とし入れるために使うものでは無い。


『想力分子』の本来の使い方。


 それは人々を助けるために、


 人々の暮らしを豊かにするために使うべきである。


 閑話休題はなしがずれてしまった


 この男はわかっている。想像できるものはなんでも具現化できることを。


(厄介な刺客を送り込んでくれたもんだな……《消える暗殺者》……ッ!)


「……一般人の劣等生剣魔士にいきなり攻撃するとは失礼ではないのでしょうか。これでもまだ1年生です」


「おやおや〜?ミーは人違いをしたのですかね〜?」


 蒼翔は一般の劣等生剣魔士を演じる。たまたま森の中のこの場所で、剣の素振りの練習をしていた高校1年生という役を。


「すみません。何のことを言っているのか僕にはわかりません」


「……」


 男は黙り込んだが、その笑顔、不気味な笑みは崩さなかった。

 何か危険な感じがする。蒼翔は心の中で戦闘態勢を取る。しかし、下手に暴れることはできない。ここの下にもしかしたら、緋里や綺瞳がいるかもしれないのだ。もし暴れて、施設ごと吹き飛ばしたら元も子もない。


 男はどうやら引いてはくれなさそうだ。


 しばらく続く沈黙の間。

 だが、しびれを切らしたのか男が喋り出す。


「……こんなところで素振りとはいい度胸だね〜。知ってるかな?ここら辺は、そういう子達を狙う悪〜い人達がいっぱいいるんだよ?」


「……お気遣い感謝します。ところで、あなたは何をしているんですか?」


「ん〜?ミーはね。君を殺すように命じられました☆」


 瞬間、エクスカリバー片手に笑顔のまま飛び込んできた。人間の走るスピードとは思えないスピードで飛び込んでくる。だが、蒼翔はもう既に戦闘態勢。

 男の動きは『想力分子』の揺れや音、声でわかる。


 男がエクスカリバーを縦振りし、殺しにかかる。砂埃が起こり、視界が悪くなる。だが、当たった感触はない。その代わり──


「おっと──」


 男の腹には蒼翔の足がしっかりと捕らえていた。そのままサッカーボールを蹴るかのように振り上げる。男がボールかのように遠くに飛んでいく。


 だがすぐに男は飛んで行く先にクッションを『想力分子』でつくる。そしてクッションで衝撃を少し和らげるのと共に、飛距離を縮めようとした。だが、男がクッションに到着するより速く、蒼翔が先回りしていた。


 蒼翔は蹴り上げるのと同時に魔法で『跳躍』と『加速』を同時展開し、同時発動する。その結果、高スピードで先回りできるのだ。


 男はもちろん後ろは見えていない。クッションに当たると思っている。だがしかし、男にきた衝撃は、背中をかかと落としされた衝撃だった。


 蒼翔がかかと落としする時に、魔法『加速』を2ヶ所に展開して発動する。1つは蒼翔の足に。その結果、かかと落としのスピードが上がり、威力も上がる。もう1つは男自体に。その結果、かかと落としで空中から地面に落ちるスピードが、倍増、何倍にも膨れ上がる。そして地面に当たる衝撃は大きく、損傷が激しくなる。ちなみに、落ちるスピードは尋常ではなく速いので、即座にクッション等、衝撃を軽減させるものを作るのは相当な実力を持っている《剣魔士》でしか不可能に近い。


 この高さとこのスピードならば地面がかなり抉られているだろう。その証拠として、尋常ではない程の砂埃が起きている。


(自分に向けられたのがこんな程度なのか……?)


 砂埃がだんだんと消えていく。

 ついに男の姿が見えるかと思った時。


 後ろから『想力分子』の兆候を感じる。発動される魔法は『ライトニング・ウェーブ』。殺傷能力のある魔法だ。この前生徒会との模擬戦の時、会長が使っていた魔法でもある。


 いち早く感じ取った蒼翔はすぐさま魔法の放たれる方向からズレる。

 その1秒後に先程蒼翔がいた位置を『ライトニング・ウェーブ』が通り過ぎる。

 蒼翔はすぐさま地面に降り立つ。


 そして砂埃から出てきたのは、負傷はしているが、蒼翔が与えていたはずのダメージの半分ぐらいしか受けていないようだ。


「素晴らしい!お見事!」


 男は立ち止まって両手を広げて蒼翔に言う。


「さすがは世界最強の刀塚玄翔・・・・様ですね〜!」


「何故……自分の名を……ッ?」


「それよりも、素晴らしい腕前。世界最強と言われるだけありますねぇ。その素早い動きに加え、魔法の複数複雑発動。もはや音の速さよりも速い決断力・状況判断力。その戦闘のテクニックスキルの高さ」


「お褒めの言葉ありがとうございます。……ですが──」


「──ミーが何故それ相応のダメージを受けていないのか、と?」


「……」


 図星だ。

 確かに蒼翔と男の今の戦闘は圧倒的な差で蒼翔が勝っている。今のはどう考えても男が今受けているダメージよりももっと受けてなければならない。


「理由は単純。この剣を地面に突き刺しただけ。だ〜よ?」


(こいつ……ッ!?)


 この男はわかっている。戦闘というものを。

 戦闘とはなんでもかんでもやればいいというわけではない。戦闘では、ものの使い方が上手いものが制する。


 実は今の蒼翔の攻撃は短調で、誰でも出来る簡単な方法だ。しかし、昔からの概念などで、強くて複雑な魔法を使い、圧倒的な差で勝つ、というふうになっている。だからこんな初歩でも出来るコンボに対処出来ないのだ。


 つまり何が言いたいかというと、『想力分子』等で想像してから作ってダメージを抑えるのでは遅いのだ。男はそれをわかっていて、素早くかつダメージを抑えられる剣を地面に突き刺したということだ。例え剣が耐えきれず折れたとしても、自分にくるダメージは減少する。軽く剣を握っていた腕が折れるくらいだろう。だが男は負傷こそはしているが、折れてはいない。硬化魔法でも発動していたのだろうか。もしそうならば──


(こいつ……只者ではない……)


「世界最強様でも、ミーの素晴らしさに驚くこともあるんだね〜!」


 鬱陶しい。


「……いい加減、自分の質問に答えて頂いてもよろしいですか?」


「おっとこれは失礼。ミーとあろうことが、世界最強の刀塚玄翔様に自己紹介を忘れていたとは……」


 そうして男は満面の笑みで言い放つ。


「ミーは《剣魔士特別自衛隊》隊長、壬刀遼光の極秘任務により、刈星蒼翔──刀塚玄翔──の護衛を引き受けました、


《対剣魔士自衛部隊ー梵天(ぼんてん)ー》所属、天童光優(てんどうこうや)です」

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