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世界最強の劣等生剣魔士  作者: 高橋創将
春の襲撃編
2/49

春の襲撃編1 「どうして?」

 ■■■


「どうして?」


「何が?」


  西暦2205年。暖かい風が吹く、朗らかな春の日に。

  木造建築の古臭い一軒家のリビングにて。

  黒髪の短髪に紺色の瞳。見た目の感じで猛者と思わせるその顔つき。ひょろりとした体格だが、どこかしらズッシリと感じるその体格。右の頬に痛々しい1本の傷がある男。

  黒髪のポニーテールに紺色の瞳。男と同じく猛者と思わせるその顔つき。同年代の女性に比べて小柄で細い体格だが、どこかしら力強さを感じるその体格の女。


  2人の顔が似ているのは偶然ではない。彼等は『双子』である。

  男の方が身長が高く、女を見下ろす感じで喋っている。だが、女が姉であり男が弟である。今時双子で上下を分けることはほとんどないが、この兄弟は姉と弟というふうに分けている。これは話し合いにより決めたものであり、どちらが先に生まれたなんてものは関係ない。──いや、あったとしてもそれを聞けない。


 現在の日本は西暦2000年頃と似ている。200年経つわけだが、その中で『世界大戦』が一気に3回も起こったわけで(日本はその2回参戦している)、経済的に厳しくなったのだ。資源物質も減りつつあるため、このように家は木造建築となっている。とはいえ、近頃は木造建築よりも鉄骨構造の方が多いが。

 女は男に『姉』として弟にある事を追及しているところだった。


「何が?じゃないの!わかるでしょう?」


 男にはクエスチョンマークが浮かんでいた。

 当然だ。わかるでしょう?と聞かれてもわからないものはわからないものである。それも、今日の結果発表を見た途端言い出したことなのだから余計によくわからない。何か問題でもあるのだろうか?


「すまない」


 それは「わからない」という意味で言ったわけだが。


「何謝ってるの?」


 どうやら姉には理解できなかったようだ。男は、姉でありながら恥ずかしい、と思ってしまった。しかも高校1年生という割と歳取っているのに。


「……とりあえず緋里あかりが怒っている理由を聞かせて貰おうか」


「別に怒っているわけじゃないんだけど……」


「とりあえず」


 またズレそうになると思ったのか「とりあえず」と怒っている(?)理由を言うように誘導した。


「……蒼翔あおとの行く高校は何処でしたっけ?」


 口を膨らませて言ってくる姿は何処かしら…………ムカついた。

 だから言い返すつもりでムカつく言ってみる。


「……《剣魔士高等学校第1科》だが?」


「いやそれはわかるわよ!そうじゃなくて!」


(あぁ……もうめんどくさいな……)


「……《剣魔士高等学校第1科》区分──劣等生」


「──なんで?」


「いやなんでと言われてもだな……《優等生》の資格がなかったからだろ?実際、テストでは上手くいかなかったからな」


 《剣魔士》だからと言ってテストがないというわけではない。勿論テストというものは必要になってくる。これは、今までの伝統というものを守ろうという国の考えだ。教育にテストは必須、これは常識である。


 《剣魔士高等学校》はいくつもある。そのどの高校かを選び、その後各《剣魔士高等学校》ごとに異なる『優劣決定試験』という試験が行われる。その名の通り優等生と劣等生を決めるテストだ。


 《剣魔士高等学校第1科》の試験は《剣術》《基本的な学力》《冷静な判断力》《『想力分子そうりょくぶんし』の操作》の計4科目にわかれる。


 《剣術》。これはそのままの意味で剣術を見る試験だ。あらゆる方向から飛んでくる光の球をどれだけ切れるか、という内容だ。この光の球は試験指定の剣に当たると自動的に切れるようになっている。他にも、純粋な対人戦などがある。


 《基本的な学力》。現代でも学力というのは必須である。英語、国語、社会、数学、理科――の5教科の基本的な知識は身に付けておかなければならない。これは今と昔も変わらない。織田信長のことだって学ぶし、二次方程式のことだって学ぶ。1教科100点の500点満点で決められる。


 《冷静な判断力》。これは当然の事だ。《剣魔士》としてのこの社会において、冷静さを失うのは『死』と同じようなものである。受験者に突然の出来事を起こしてどう動くのか、を見るテストだ。


 《『想力分子』の操作》。『想力分子』を操って様々な課題をやることがこのテスト。



 ──『想力分子』。日本が発見した新たなる分子。世界的な快挙でありまた、世界が動き出した発見でもあった。魔法と呼ばれるものは、今まで超能力的なものであり、科学的証明ができないものとなっていた。だがこの『想力分子』の発見によりこれが超能力的なものではなく、人間のスキルと証明された。


 この『想力分子』は、当たり前だが目に見えない。分子が目に見えることはないし、そもそも分子自体原子の集まりである。


『想力分子』──想像した力が分子となって現れる──それが『想力分子』。


『想力分子』は人の周りに常にくっついている。自分には自分のがあり、他人には他人の『想力分子』がある。つまり、人それぞれで『想力分子』が違うということだ。その為、優等生と劣等生というものが生まれる。


『想力分子』はそのくっついている者が作りたいと思ったものに変換される。


 今ここに剣を出現させたい──と思って『想力分子』に命令すると、目の前に『想力分子』が剣となって出現する。


『想力分子』に有機物無機物、液体気体固体などといった種類は存在しない。

 それならば家だろうがなんだろうができるのではないだろうか?と思うだろうが、実際それは不可能に近い。作ることならば誰かしらはできるだろうが、それはあくまで一時的なものであり、長時間続けることは無理だ。家というものを作るには膨大な量となる『想力分子』が必要となる。そんな量を常に操るのは、心身共に持たない。そこまで人間は普通、『想力分子』を保有していない。


 今までの魔法とか超能力とかいうのは『想力分子』によって起こる事象である、とまた一つ歴史が増えた。

 この『想力分子』を操る者を《剣魔士》という。

 閑話休題それはさておき


 この『想力分子』を操作する試験は、すなわち優等生と劣等生を決める重要な試験である。

 劣等生ということは、つまりあまり『想力分子』の操作が上手くないのだろう。


「いやそれありえないでしょ!?蒼翔先月まで全国1位だったじゃない!?」


「あぁまぁそうだが……」


 しかし実際蒼翔は先月まで全国1位を貫いてきた。そして2位は姉の緋里だ。

 そんな彼が劣等生になるはずがない。

 そんないきなり……急に。

 だからこそ緋里は心配になったのだ。何かあったのではないかと。


「それがなんで急に劣等生になってるの!?ねぇなんかあった!?あったなら私に言いなさい!?なんでも相談に乗るから!」


「──ぐ、ぐるじいがらはなじでぐれ……!」


 あまりの興奮にどうやら首を締めていたらしい。もうすぐで死ぬところであった。まぁいざとなれば『魔法』で逃れられるは逃れられるが。

 緋里が「ごめん」と言いながら手を離すとゲホゲホと咳払いをしながら制服を整えた。


 今2人は学校の制服姿である。優等生は赤と紺色の。劣等生は緑と紺色の。優等生と劣等生とでは制服が違う。


 2人はこれから学校に向かう頃である。合格発表があった日に制服が届く。そしてその日に学校に登校する。これが今の高校のスタイルである。


「……本当にごめん。でも心配で……」


「いやいいんだ。俺が心配かけさせるようなことをしたのが悪い。すまない」


 確かにそうではあるのだが。


「まぁそれはさておき」


 この緋里の反応は酷いように思われる。

 折角謝っているのにその対応は酷い。


「……本当にどうしたの?」


「それは……今は言えない」


「……わかった」


 緋里はそれ以上追及することはなかった。

 言えない理由がわかったからだ。

 ──蒼翔が劣等生になるそれほどまでの理由があるということだろう。

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