蒼剣の剣闘士
まっずい、書き溜めが、もう、ねえ!
目的地を視界にとらえ、俺は飛行魔法を解除する。
ルシウスが降り立ったのはギルドから少し離れた草原で、肉眼でようやく関所が消える程度の距離だった。
遥か昔、神代の時代に失われた飛行魔法は世界中が躍起になって復元させようとしている。
それを少しこぎれいな格好をした少年が使うには問題があるのだ。
俺は独り言をつぶやきながらギルドへ向かう。
「今日はどの格好にしようかなぁ~、昨日は赤だったし・・・よし、今日は蒼にしよう。」
五年前に習得した俺の力、それは魔力と闘気と言われるものだ。
この世界の生物は基本的に、『エーテル』と呼ばれるものを体内に有している。
『エーテル』とは魔力と闘気と呼ばれるものからなっており、それらは何れも身体の強化に使われる。
一流と呼ばれる武道家はどちらかをマスターし、使いこなしている。
あまり知られていることではないが、それらを具現化し、己の身体に゛纏わせる゛ことができる。
通常、魔力も闘気も自由自在に扱うことはその道を目指す者が修行して習得することが可能でもそれを具現化するには才能が必要になる。
そして才能と修行の結果、人それぞれの゛色゛に具現化することができるのだ。
その場合、色は鮮やかであればあるほど、その質は高く、違和感なく体に定着させられるほど、強いものとなる。
ルシウスの言う、赤というのが魔力で、蒼というのが闘気である。
「う~ん・・・よし、きた。」
そうつぶやくが早いか、彼の全身が蒼いオーラに包まれる。
本来は真冬の夜空のような彼の黒髪は、青空よりも澄み切った蒼に染まる。
「え~と、確かアレはここらへんに入れたような・・あったあった。」
そういいながら、超高等魔法である≪時空魔法・アイテムボックス≫を発動させる。
そうして作り出した空間から二振りの所謂、日本刀をとりだす。
その刀の刀身はひたすらに黒く、漆黒という言葉はこの刀のためにあるかのように、ひたすらに黒い。
「にしても驚いたよなぁ~、こっちの世界にも日本刀があるとは思わなかったし。」
『主よ、それは前にも説明したぞ?』
俺の独り言に刀が返事をする。
「いや、そうだけど、もう違和感はねえけど、お前を初めて持ったときめちゃくちゃビビったぞ、急に声が聞こえてくるんだから。」
そう、この刀はしゃべるのだ、俺の頭の中で。
『まあ、しゃべれるようになったのは半ば主のおかげだからな、
前の主はここまで俺の力を引きだすことはできんかったからな。』
「前の主って、例の召喚されたっつ~勇者様ってやつか?」
『ああそうだ、その人によって俺は作られた。』
この刀、名を『蒼黒』というのだが。
蒼黒曰く、今からおよそ百年前、世界に恐怖をもたらす邪神を討つため、異世界から七人のニンゲンが召喚されたという。
そしてその中の一人、『蒼峰黒谷』その人によって作られたという。
『そういえば主よ、あと数年後だぞ、その勇者召喚。』
「そうなのか?」
『ああそうだ、どうやら前回の召喚で呼び出された者たちは素晴らしく優秀だったからまた同じ地域から召喚する予定らしい』
「へえー、てかなんでお前そんなに詳しいの?」
『わからん、頭に情報が流れ込んでくる、としか言いようがない。』
「なんだよそりゃ、おお駄弁ってる間についたぜ。」
そういって俺は目の前にある建物を見上げる。
「にしてもでかいなあ。」
そういいながら、俺はギルドに足を踏み入れていった。
主人公の通り名の「蒼剣」は「双剣」と書けてますです。ハイ。