〇四
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「そういえばさ、崖崩れってどうなってるのかな?」
きれいになった座卓の前、ゲンやんはぼんやりとしながら言った。
「はえ?」
テレビを見ていた真澄は、くるりと首を大きく動かしてゲンやんを見る。
「別にどうもなってないだろ。昨日の今日じゃな」
セーハチは本を読みながら、つまらなそうに言った。
キロクは寝転がって小さく寝息をたてている。
「やっぱり気になるの?」
「そりゃあね……。うちの地元だとあんまり考えられない話だし……」
ゲンやんは煮えきれない苦笑を浮かべて、頭を掻いた。
「珍しいよな、やっぱり。あ、不謹慎ってのはわかるけど……」
ゲンやんたちの住む街は、この神縛町と比べれば都会ではある。
しかし、それでも結局は地方都市にすぎない。
テレビドラマの舞台となるような、大都会とはほど遠い場所だった。
映画館もなければ、ファーストフードの店もデパートの一店舗があるだけだ。
特に観光名所があるわけではない。
ただ車と建物ばかりが多いだけの、つまらない街だとゲンやんは思っている。
そういった感情は中学に入ってから強くなってきた気がした。
だからだろうか。
あの荒女山という山がそばにあるだけ、ここのほうがずっとマシな気がした。
どうして、そう感じるのかゲンやんにもよくわからない。
「気になるのなら、行ってみる?」
テレビを消しながら、真澄が大きな瞳でゲンやんを見た。
「え? でも、危なくない?」
「離れたところから、ちょっと見るだけなら大丈夫だよ。どうする」
尻込みをするゲンやんに、真澄は少し挑発的な声で言った。
「セーハチ……」
助けを求めるように、ゲンやんはセーハチに話を振った。
「まあ、別にいいだろ。散歩だと思えば」
本のページをめくりながら、セーハチは消極的な賛成意見を言った。
横で、眠っているキロクが寝返りを打つ。